投稿日:2025年9月2日

コンテナラッシュ時に起こるブッキング拒否を防ぐフォワーダー選定基準

はじめに:製造業の現場で悩まされる「ブッキング拒否」問題

国際物流が混乱するなか、コンテナラッシュはもはや「地震・雷・火事・親父」に並ぶ、現場の頭痛のタネとなっています。
特に、製造業の調達購買担当者やバイヤー、さらにはサプライヤーの皆様は、フォワーダーから「ブッキング拒否」を受けて思いどおりに出荷できずに頭を抱えることも多いのではないでしょうか。
この記事では、私自身が工場長や調達購買の現場で直面した実例を交えつつ、そもそもなぜブッキング拒否が起きるのか、その本質に迫ります。
そして、古き良き昭和的な人脈・現場力と、デジタル技術がせめぎ合う今の時代にふさわしい、実践的な「フォワーダー選定基準」をご紹介します。

なぜ「ブッキング拒否」が起こるのか?

1. コンテナラッシュの背景

2020年以降、コロナ禍や世界情勢の変化により国際物流は未曽有の混乱期に突入しました。
中国をはじめとするアジア新興国からの出荷が集中し、主要な港では毎日のようにコンテナ不足・スペース不足・遅延が頻発しています。
コンテナラッシュの真の原因を分解してみると、「需給バランスの大きな歪み」「港湾の設備投資の遅れ」「人員不足」「船会社の経営戦略の転換」などが複雑に絡み合っています。

2. フォワーダーがブッキングを「拒否」する本当の理由

現場を経験した人間として痛感するのは、フォワーダーも魔法使いではないということです。
船会社のスペースが本当にゼロなら泣く泣く「NO」と言わざるを得ません。
しかし、現実には「優先順位」が存在します。

– 取引規模の大きい荷主
– 毎月安定的に取引している荷主
– 支払いが速い・クレームが少ない荷主
– 荷役や配船のトラブルが起きにくい荷主

こういったランク付けにより、取引実績や今までの関係性が、「いざという時のスペース確保」や「特別対応」の明暗を分けています。
さらに、昨今はフォワーダーが自力でスペースをもてる数が減り、「複数の船会社間での調整力」が問われています。

フォワーダー選定における重要な着眼点

1. 「損得」だけで選ぶな! 現場重視の企業文化

価格だけを指標にフォワーダーを選ぶ時代は終わりました。
短期的な価格競争力がある会社でも、いざ需給ひっ迫時には逃げ腰になりがちです。

製造業のバイヤー・サプライヤーが今重視すべきは、フォワーダーの「現場力」と「緊急時の本気度」です。
アナログな人間関係に頼る一方、デジタルツールやシステム化で仕事が軽視されがちな昨今、本当に「現場の困りごと」を解決してくれる企業文化があるかどうか、日々のやり取りで見抜くことが大切です。

2. フォワーダーの「対応実績」とネットワーク力

コンテナスペースの確保力は、フォワーダー自身の「規模」と「取引船会社の多さ」と比例します。
大手フォワーダーには大手の実力がありますが、「中堅でも特定ルートに強い」「ニッチな港に特化」など、現場の課題とマッチする得意分野を持った会社を上手く組み合わせる手も有効です。

また、「過去1年間のブッキング拒否率」や「コンテナ不足時の特別対応実績」など、可能な範囲で数値的な裏付けをヒアリングしましょう。
現場の苦労を知っている営業担当がいる会社は、いざというときに本気で動いてくれます。

3. 現場スタッフとの信頼関係を築く

昭和の時代から「顔が効く」人脈ネットワークは強力ですが、デジタル化が進んだ現代でも現場スタッフとの信頼関係は絶対に大切です。
緊急時に「何とかスペース確保できないか」「船出しが遅れるが情報だけはくれ」といった交渉がスムーズにできるのは、普段から誠実にやり取りしている証拠です。

また、担当者が頻繁に変わる、問い合わせに対する返事が遅いなど、担当者任せで会社全体に問題がある場合は、どんなに安くても避けるべきです。

4. サプライチェーン全体を俯瞰できる提案力

部品1個の遅延が製造ライン全体を止める――それを痛感している現場担当であれば、「物流は単なる配送業務ではない」という認識を持っているはずです。
優れたフォワーダーは、単なる船の予約だけでなく、

– 他の港・仕向地の活用提案
– EmS(EXTRA SPACE)やAir・Railとのハイブリッド案
– トランシップや経由便の裏ルート
– Very Early Noticeの提供

といった、サプライチェーン全体を俯瞰した積極的な提案をしてくれます。
このような情報提供能力も、フォワーダー選定時の大きなポイントです。

実践!「ブッキング拒否」に強いフォワーダーの見極め方

1. 事前ヒアリングで「困りごとへの対応力」チェック

新規フォワーダーに発注する場合、必ずこれまで多発した「困りごと」や「過去のトラブル事例」を具体的に話してみましょう。
その際、うまく取り繕うだけの会社は避け、具体的な対応例や「こういう場合は正直難しい」と本音で語ってくれる会社を選びましょう。

2. ブッキング拒否のリスクを見える化するデータ活用

今や、各フォワーダーは、港・航路ごとのスペース残数や遅延情報などをリアルタイムに把握できる独自システムを持つことが多くなっています。
こうした情報を、必要なタイミングで開示できる会社は、現場の透明性も高く、信頼できます。
「情報をどれだけ開示してくれるか」も重要な評価軸としましょう。

3. 緊急時の対応シナリオを事前に共有

いざスペース不足になったときに、「一切お手上げ」なのか、「他の選択肢を必ず提示する」フォワーダーなのかで大きな差が出ます。
事前に、「緊急時にはどのような代替案があるか」「情報連絡体制はどうなっているか」まで、具体的なシナリオを聞いておきましょう。
事前協議こそ、信頼構築の第一歩です。

これからの時代を見据えた『フォワーダーとのパートナーシップ』

1. 価格だけでなく「価値」で選ぶことの重要性

物流業界も深刻な人手不足と競争激化で、限られたリソースの中でスペース調整を余儀なくされています。
一方的に「安く・早く」を求めるだけでなく、フォワーダー側の「リードタイム短縮への工夫」や「現場負担軽減策」にも注目し、パートナーシップとして「助け合い」できる関係構築が重要です。

2. サプライヤーとしてバイヤーの期待を超える提案を

サプライヤーの立場としては、バイヤーが何を重視しているのか、何に頭を悩ませているのかを理解することが差別化のカギです。
物流手配に強いフォワーダーを一歩先読みして提案できる力、困った時に「ただちに動く誠実さ」を示すことで、バイヤーから信頼されるサプライヤーになれます。

3. デジタル時代こそ求められる「人」の介在価値

AIやデジタルツールも進化しましたが、最終的には「現場力」とは「困ったときの根回し」「人を動かす一声」です。
顔の見える担当者、現場で泥臭く動いてくれるネットワーク力に加え、最新の情報網を活用したハイブリッド型の提案力。
これが、今もっとも強い物流パートナーの条件です。

まとめ:昭和の現場力と現代のIT、両輪で切り抜ける「物流危機」

繰り返しになりますが、安さや効率だけでフォワーダーを選んでいた時代は、すでに過去のものです。
いざという時に「ブッキング拒否」で手詰まりになる前に、現場の声に耳を傾け、本気で動いてくれるパートナーを選ぶ――それが製造業の未来を守ります。

昭和の現場力とデジタル時代のテクノロジー、両方を上手に使いこなす新たな地平線をともに切り拓いていきましょう。
現場を知る皆さまこそが、次世代の製造業・物流のスタンダードを創っていく主役なのです。

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