投稿日:2025年6月13日

食品添加物および酵素製剤の製造委託における選定基準

はじめに:食品添加物および酵素製剤の製造委託という選択肢

食品添加物や酵素製剤は、多くの食品メーカーにとって欠かすことのできない原材料となっています。
しかし、その製造過程は高度な技術や衛生管理、厳密な品質管理が求められ、自社生産には多額の投資と専門的知識が必要になります。
そのため、外部へ製造委託(OEMやODM)を検討する企業が年々増加しています。

一方で、製造委託には「本当に信頼できる委託先をどのように選ぶか?」という大きな課題があります。
とくに昭和の時代から変化の少ないアナログな考え方が根強く残る業界では、「昔からの付き合い」や「価格だけ」で委託先を選定する傾向がいまだに見られます。
これでは今後のグローバル競争や安全・品質リスクへの対応は難しいでしょう。

本記事では、食品添加物および酵素製剤の製造委託において、現場目線で絶対外せない選定基準と、実践的な委託先企業の見極め方について解説します。

なぜ製造委託が求められるのか?〜現場の課題から紐解く〜

人手不足・技術者不足と時代の変化

食品添加物や酵素製剤は、高度な技術や知識、経験を持つスタッフが必要とされます。
しかし、近年は熟練技術者の高齢化や若手人材の確保の難しさ、働き方改革などで自社製造力が低下している現場も増えています。
生産量や需要に応じて柔軟に対応できる外部リソースとして、製造委託の活用は避けて通れない選択肢となっています。

コスト競争力と生産の安定供給

生産規模の小さいメーカーが高額な原材料や最新設備を導入し続けるのは現実的ではありません。
またコストの高い国内製造拠点では、価格競争面から海外製造委託も検討対象となってきます。
現場では「安定供給」「コスト削減」「設備投資の回避」のため、信頼できるパートナー選定が求められています。

法規制・品質保証への対応強化

食品の安全・安心への社会的な要求が年々高まる中、法規制(食品衛生法、JAS法など)や各種GMP(Good Manufacturing Practice)への対応レベルも厳格化しています。
万一、委託先で問題が発生すれば自社ブランドまで傷つけかねません。
自社で全てを管理しきるのは困難であるため、皆が悩みながらも失敗できない、重要な選定が常に現場には求められています。

食品添加物・酵素製剤の委託先選定で絶対に外せない基準

1. 品質保証体制の有無とレベル

食品添加物や酵素製剤の製造委託先を選ぶうえで最重要視されるのは、品質保証体制です。
GMP認証やISO22000、FSSC22000など、第三者認証を取得しているかどうかは、現場でも当然チェックされます。
それだけでは不十分です。
実際に現地監査を行い、「帳票管理」「異物混入対策」「トレーサビリティ対応」など、現場の実運用がきちんと回っているか、必ず自分の目で確かめましょう。

また、異常時対応のスピード感や、正確な報告・説明をしてもらえるかという点も、現場目線では非常に重視されます。

2. 法令対応・食品安全管理の徹底

食品添加物や酵素製剤には、用途ごとに許可成分や配合比率、表示義務など日本独自の厳格な規制があります。
委託先がこれらを確実に理解し、正確に遵守しているかは、書面だけでなく過去の行政対応実績や自主点検結果からも直接確認する必要があります。

とくに海外委託の場合、日本への輸入時やPL保険加入状況まで掘り下げて確認しましょう。

3. 技術力と開発提案力

製造を効率的にこなすだけの委託先では、成長市場で勝ち残っていくことはできません。
たとえば「新規用途への応用開発」「粒径・粒状の改良」「エンザイム活性の安定化」といった独自技術や、最新トレンドを踏まえた技術提案ができる委託先こそ、長期パートナーとしての価値があります。

化学的根拠に基づいた改善提案や、他社事例を活かした新しい付加価値を提案してもらえるのか、現場では具体的な対話やサンプルテストを通じて見極めましょう。

4. サービス体制・納期厳守・危機対応力

どんなに高スペックでも、「頼んだものが必要なときに届かない」委託先では現場は安心して生産できません。
納期厳守・短納期対応の実績や、在庫・ロット管理能力、緊急トラブル時のバックアップ体制など、現場運営を直撃するポイントは必ず確認します。

メールや電話対応など、委託前後のコミュニケーション体制も安定生産のカギです。
いざというときに「現場に寄り添ってくれるか」「小さな相談にも応じてくれるか」は、見落としがちな隠れた選定基準です。

5. コストだけに惑わされないトータルバランス

価格重視の委託先選びは、一時的な安さに目を奪われがちですが、現場では中長期の安定供給やトラブルコストも見逃せません。
調達・品質・納期・技術力など総合的なバランスで評価する目を持ち、必要に応じて複数社と比較・分散委託するのも有効です。

昭和的な「慣習」「アナログ発想」から抜け出すために

現場目線では、どうしても「昔からの付き合い」「見積書の値段しか比べない」「現地監査も形だけ」といったアナログな発想が根強く残っています。
格安委託を選んだばかりに、原材料偽装や表示違反、不適合品流出などで大きなリスクを抱えた事例も少なくありません。

デジタル化・グローバル調達が進む現在、「情報を自ら取りに行く」「現地で徹底的に確認する」「技術開発力で他社と差別化する」といった“新たな地平線”の開拓が必要です。
過去の惰性に流されず、常に新しいパートナーを探し、相手先の成長ステージに合わせて柔軟に切り替える、攻めの委託戦略が求められています。

現場で使える!実践的な委託先評価チェックリスト

– 第三者認証取得(GMP、ISOなど)
– トレーサビリティ・帳票管理の現場確認
– 製造現場の衛生管理レベル(実地監査)
– 各種規制対応(表示、成分等)実績
– サンプル・パイロット稼働時の品質・納期
– 技術提案力・サポート体制(現場担当のレベル確認)
– 緊急時のバックアップ計画
– 改善提案の有無(新規用途・コスト・品質等)
– コスト分析(トータルコスト・リスクコスト含む)
– 他社との比較検証・相見積もり

現職の工場長や調達担当者はもちろん、これからバイヤーを目指す方、サプライヤー側でバイヤーの要求を知りたい方も、このチェックリストをベースにパートナー選定プロセスを磨いていくことをおすすめします。

まとめ:現場の未来を支える「選定眼」を持とう

食品添加物や酵素製剤の製造委託選定は、単なる価格比較や付き合いの継続ではなく、食品安全・ブランド信頼・コスト競争力…すべてを左右する要となります。
昭和の慣習に縛られず、現場をよく知る調達・品質管理・生産管理の立場から実践的なチェックを行うことが、企業全体の競争力に直結します。

技術・品質・サービス・コスト、そのすべてをフラットに評価し、「この会社なら未来を任せられる」と自信を持って言えるパートナーを、一緒に探していきましょう。
それが製造業の未来を切り拓く、本当の意味での「バイヤー力」だと、私は現場経験から確信しています。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。
あなたの現場に役立つ情報となれば幸いです。

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