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投稿日:2025年11月20日

B2B SaaSスタートアップが製造業のエンタープライズに採用されるためのCS戦略

B2B SaaSスタートアップが製造業のエンタープライズに採用されるためのCS戦略

はじめに:製造業のリアル課題とSaaSの可能性

B2B SaaSスタートアップの成長を語る上で、エンタープライズ製造業への普及は避けて通れない道となっています。
なぜなら、国内外問わず製造業は経済を支える巨大な産業であり、アナログな運用や属人化したプロセスが根強く残る現場だからこそ、SaaSの革新性が最大限に活きる市場だからです。

しかし、製造業の大手企業に自社SaaSサービスを採用してもらうハードルは非常に高いのが実情です。
現場に長年身を置き、システム導入に何度も立ち会ってきた立場で改めて考えると、“モノ”にこだわり抜く製造業ならではの視点で、SaaSへの抵抗感や、導入意思決定の複雑さが根強いことがわかります。

この記事では、B2B SaaSスタートアップがエンタープライズ製造業に採用されるために必須となるカスタマーサクセス(CS)戦略の本質を、実際の現場目線から深掘りします。

製造業エンタープライズを取り巻く3つの障壁

製造業の現場がSaaS導入に消極的、または慎重になる背景には、次の3つの壁があると考えています。

1. アナログ文化とレガシープロセス

多くの工場や現場では、昭和から続く紙ベースの帳票管理や、ベテラン社員の経験値に依存した「非形式知」が色濃く残っています。
この文化があるからこそ、突如として“クラウドで一元管理しましょう”という提案に対して強い心理的ブレーキがかかります。

2. 失敗を許容しない慎重な決裁プロセス

生産や品質の根幹に直結するシステム変更は、業務影響が大きすぎて簡単には決断できません。
万一現場の混乱や想定外のトラブルが起こった場合、工場長や担当部門長は厳しく責任を問われます。
このような現場主導のプレッシャーと、複数部門による合議制が、SaaS導入の決断を遅らせる原因となっています。

3. カスタマイズ前提の業務構造

どの製造現場も、「うちはうちのやり方がある」という独自のフローを持っています。
そのため、標準パッケージ型SaaSの“そのまま”の提供では現場の共感は得られません。

製造業エンタープライズの攻略にはCSが起点になる

上記のような障壁を乗り越えるため、B2B SaaS提供側はカスタマーサクセス(CS)に最大の投資をすべきです。

なぜなら、製造業は「契約して終わり」ではなく、むしろ導入開始後の定着・現場展開・成果創出までを伴走することで、はじめて標準化・全社展開・他拠点展開へとエンタープライズの本質的な採用とリカーリングが実現するからです。

SaaSスタートアップが意識すべき製造業向けCS戦略の要諦

現場巻き込み型オンボーディングの設計

製造業の現場で起きやすいのが、「本部主導でSaaSを導入したものの、現場が全く使わず形骸化する」現象です。
これを防ぐためには、現場ラインのキーパーソン(現場リーダーやオペレーター)を初期段階から巻き込んだオンボーディングプランが不可欠です。

例えば、導入キックオフの時点で現場作業者の“痛み”や“日々の困りごと”をヒアリングし、既存業務のどこをどのように改善したいのか丁寧に対話しましょう。
さらに、「現場で小さく使って、体感的に良さを実感してもらう」少数チーム単位のPoC(概念実証)やパイロット稼働が有効です。

そして、CS担当者(カスタマーサクセスマネージャー)が現場に定期出社し、日々の業務変化、使いこなしのコツ、困った時にすぐ相談できる関係性を作ることが、現場主導の自走化に直結します。

業界固有課題への深い知見と“翻訳力”

製造業のプロセスや制度は、業種ごとに大きく異なり、しかも日本独特の商慣習や法的要件も多々あります。

SaaSスタートアップが好かれるCSになるには、
・バイヤーである調達購買部門
・使い手である生産・品質・現場各部門
それぞれの視点や苦労をきちんと理解し、業界特有の課題やKPIに則してSaaSの価値を“翻訳”してあげることが重要です。

単なる製品紹介ではなく、
「このバッチ管理の自動化による棚卸時間の削減が、どうBOMのミス低減や納期遵守率に直結するのか」
というように、身近な課題解決とSaaSの“つながり”まで言及して納得感を醸成します。

柔軟なカスタマイズ・連携提案の重要性

製造業のワークフローは極めて個別最適化されています。

“自社向けカスタマイズなし・APIも限定的”といった一方的なパッケージ型SaaSでは、現実的に採用されません。
CS担当には、
「最低限この部分だけは自社の業務に合うようカスタマイズできます」
「既存のERPやIoTデバイスからデータ連携ができます」
といった提案ベースの柔軟姿勢が求められます。
ここで信頼を勝ち得ると、“現場の声”が導入推進の強力な後押しとなり、社内合意、最終承認までの流れが加速します。

ファクト×エモーションによる合意形成支援

エンタープライズ製造業は、現場の技術者、調達バイヤー、本部情シス、管理職、そして経営層など、導入プロジェクトへの関与者が多層化しています。

CS担当者は、現場起点で小さな成功(例:工程リードタイム短縮など)の成功事例をファクト(数値や実績)としてドキュメント化しましょう。
その上で経営層には、「現場でもこれだけの納得感・前向きな声が出ている」という“エモーション”を可視化し、
「社内全体へ拡大する必然性」を感情と論理両面から後押しするのが有効です。

現場コミュニケーションの地道な積み重ね

昭和的な現場文化を残す製造現場では、「机上の理屈」よりも「実際にどれだけ寄り添ってくれるか」が採用可否の大きな分かれ目になります。
例えば、現場での課題ヒアリングを毎週欠かさず行う、操作方法を動画マニュアルだけでなく現場目線の“紙”でも配布する、などの地道なサービスが、「あのSaaSのCSは信頼できる」という心理的安全につながります。

ユーザーコミュニティ・ベストプラクティスの循環づくり

先行導入ユーザーのベストプラクティスや、現場作業マニュアルの改善例を、他拠点や同じ悩みをもつユーザー企業へと横展開する「ユーザーコミュニティ」の創出は極めて重要です。

このような“横のつながり”をCS主導で育成することで、製造業内の閉鎖的な情報網や、不安を抱える現場の“声”を拾い上げ、プロダクト進化サイクルへと転換することができます。

製造業の現場目線から見たCSの未来とSaaSチーム構成

CS組織に現場経験者を組み込む意義

SaaSスタートアップのCS組織に、元工場長や生産管理、品質保証、購買バイヤー経験者を積極採用・配置することで、現場の言葉や苦労を実体験で理解でき、SaaS側の“想い”と現場側の“文化”を橋渡しする強力な推進力となります。

現場目線CSの育成には“内省力”と“共感力”が不可欠

製造業エンタープライズ向けSaaSのCS担当には、自身がSaaSの仕組みや最新テクノロジーに精通するだけでなく、
・なぜ現場は変わらないのか
・“困りごと”の本質は現場~経営層でどう違うのか
こうした内省力をもって、相手の立場を想像して動く共感力が求められます。
ラテラルシンキング(水平思考)を活用し、先入観にとらわれない新しいアプローチや、現場目線での小さな発見の積み重ねこそが、SaaS採用成功のカギとなります。

結論:SaaSの価値は現場の“成功体験”に宿る

B2B SaaSスタートアップがエンタープライズ製造業の強固な“壁”を打ち破るには、「本当に現場が“使ってよかった”」という日々の小さな成功体験・安心感の積み重ねこそが最強のCS戦略です。

プロダクトの優秀さや最新技術だけではなく、
・現場に寄り添い、地道なコミュニケーションを惜しまない
・徹底した業務理解と共感力で現場の“不安”を払拭する
・カスタマイズ・連携・小さな成功事例展開で合意形成までやりきる

この“三位一体”を通じて初めて、製造業エンタープライズへの本質的なSaaS浸透を成し遂げることができます。
スタートアップのCS/プロダクトチーム全員で、「現場起点のサクセス」の輪をさらに広げていきましょう。

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