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メーカーのテストマーケティングにおける顧客セグメントの切り方

目次
はじめに:製造業におけるテストマーケティングの重要性
製造業の現場では、長い間「良い製品を作れば売れる」という信念が根強く残っています。
しかし、市場環境が激変する現代においては、その考えだけでは通用しません。
特に、開発コストや原材料価格の高騰が続く中で、新製品の失敗が企業全体に与えるインパクトは年々大きくなっています。
そうしたリスクを最小限に抑えるためにこそ「テストマーケティング」──つまり、市場投入前の検証プロセスが重要になっています。
特にこのプロセスで見落としてはいけないのが、「顧客セグメントの切り方」です。
自社の新製品をどの層に売り込み、誰からフィードバックを得るのか。
この切り口を誤ると、どれだけテストを行っても本来の市場ニーズを掴めず失敗に終わります。
本記事では、製造業の現場で実際に役立つ、リアルな顧客セグメントの分け方について解説します。
バイヤーや現場の購買担当者目線、サプライヤーとしてバイヤーの考えを知りたい方、そして製造業に従事されている広い層の方に役立てていただける内容です。
昭和的「勘と経験」と決別するセグメント設計の重要性
テストマーケティングで多くの企業が失敗する原因のひとつは、「なんとなく」でターゲットを決めてしまうアプローチです。
現場の「勘と経験」も確かに大切ですが、昨今の多様な市場ニーズへの対応としてはそれだけでは不十分です。
製造業が変革を迫られるいま、顧客ニーズを正確に捉えるための「科学的なセグメント設計」が必要になっています。
なぜ昭和的思考から脱却できないのか?
長年「この取引先とやってきたから」とか、「過去の実績がある顧客だから」といった理由でターゲットを設定してしまうケースはまだまだ多く見受けられます。
しかし、購買担当者の異動や組織再編により、長年の信頼や関係が一瞬で振り出しに戻ることも珍しくありません。
一方で、市場や顧客側も変化しています。
調達部門は経営目線での最適化を強く求められ、サプライヤーに従来以上の提案型アプローチを期待するようになっています。
この流れの中で、選りすぐりの顧客セグメントを設定せずにテストを進めるのは致命的な失敗につながります。
製造業のテストマーケティング──顧客セグメントの基本的な切り口
では、製造業におけるテストマーケティングではどのような観点で顧客セグメントを切るべきなのでしょうか。
1. 製品の用途・適用業界で分ける
自社の技術や製品が持つ「本来の強み」はどの業界、どの用途で最も価値を発揮するのか。
これはテストマーケティングの大前提となります。
例えば、同じ金属加工部品でも、航空機向けと自動車向けとでは求められる仕様やコスト感が全く異なります。
ここを細かく分けることで、得られるフィードバックの質が格段に高まります。
2. 顧客規模・組織の購買プロセスで分ける
中堅・中小企業向けと、大企業向けとでは、決裁プロセスや価格交渉の進め方に大きな違いがあります。
中小企業の場合は現場担当者と直接商談がしやすく、フィードバックもスピーディ。
逆に大手企業はプロセスが長く、承認者~利用者の現場まで階層が複雑です。
テストマーケティングでは、これらの違いを意識し「フィードバックを得るべき顧客層」と「量産展開すべき顧客層」を明確に分けておくべきです。
3. 顧客課題の深刻度で分ける
例えば「現行品の調達コスト削減」が喫緊の課題となっている顧客と、「安定供給」や「サステナビリティ」が最重要テーマの顧客では、響く提案も異なります。
自社の新製品/新工法が、顧客のどの課題解決に直結するのかを客観的に洗い出し、セグメント分類に活かすことが戦略的に重要です。
現場目線で“刺さる”セグメント化の実践テクニック
実際の製造業現場では、上記の理屈をどのように落とし込めばよいのでしょうか。
ここでは、私が工場長として数多くのテストマーケティングを主導した経験から、即実践できる小技やコツを共有します。
1. サプライチェーン上流~下流でピンポイントに狙う
テストマーケティングだからといって、「全体最適」を最初から狙う必要はありません。
むしろ、サプライチェーン内の上流工程や下流最終ユーザーを意図的に“狙い撃ち”して、局所的なフィードバックを得るアプローチが効果的です。
例えば、新しい溶接材料であれば、最初は“溶接工法そのものの開発に積極的な加工業者”だけをターゲットにする。
現場発案の新工具であれば、“段取り替え工数に課題意識がある現場管理者”に絞って検証を進める。
こうした“熱量の高い”関係者を巻き込むことで、早期に本質的な改良点や、量産へ向けた課題の抽出が行えます。
2. 「組織タイプ」ごとにコミュニケーションを調整する
バイヤー部門主導の顧客(購買主導型)は、カタログスペックや価格訴求が主な関心になります。
一方で現場技術者主導(現場巻き込み型)は、試作~改善のPDCAサイクル、そのスピード感を特に重視します。
同じ製品でも、“誰の課題をテストするのか”、その顔を意識してヒアリング項目やプレゼン方法を調整することが、テストの質を大きく左右します。
3. “アナログ文化が残る現場”のための現地現物アプローチ
製造業界にはIT化・DX化の波及が遅い現場も珍しくありません。
昭和的な「現場主導」の空気が強い会社には、オンラインアンケートやツールだけでなく、『現地現物』の訪問ヒアリングを欠かさないことが鍵です。
実際に現場に入り、作業者の手元や動線を目で確認したうえでフィードバックを集めましょう。
それが時代遅れどころか“現場で本当に効くテストマーケティング”の王道です。
“なぜそのセグメントなのか?”を言語化する
新しい顧客セグメントを設定する際、最も重要なのは「なぜその顧客群なのか」「なぜ他ではないのか」を言語化し、社内外で共有することです。
テストマーケティングの進捗が思わしくない場合や、新たな方向転換が必要な場合にも、この軸がしっかりしていれば素早く軌道修正が可能です。
社内の他部署や上層部への説明時にも、“何を検証したいのか、その理由は何か”を明文化することで、協力体制の強化やスムーズな情報共有が実現します。
バイヤーやサプライヤーの「現場心理」を可視化する効果
テストマーケティングにおける顧客セグメント設計を通して、バイヤーやサプライヤーの本音や現場心理が浮き彫りになります。
単に「売りやすい顧客」や「長年の取引先」を選ぶのではなく、「何に困っているのか」「どうしたら判断材料を増やせるのか」という“現場の声”を捉えることが、次なるイノベーションにつながります。
サプライヤー側から見れば、バイヤーが求めている課題解決の優先順位や、社内稟議の実態も見えてきます。
バイヤー志望者にとっては、メーカーが「なぜある特定の顧客を重視してテストするのか」「判断材料や期待値は何か」といった分析眼を養う機会となるでしょう。
まとめ:これからの製造業に必要なセグメント戦略
製造業のテストマーケティング成功の鍵は、「ターゲット顧客の正確な選定と、その理由の明確化」にあります。
昭和的な感覚や“いつものやり方”から一歩踏み出し、市場・業界・現場に合わせた柔軟なセグメント設計を行うこと。
現場の空気や心理に根差した、「なぜこの人、この組織にテストを依頼するのか」という顧客セグメント設計を徹底して実践しましょう。
これが新しい時代の製造業の発展に不可欠な視点となります。
今一度、貴社の製品開発や市場展開の現場で、「セグメントの切り方」について本質的な問い直しを行ってみてください。
前例主義や惰性にとらわれず、現場・顧客・市場を“本当の意味で”見ることが、テストマーケティングを成功に導く一番の近道です。