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QC七つ道具をExcelで活用するデータ分析と改善事例

目次
QC七つ道具とは何か?〜製造業現場に根付く“見える化”の基本
QC七つ道具(Quality Control Seven Tools)は、日本の製造業の現場で長きにわたり品質管理の礎として活用されてきました。
昭和の高度経済成長期から令和の現代に至るまで、“QCサークル”を中心とした現場改善活動や、不良削減プロジェクトで欠かせない道具です。
しかしデジタル技術が発展する一方、多くの工場では紙や手作業のアナログ運用が根強く残り、「データ収集は手書き、集計はExcelで…」という日常が続いています。
この現実を踏まえながら、QC七つ道具の基本と、Excelを活用した“実践的データ分析・改善プロセス”を解説します。
バイヤー視点やサプライヤー視点も交え、すぐに現場で使える考え方やスキルを紹介していきます。
QC七つ道具の概要とExcel活用のベストプラクティス
QC七つ道具の一覧と現場の実態
QC七つ道具は次の7つを指します。
- パレート図
- ヒストグラム
- 特性要因図(フィッシュボーンダイアグラム、Ishikawa図)
- グラフ(チェックシート・散布図・管理図・層別)
- チェックシート
- 散布図
- 管理図
どれも「製造現場で発生している現象」を“見える化”する分析ツールです。
根本的な不良の原因探求、ロットごとの品質傾向分析、サプライヤー選定のエビデンス作り…などに欠かせません。
しかし実態は、手書きでチェックシートを作成 → データをExcelで集計&グラフ化 → 図表をPowerPointに貼って会議資料化、という流れが大半です。
最近はIoTデータやMES(製造実行システム)から直接データを取るケースも増えていますが、現場改善の“起点”はやはりアナログで現物を見て手を動かすことに本質があります。
Excel×QC七つ道具の相性の良さ
なぜExcelが使われ続けるのか。
理由は単純で「多くの現場スタッフが扱える」「初期コスト不要」「カスタマイズしやすい」からです。
具体的には以下のようなメリットがあります。
・入力形式を自由に設計できる
・関数やマクロで自動集計・プログラミングも可能
・加工/修正しやすい
・多様なグラフ機能(棒グラフ・散布図・ヒストグラムなど)が標準装備
誰でもすぐ始められる&応用できるため、改善活動の現場では今なおExcelが主役です。
QC七つ道具をExcelで活用した具体的なデータ分析の進め方
Step1: チェックシートによる現象の観測・記録
最初の一歩は「現場で観測すること」から始まります。
多くの場合、不良が発生した品物やタイミング、作業者、設備記録などを手書きの帳票で収集します。
ここでのポイントは「最小限の項目でデータを集める」こと。
一覧化したチェックシートのフォーマットをExcelで作成し、現場へ配布。
入力に迷わないよう必須項目を分かりやすくするか、入力規則やプルダウンリスト等で簡素化しましょう。
後ほどExcelで集計することを想定し、最初から「日付」「品番」「発生場所」「不良内容」「原因メモ」など項目を整理しておきます。
Step2: パレート図/ヒストグラムによる傾向把握
記録したデータをExcelで集計し、「不良内容」ごとの件数をカウントします。
ここで活躍するのがExcelのピボットテーブルとグラフ機能です。
ピボットテーブルで「不良内容」のカウント集計を行い、棒グラフを作成。
同時に累積比率を計算し、パレート図(不良件数の多い順+割合)を完成させます。
また、寸法測定データや連続値にはヒストグラムを使い、規格内・外の分布傾向を視覚化します。
この分析が「どの問題に優先対処すべきか」「そもそも異常値はなぜ出たか」仮説を立てるヒントの宝庫となります。
Step3: 特性要因図で「なぜなぜ分析」〜真因に迫る
パレート図で大きな問題領域をつかんだら、特性要因図(フィッシュボーン)をExcelで作成します。
Excelの図形ツールやSmartArtで簡単にフォーマットを組めるため、不良の“要因群”を「人・設備・材料・方法・環境」などの軸でグルーピングします。
この段階では「現場担当者・工程リーダー・管理職」など複数メンバーで議論し、なぜなぜと深掘りすることが重要です。
単にデータ収集だけでなく、“現物現場現実”の事実を確認しながら仮説をぶつけ合うことが肝要です。
Step4: 散布図・管理図による“変動・相関”の見える化
散布図は「2つの要因の相関性」を確認するのに使います。
例えばA作業者とB作業者で歩留まりに差がないか、特定設備の稼働日だけ不良が多いか、といった傾向可視化が可能です。
管理図については、時系列で“相場”を把握しつつ異常傾向の予兆発見に活躍します。
Excelの標準グラフでXバー・R管理図を作成できるほか、マクロやVBAで自動判定機能を組み込むことも可能です。
Step5: 改善アクションと見える成果
導いた分析結果をもとにカイゼン案を立案・実行します。
その進捗や効果検証もExcelでフォローすれば、誰でも一目で“どこがどう変わったか”結果が見えます。
成果発表や社内プレゼンも、Excelグラフやピボットデータを用いて可視化すれば、説得力のあるレポートが作成できます。
Excel×QC七つ道具活用の“あるある改善事例”
事例1:アナログ工程の「不良撲滅」活動
ある基板実装工場では、従来“目視検査員の感覚”でピンはんだ部の不良品を選別していました。
しかし不良流出が相次ぎ、チェックシートを現場導入し、1か月収集データをExcel集計。
パレート図を作成し、「特定ラインの特定時間帯に多発」「同じ作業者の不良率が高い」と気づき、設備メンテナンスや教育指導の重点箇所を明確化。
結果、3か月で不良率を半減させました。
事例2:サプライヤー改善指導の交渉武器
部品サプライヤーからの納入不良に悩んでいた組立メーカーでは、終了検査の測定データをExcelでヒストグラム化し、規格外品の分布や傾向を特定。
管理図も作成し、異常点発生のタイミング・部品ロットNo.ごとのクセを可視化。
データ根拠をもとにサプライヤーと協議し、製造条件改善や工程監査の的確な交渉・指導につなげました。
事例3:事務部門のQC活動でリードタイム短縮
調達購買部門でも、処理遅延の要因データをExcelチェックシートで集計。
パレート図や散布図を使って「書類不備」「承認待ち」「供給遅延」などムダの山を浮き彫りにし、対応プロセスを標準化・自動化。
部品納期遅れが3割減少し、QCD(品質・コスト・納期)が大幅改善したケースがあります。
昭和的アナログからの脱却と、現場目線のDXへのヒント
QC七つ道具の基本的思想は「数値や現象を“見える化”し、現場で議論し、仮説検証を回すこと」です。
Excelはまさにアナログとデジタルの橋渡しとなり、現場知の集積を加速します。
ただし「やりっぱなし」「使い捨て」になりがちなので、標準フォーマット化・共有ルール化・改善サイクルの継続が大切です。
また、近年はパイソンやRなどのデータ分析ツール、IoTセンサーデータの自動収集環境も登場していますが、まずは“現場目線”でQC七つ道具のデータ蓄積をExcelで体得しておくことが、次のDX推進の基礎力になります。
まとめ〜現場起点の「見える化」と未来のものづくりへ
QC七つ道具は決して古いアナログ手法ではありません。
むしろデータドリブンなデジタル時代に対応するための“現場力”強化の起爆剤です。
ExcelによるQC七つ道具の活用は、誰もが実践できる“地に足のついた改善術”です。
現象を記録し、傾向を読み、仮説を議論し、改善ループを回す。
この一連の積み重ねが、製造現場を着実にレベルアップさせ、サプライチェーン全体の信頼度向上にも直結します。
製造業に従事するあなた、バイヤーを志望するあなた、サプライヤーとの協業に悩むあなたへ。
昭和時代の職人気質な現場力と、デジタルツールの長所を組み合わせ、よりよい“ものづくり”の未来を切りひらきましょう。
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