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投稿日:2026年2月5日

リスキリング対象外になった人材のモチベーション低下

はじめに

近年、製造業においてもデジタル化や自動化が急速に進展しています。
DX(デジタルトランスフォーメーション)が叫ばれる一方で、企業は「リスキリング(新しいスキルの再習得)」という言葉に注目し、新しい時代の変化に即応できる人材の育成に力を入れています。
しかし、その波に乗ることができず「リスキリング対象外」とされた現場のベテランや中堅社員が、いつの間にか会社の中で疎外感を感じ、モチベーションを失ってしまうという深刻な現象が多発しています。

本記事では、なぜリスキリング対象外になった人たちがモチベーションを低下させてしまうのか、実際に製造業の現場で起きているリアルな背景や、組織として考えるべき対策について、私自身の現場経験を交えながら解説します。
また、調達購買部門やサプライヤーと連携する立場として、各部署の立ち位置や今後注目すべき業界動向についても触れていきます。

リスキリングとは何か?

リスキリングの基本的な目的

リスキリングとは、変化するビジネス環境のなかで必要となる新しいスキルを社員が再習得する仕組みや取り組みを指します。
DX人材、データサイエンティスト、ロボットエンジニアなど、時代の要請と共に必要とされるスキル分野は大きく変化しました。
多くの企業は若手や管理職候補を中心に研修プログラムを用意し、将来の成長ドライバーとなる人材育成戦略を推進しています。

対象外となる現場社員の現実

一方、現場のオペレーターや長年同じ仕事を担当してきたベテラン社員、次期定年を控える中高年層が「リスキリング対象外」とされるケースも珍しくありません。
「あなたはそのままでいい」「もう新しい仕事は期待していない」という半ば暗黙のメッセージは、担当者の心に大きな影を落とします。

モチベーション低下がもたらす組織への深刻なダメージ

現場力の低下と慢性的な非効率化

製造現場の強みは、図面だけではわからない「現場感覚」や「職人技」「ちょっとした気付き」に支えられています。
ベテラン社員は、過去に数々のライン異常やトラブル対応を経験し、省力化や品質改善の源泉となるノウハウを豊富に持っていることが少なくありません。
しかし、一度モチベーションを失ったベテランは、「どうせ意見を言っても無駄だ」「新しいことはやらない」と距離を置き始めます。
この隠れた知見の損失は、やがて現場力の大幅な低下と、慢性的な品質事故や効率低下に直結します。

「心の壁」が生む職場の分断

リスキリング研修を受けて成長を期待される一部社員と、変化の外側に置かれた人。
現場では、対立まではいかずとも暗黙の「壁」が生まれやすくなります。
若手は「ベテランの言うことは古い」、ベテランは「最近の若者は実地が分かっていない」と相手を批判し、相互理解が進みません。
組織全体のエネルギーは消耗し、PDCA(Plan-Do-Check-Act)活動も中途半端で終わることが増加します。

なぜ製造業では「対象外」が生まれやすいのか

アナログ文化との葛藤

昭和平成からの歴史が長い製造業界では、現場のオペレーションが「人依存」「職人気質」「経験の継承」といったアナログな要素に基づく部分も多く残っています。
本来「人がコア」である現場なのに、「ITスキルの有無」というデジタル軸だけで判断され、長年貢献してきた社員が新しい価値を得にくい環境となっています。

人材流動性が低い中での限定的なリスキリング

製造業の多くは、中途採用よりも新卒一括採用・年功序列を重視します。
このため「今いる人材をどう配置転換するか」に目がいきがちです。
しかし、リスキリングの枠が少なく、「一部のデジタル人材候補」しか対象にしない傾向が強いと、その他大勢は補助的な働き方しか期待されなくなります。

現場で実際に起こるモチベーション低下の現象

「どうせ無理」「やらされ感」の蔓延

リスキリング対象外の社員は、日々マンネリ化した作業に追われ、自分の成長実感や価値の再発見が困難になります。
新しい改善提案や現場改善活動に対しても「どうせ通らない」「やったところで評価されない」という空気が蔓延し、積極性が失われていきます。

「沈黙を選択するベテラン」の台頭

ひと昔前ならば、言葉が足りなくてもピリッと引き締めてくれる熟練者がいました。
今では、若手に遠慮し「聞かれても答えない」「自分から情報を出さない」等“沈黙型ベテラン”が増え、組織のノウハウ伝承が極端に滞っています。

業界動向:本当に欲しい人材とは何か?

多様なキャリアと経験軸の再評価

今後の製造業では、極端なデジタル偏重だけでなく、「現場オペレーション×IT」「アナログの知恵×現場改善力」といった多様なスキル統合型人材が求められます。
実は現場のベテランこそ、AIやIoTを「現場目線でどう活用したら効率化や品質向上につながるか」を考える“リアルな提案者”として存在価値が高いのです。

バイヤーやサプライヤーも「現場感」のある担当が重宝される時代へ

調達・購買部門でも、「コストダウンだけではなく、現場工程理解や品質・納期トラブル予知ができる人材」が重視される時代です。
サプライヤー側がベテランのバイヤーや現場経験者の視点を理解することで、より深い対応が可能になります。

組織がすぐ実施できるモチベーション維持・向上施策

「キャリアの棚卸し」と現場OJTの見直し

リスキリング対象外の方にも自分の「キャリアの棚卸し」を促し、今まで培ったスキルやトラブル対応歴など強みを社内外で見える化することが重要です。
現場OJTを若手だけでなくベテラン向けにも再設計し、「気付き」「問題解決」「隠れた改善能力」を評価する場を設けましょう。

前向きなコミュニケーションの場づくり

若手とベテラン、それぞれの視点を体感できる「ダイアログ」「スキルシャッフル会」などを定期的に設定することで、お互いの知恵・経験・改善提案が交差する土壌が育ちます。
暗黙の「壁」を解消するには、雑談や本音が出せる小さな場の積み重ねが有効です。

モチベーションアップを評価体系へ組み込む

単なるスキル習得だけでなく、「何らかの形で現場を盛り上げたり後進にノウハウを伝えたりした」アクションを評価・表彰する仕組みが、意外に効果を発揮します。
これはバイヤーやサプライヤーといった間接部門でも同様で、「現場を理解しよう」「学びあおう」という行動様式自体にスポットを当てましょう。

これからの製造業に求められるマインドセット

デジタル化やDXの推進は大きな流れですが、業界特有の「現場感覚」「職人技」「ささいな違和感への気付き」こそが、日本のものづくりの最大の武器です。
リスキリング対象外となった人材の知恵、経験、やる気を上手に引き出し、多様な働き方やキャリアに価値を認める組織運営が、地に足のついた競争力につながります。

私たちは職場の一人ひとりが新しいステージで価値を発揮できるよう、部門の壁を超えて学び、語り、支えあう姿勢を大切にしたいものです。

まとめ

リスキリング対象外の人材のモチベーション低下は、本人のみならず組織に大きな影響をもたらします。
現場目線を大切にし、ベテランの知恵・経験も活かせる風土づくりが、企業の持続的な競争力を生み出します。

今こそ「誰も取り残さない」キャリアと成長のあり方を見つめ直し、新しい時代の製造業へと挑戦していきましょう。

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