投稿日:2025年11月4日

製造現場で発生する不良の分類と対策アプローチの思考法

はじめに

製造業現場で「不良ゼロ」を目指すのは永遠の課題です。
市場からのクレームや現場での手戻り、歩留まり低下など、不良がもたらす問題は多岐にわたります。
しかし、不良の発生を根絶するのは決して容易なことではありません。
なぜなら、不良の種類やその発生メカニズムは現場の数だけ多様化しており、単一のアプローチでは解決できないからです。

本記事では、製造現場で発生する不良の分類、そして現場目線で実績のある対策アプローチの思考法を詳しく解説します。
多くの工場が昭和時代のアナログ文化から抜け出せない中、時代に適応しながらも本質を押さえた改善活動のヒントをお伝えします。

不良品の定義と現場が直面する問題

「不良」とは何か?現場視点で再定義

「不良品」というと、検査で基準外と判定された品物を指すことが一般的です。
しかし、現場ではもう一歩踏み込んだ定義が必要です。
たとえば「顧客仕様には合致したが、後工程で使いづらい」「本来の美観は損なわれていないが、寸法にバラつきがある」など、生産工程ごとに“実質的な不良”が存在します。
現場で起こる「流せど流せど品質の安定しないもの」「再発を繰り返すトラブル」は、判定で白黒つけられるものだけにあらずです。

表に出る不良と潜在的な不良

発見されやすい「顕在的不良」と、顧客や後工程に流出することで初めて外部指摘・クレームとなる「潜在的不良(隠れ不良)」があります。
表に見えている不良の陰には、表面化していない不良が何倍も潜んでいるということを現場では常に意識しなければなりません。
この潜在不良は、サプライヤーとバイヤーの摩擦の火種にもなります。

不良の分類:実務で役立つ視点

1. 発生原因による分類

現実の工場で活用されている主な分類は次の通りです。

– 材料不良:仕入材料や部品の不適合(寸法、材質ミスなど)
– 設備・機械的要因:機械の老朽化や誤動作、セッティングミス
– 人的要因:手順ミス、スキル不足、確認漏れ
– 工法・工程設計の不備:製造条件そのものに起因する
– 外部環境由来:気温・湿度・静電気、搬送時のダメージ

それぞれの原因が複雑に絡み合い、多くの場合“多因子”で現れるのが実情です。

2. 発見タイミングによる分類

不良が発見される工程によってもアプローチが異なります。

– 前工程で判明:現場内で抑えられ、被害が最小限
– 後工程で判明:手戻りや再作業発生、コスト膨張
– 納品後に判明(市場・顧客):重大クレームや信用失墜

現場の“真価”は、この「発見の早さ」に直結します。

不良対策アプローチの基礎

1. 顕在的不良には「4M」でアプローチ

製造業では「Man(人)・Machine(機械)・Material(材料)・Method(方法)」の4Mを切り口に不良要因を追います。
たとえば
– オペレーターの交代時のみ不良が多発(Manの問題)
– 使用している型が特定時のみ寸法バラつき(Machineの問題)
– 仕入れロットごとに不具合発生率に差(Materialの問題)
– 標準書の手順自体が複雑で間違いやすい(Methodの問題)

「チェックリスト化」「5Sの徹底」や「標準作業の見える化」から始まり、現場リーダーが現物を見て仮説–検証するアクションが基本です。

2. 潜在的不良は「ロジックツリー」「なぜなぜ分析」で深堀り

顕在的な不良の裏に“伏兵”として潜む潜在的不良は、ラテラルシンキング(水平思考)で多面的に原因を探索します。
伝統的な「なぜなぜ分析」や、「ロジックツリー」を用いて、複数の要素に横串を刺していくことで因果を浮き彫りにします。
現場の声やヒヤリハット、異常傾向データの蓄積など、見過ごしがちなサインも拾い上げる必要があります。

昭和から続くアナログ的業界文化と改善への壁

紙管理・職人芸の限界

品質管理台帳や工程日報、点検記録など、今も依然“紙”で管理している現場は少なくありません。
伝統的な「目で見て覚える」「体で感じろ」「製品は俺が責任をもって検査する」といった職人文化が根強く残っています。

この昭和的な現場力は一方で“匠の品質”を支える強みでもありますが、標準化や見える化、自動化の壁になっているのも事実です。
「問題が起きたらベテランに聞け」という暗黙知の伝承では、潜在的不良や突発的な品質事故に立ち向かう力が弱くなってしまいます。

EXCEL地獄と属人化リスク

「データはEXCELで個別管理、権限は班長のPCにのみ…」という属人管理は、不良原因のトレースや全体最適の阻害要因です。
システム化はコストと労力が必要ですが、長期的には“品質事故時の損失リスク低減”という大きなベネフィットがあります。

バイヤー・サプライヤー目線での不良対策の要点

バイヤーが求める「再発防止」と「トレーサビリティ」

バイヤーの立場から見ると、不良流出後に最も重視されるのは『再発防止策の有無』『原因究明のロジック』『発生品番・ロットの特定(トレーサビリティ)』です。
「再発防止策は何か」「同様の不良が他のロットで起きていないか」「どこまで遡って原因が特定できるか」。
これら質問への回答力こそが、発注先としての信頼を左右します。

サプライヤーが理解したい、バイヤーの心理

バイヤーは“全体最適”という視点で、複数のサプライヤーの不良リスクを評価します。
一方で多品種・小ロットが進む現代では、不良ゼロは理想論です。
その中で「発生した際のエスカレーション対応力」や「自部門だけでなく、上流(材料・部品仕入れ先)までボトムアップできる組織」「良い情報も悪い情報も隠さず開示する誠実さ」が重視されています。

サプライヤー側は、単なる『納入合格品率』ではなく「不良発生後、どのように報連相し、組織横断で再発防止を実行できるか」を武器として強調しなければいけません。

DX・自働化時代の不良対策

AI・画像認識・IoTデータによる未然防止

近年、AIによる画像検査やIoTデバイスからのリアルタイム工程監視が普及してきています。
人に頼った「抜き取り検査」や「五感検査」から、「全数データ可視化」へとシフトしています。
これにより顕在不良だけでなく“異常傾向”を早期検知するアプローチが進みつつあります。

現場の“小さな気付き”をデジタルで拾い上げる

DX化は単なるハイテク化ではありません。
現場の感覚・ヒヤリ経験を自動化・可視化に変換することで、潜在的な不良の芽を早期発見しやすくなります。
「なぜ毎月この時期だけ微小な寸法バラつきが…」「急に新しい不具合傾向が…」といった違和感を仕組み化で吸い上げることが現代の現場力強化なのです。

まとめ

不良の分類と対策アプローチを実践的に進化させるには、
– 「本質的な現場目線」と「時代に即した仕組み」
– 正しく原因を区分し、再発防止までやり切る組織
– サプライヤー・バイヤー両面の意識と、隠さない誠実な品質マネジメント

が鍵になります。

アナログな現場知と先端技術、バイヤーの厳しい目とサプライヤーの現場力が融合したとき、製造業は昭和のやり方から“次世代型現場”へと進化します。
不良対策は終わりなき挑戦です。
ですが、その一歩一歩の積み重ねが、日本のものづくりの未来を切り開いて行きます。

工場現場で悩む多くの方、バイヤーを目指す方、サプライヤーとして品質マネジメント力を磨きたい方へ、本記事が新しい着眼点と現場改革のヒントになれば幸いです。

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