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海外製造業の購買部門が評価する“誠実さ”の定義

目次
はじめに:グローバルサプライチェーンにおける「誠実さ」の価値
製造業の現場で調達購買や生産管理、品質管理に長年従事している方であれば、「誠実さ」という言葉を何度も耳にしたことがあるのではないでしょうか。
特にバイヤー、すなわち調達担当者は、サプライヤーを選定・評価する際、「誠実さ」を非常に重視します。
海外のグローバルメーカーではその傾向が一層強く、「技術力」や「コスト競争力」と同等か、それ以上に「誠実さ」が重要視されることも少なくありません。
本記事では、なぜ海外製造業の購買部門が「誠実さ」を重視するのか。
「誠実さ」とは具体的にどういう行動や態度のことか。
そして、日本のメーカーやサプライヤーがこれから海外市場で「誠実さ」をどうPRし、差別化していくべきかを、現場目線で掘り下げていきます。
なぜ今、“誠実さ”が評価基準となるのか
グローバル調達構造の変化と情報開示要求の高まり
1980年代、90年代と違い、現在のグローバル製造業の調達・購買部門には多様なサプライヤーがひしめいています。
どこも似たような製品、同等の品質、近い価格を提示する時代になりました。
その中でバイヤーが着目する際立った評価軸が「誠実さ」です。
特に近年は、CSR、コンプライアンス、SDGsに基づいたビジネス運営が求められています。
法規制やサプライチェーン全体の透明性強化により、企業の情報開示義務が増し、サプライヤーにも「隠し事のない、真正面からのコミュニケーション」が求められるようになっています。
また、過度なコストダウン要求や品質トラブルによるリコール、輸送遅延など、サプライチェーンのどこかでトラブルが発生すると、バイヤーに求められる責任やリスクも飛躍的に高まっています。
“信用リスク”を回避したいバイヤー心理
製造業のバイヤーは一度事故ると社内外からの厳しい追及を受けます。
「なんでそんな業者を選んだ?」という責任問題に直結します。
つまり、見積条件がわずかに有利な業者よりも、信頼でき、人間関係が築ける「誠実なサプライヤー」と付き合うことで、バイヤー自身のリスク回避やキャリア安定につながるのです。
これは日本国内だけでなく、信頼関係やリスクマネジメントを重視する世界のビジネス現場で共通する傾向です。
海外バイヤーが評価する“誠実さ”の具体事例
誠実さの本質は「裏表のなさ」と「率直な自己開示」
「誠実さ」を一言で表すなら“裏表のなさ”です。
誤魔化しやご都合主義ではなく、良いことも悪いこともきちんとオープンに伝える。
これは問題が起きた時ほど如実に現れます。
例えば納期遅延の可能性が出てきた時、「まだ大丈夫だろう」「ごまかして何とかする」ではなく、初期段階でリスクを包み隠さず伝える姿勢。
もちろん、遅延要因・今後の対策案・影響範囲まで、データとともに説明します。
いい情報だけでなく、悪い情報こそ率直に共有する―。
これが海外バイヤーの信頼を得るカギとなります。
「できない」ことを「できる」と言わない勇気
受注前の打ち合わせや見積時、無理な条件を相手にのまされそうな時、日本のサプライヤーは多少無理してでも「できます」と言いたくなるものです。
しかし、結果的に納期や品質トラブルを生み、信用失墜につながります。
海外バイヤーは「できること/できないこと」をはっきり線引きし、その理由や背景まで説明できる姿勢を高く評価します。
リスクのありかを開示することが、むしろ長い目で見てバイヤーに安心感を与えるのです。
ハイリスク案件には、「やったことがない」「経験不足だ」など、弱みも正直に開示したうえで、どこまでやれるか、どんな技術サポートがあれば取り組めるか、率直に話しあう。
こうしたやりとりが戦略的パートナーシップにつながります。
“記録”と“証拠”の文化による信頼の積み上げ
多くの海外メーカーでは「書面の約束」「記録の保存」「なぜそうなったのか、時系列の証拠提示」を重視します。
調達・品質管理の現場では、ヒアリングや調査結果、トラブル報告、カイゼン活動の履歴など、必ず書面で残してやりとりします。
後から説明責任やトレーサビリティが徹底できるかどうかが、“誠実さ”の客観的証左となります。
そのためには、記録をすぐに出せる体制整備、都合の悪い証拠も隠さず出すルール作り、日ごろの情報共有オペレーションが重要です。
昭和流“義理人情”とグローバルの“誠実さ”の違い
日本の製造業では、「義理人情」や暗黙の了解が長らく現場文化として根付いてきました。
たとえば、「阿吽の呼吸でわかるだろう」「長年の付き合いだから…」という独特の信頼関係です。
しかし、グローバル大手メーカーや海外現法の購買部門では、そうした“察し文化”は通用しません。
海外の“誠実さ”は、「自分の立場・意見・現状を正確に伝える」「裏表なく事実を共有する」ことが本質です。
義理人情や根回しに頼らず、書類・証拠・データで納得してもらうのが絶対条件になります。
日本の良き伝統を大切にしつつ、これからは“伝える勇気”と“論理力”“説明責任”のスキルアップが不可欠と言えるでしょう。
サプライヤー視点:海外購買部門が喜ぶ具体的な“誠実さ”のアクション
初めての取引・仕様打ち合わせ段階での透明性
新規案件やグローバル見積引合いの際、“分からないことは分からない”と伝える勇気が重要です。
たとえば、図面やスペックの一部に不明点があれば、「この箇所の仕様意図・使われ方の背景」を明確にヒアリングしましょう。
「再三質問をすると嫌われるのでは…」と日本人は消極的になりがちですが、欧米バイヤーは積極的な質問・確認を歓迎します。
むしろ、確認しないまま工程を進め、後からトラブルになる方が圧倒的に悪印象です。
トラブル報告とリカバリーアクションのスピード感
納期遅延や不良発生時こそ、サプライヤーの“誠実さ”が問われます。
まず、発生した「事実」だけでなく、「背景」「根本要因」「今後の予防策・対処案」まで、データを基に即時連絡します。
問題を隠さず早期に共有し、“正直な姿勢”を見せることで、逆に信頼が増すケースも多々あります。
この“率直なトラブル解決”が積み重なることで、将来の大規模案件や戦略的パートナー認定につながることもあります。
力量(Capabilities)や限界(Limits)を積極的に伝える
自社の得意分野と苦手分野、類似案件の実績数や過去の失敗例まで、「強み・弱み」を具体例付きで提示しましょう。
現実的に、“何ができ/できないか”を開示した上で、双方の技術や人員をどう補い合えるかの提案までできると、より戦略的な信頼も生まれます。
曖昧な返答や「できます」「任せてください」だけの営業トークは、現場経験豊富なバイヤーにはすぐ見抜かれてしまいます。
日本製造業の強みを活かした“誠実さ”のPR戦略
現場主義と継続的改善(カイゼン)力を可視化する
日本企業の強みは、現場の洞察力や改善行動の積み重ねです。
これを“見える化”して海外バイヤーに伝えるためには、具体的な改善事例や安全対策、品質保持に取り組む姿勢、数字で示せる成果といった証拠データと共にプレゼンすることが効果的です。
真面目さだけでは伝わらない、日本流“誠実さ”のアップデート
「日本人は真面目で誠実だ」と評価されることは多いですが、これまでの義理人情型対応や“口に出さない空気感”だけでは、海外バイヤーに正しく伝わりません。
これからは、リーダー層自らが率先して情報開示を徹底し、英語・現地語での積極的なディスカッションや、ドキュメントエビデンスで“誠実さ”を見せることが重要です。
また、現地従業員やパートナー企業に向けた「現場同行」や「継続説明会」の実施が信頼関係づくりに効果的です。
“Win-Win”パートナーシップの構築で共創につなげる
「バイヤー=発注側」「サプライヤー=受注側」という一方通行の力関係から、「課題共有」「知見交換」「一緒に新たな価値を作る」共創型パートナーシップへ軸足を移す動きが、世界的にも拡大しています。
この共創マインドの基礎となるのが、「問題提起や改善アイデアを正直に出し合える誠実な関係性」です。
誠実さを示すことで、より深く、長い取引や新規ビジネス展開の可能性が広がります。
まとめ:製造業の“誠実さ”が、日本企業の未来を切り拓く
グローバル化が進む製造業において、「誠実さ」はもはやサプライヤー・バイヤー双方にとって必須の評価基準になっています。
外から見れば日本企業は「真面目」「丁寧」と評価されることが多いですが、これからは、良いことも悪いこともタイムリーに、ロジックとエビデンスをもって説明・開示できる能力が、日本企業・サプライヤーの新たな競争力となります。
世界に通用する“誠実さ”を身につけ、実践することで、日本製造業のさらなる発展とグローバル競争力強化に寄与できるのではないでしょうか。
今後、海外バイヤーの“誠実さ”評価を見据え、現場の皆様が安心して働ける、信頼あふれるサプライチェーンを一緒に築いていきましょう。
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