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部品統合や標準化の意思決定が遅れコスト改善が進まない課題

目次
はじめに:なぜ部品統合や標準化がコスト改善の鍵なのか
製造現場で長年を過ごしてきた身として、部品統合や標準化の取り組みがいかにコスト構造にインパクトをもたらすか、その現場効果を身をもって体験してきました。
にもかかわらず、多くの日本の製造業では、意思決定の遅れや現場に根付いたアナログ文化が障壁となり、なかなか部品統合・標準化が進みません。
本記事では現場目線で、部品統合・標準化の遅れがもたらす課題と、その背景、そして打開策を分かりやすく考察します。
これからバイヤーを目指す方や、サプライヤーの視点からバイヤーの考え方を読み取りたい方にも役立つ内容をお届けします。
部品統合・標準化がもたらす製造業のメリット
スケールメリットによるコストダウン
部品種類を絞り統合・標準化すると、発注ロットが大きくなり、サプライヤー側でも生産効率向上や在庫削減が可能となります。
これは一品一様の多品種少量生産を続けている現場では享受できない大きなスケールメリットです。
購買単価の低減、サプライチェーンの合理化など、多角的なコスト削減効果が見込めます。
品質安定化とリスク分散
さらに、同じ部品を複数の製品で使いまわすことにより、品質トラブルの要因が減り、不良解析・改善活動も効率的になります。
サプライヤー側も部品ごとの仕様管理が楽になり、納期遅延・誤出荷といった現場トラブルのリスクも抑えられます。
なぜ意思決定が遅れるのか:現場が抱える「昭和の壁」
カスタム志向文化と保身意識
日本の大手製造業では長らく、「A社専用」「うちの○○でしか使わない」独自仕様部品導入が当然視されてきました。
これは営業や開発部門が「お客様毎によりよいものを」と過剰なカスタマイズを推奨し、コスト管理部門(調達・生産)との間に深いミゾが生じていたことも関係しています。
また「自分が担当した部品・仕様が変更されることで責任問題が起きるのでは」という保身的な意識が、標準化判断を後ろ倒しする背景にもなっていました。
部門最適・全体最適のバランス欠如
例えば開発部門が「今売れるものを早く市場に出したい」と独自仕様を優先し、購買部門が「標準化すれば調達コストを下げられる」と訴えても、自部門内の最適だけが優先された結果、全体最適(会社全体の利益向上)に至らないジレンマが起こります。
この部門間サイロは、昭和時代からの組織体質の名残として、未だに多くの現場に根強く残っています。
現場運用の「惰性」
既にある部品構成、調達スキームに大きな問題が露見しない限り、人は変化を避け、現状維持(コンフォートゾーン)にとどまりがちです。
実際に、私が工場長を務めた際も、標準化推進プロジェクトに際し「このままで問題ない」と無関心な反応が多く、変革を起こすには相当な説得や技術的検証、そして経営陣の本気度が不可欠であることを痛感しました。
部品統合・標準化の意思決定を妨げる具体的障壁
仕様要件・顧客要望の多様化
一方で、市場のグローバル化や多様化により、顧客ごと・地域ごとに求められる機能や安全基準が異なるケースも増えています。
このため、開発段階で「標準部品では機能要件が満たせないのでカスタマイズが必要」といった意見が出やすく、統合・標準化の推進と相反する現象が現場で多発しています。
古い設計思想と図面資産の問題
長年続く設計変更により、既存の図面やBOM(部品表)には古い構成、不要となった部品が温存されている場合が珍しくありません。
こうした「レガシー資産」が現場慣習として根付き、「下手に変えると他の不具合が出るのでは」と設計者が標準化に消極的になることもしばしばです。
結果として、設計者の世代交替やノウハウ移転の度に、この負の遺産が引き継がれてしまいます。
サプライヤーとの安易な関係維持
部品ラインアップを減らし、標準化・統合するにはサプライヤー側の協力が不可欠です。
しかし「昔からの付き合いだから」「特定の担当者と密な関係がある」といった理由で、実際には競争原理が働かず、調達部門でもサプライヤー変更に躊躇する場合が多いのが実情です。
意思決定のスピードアップ、現状打破のために
経営と現場が一体となった目標の共有
部品統合・標準化は、企業の競争力を左右する重要テーマです。
この重要性を経営層だけでなく、設計、調達、生産、品質など全現場で再認識し、「標準化によるコスト改善」を全社KPIとして掲げましょう。
目標が現場まで浸透すれば、部門間の押し付け合いや責任回避を防ぎ、意思決定が格段にスムーズになります。
部品開発初期からのクロスファンクショナルチーム体制
新製品の立ち上げ時から、開発・設計だけでなく、調達、生産、品質、営業など各部門担当者が一堂に会する「CFT(クロスファンクショナルチーム)」方式を徹底しましょう。
現場で「どうして標準化が難しいか」を、開発者と調達者がリアルタイムで議論できる場をつくることで、各部門の“言い分”に早期に折り合いがつきます。
その結果、従来より素早く「標準化・統合」と「機能・品質確保」のバランスが図れます。
標準化推進のためのガバナンスツール活用
IT活用も不可欠です。
例えば設計段階からBOMシステムで共通部品利用比率を可視化したり、「標準部品で代替した場合のコストシミュレーション」を自動で算出する機能を導入したりすると、客観的な裏付けのもとで意思決定が加速します。
また、標準化成功事例のデータベース化やナレッジシェアも、人事異動や世代交替時の知見継承に役立ちます。
サプライヤー連携とWin-Winモデルの再構築
部品統合の場合、サプライヤー側も「受注品目が減る=売上減少」の危機感を持つことがよくあります。
このため価格交渉だけでなく、「今後どの部分で成長領域があるのか」「標準化でサプライヤーも利益が上がる座組みは何か」を、一緒に検討する対話が重要です。
サプライヤーとの早期協働で、部品集約・標準化がもたらす副次効果(工数削減、省人化提案など)を共有し、長期的なパートナーシップ構築へつなげましょう。
現場では何から始めるべきか:実践的アクションプラン
まず「見える化」からスタート
自社で現在、どれだけ多くの類似部品やカスタム仕様部品が使われているか、リストアップしましょう。
材料費・調達工数の多い順に部品統合・標準化の影響度(パレート分析)をつけ、「どこから手を付けるべきか」を明確にします。
スモールスタートで成功体験を積む
最初から全製品を対象にせず、特定ラインや特定機種だけでトライアルを行いましょう。
現場の抵抗が強い場合でも、「この製品で大きくコスト低減できた」「新規部品導入のレスポンスタイムが縮んだ」など、成功体験の積み重ねが現場意識の変革へ繋がります。
日々の業務で「なぜ今、この部品か?」を問う
調達部門や現場担当は、案件ごとに「設計部品の指定が妥当か」「標準仕様・共通部品に活路がないか」を、都度突き詰めて考えましょう。
その小さな積み重ねが、全体の標準化率を着実に上げる土壌となります。
まとめ:部品統合・標準化に終わりはないが、今すぐ始めよう
製造現場は今、世界的なサプライチェーン分断や人手不足、急速なデジタル化の波に直面しています。
コスト競争力を高め、より良い価値を提供し続けるためにも、部品統合・標準化の取り組みは一刻の猶予もありません。
意思決定の遅れや惰性から抜け出し、経営・現場・サプライヤーが一丸となって価値創造に踏み出しましょう。
私たちの現場の知見や熱意が、日本の製造業の新たな地平線を切り拓く原動力となるはずです。
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