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社内承認が遅くサプライヤー納期が守れない悪循環

目次
はじめに:現場でよくある「社内承認の遅れによる納期遅延」問題
製造業の現場では、日々多くの部材や原材料がサプライヤーから納入されています。
その裏側には、無数の見積り・注文書・契約書などの承認プロセスが存在します。
しかし、現状多くの日本の製造業では「社内承認がなかなか下りずに、サプライヤーへ発注が遅れてしまい、納期を守れない」といった問題が根強く残っています。
この悪循環は、調達・購買担当者もサプライヤー側も共通して抱える悩みです。
なぜこのような事態が起きるのか、どのように打開していけるのか、現場目線も交えて解説していきます。
昭和型のアナログ業務が招く「遅い社内承認」
未だに残る紙文化とハンコの壁
現代では様々なデジタルツールが登場していますが、製造業の現場を見ると「見積書・注文書・稟議書を紙で印刷」「上司の机を渡り歩くハンコリレー」という昭和型アナログ業務が色濃く残っている企業は珍しくありません。
特に多拠点展開している大手企業ほど、上長のサインをもらうために紙書類を本社や他工場へ送付する場面が目立ちます。
そのため、調達現場がどれだけスピード対応しても、社内の承認プロセスの遅さが全体のリードタイムを押し下げてしまうのです。
「責任の所在」の曖昧さと二重・三重の承認
もうひとつ、製造業に独特の文化として「ミスを防ぐ」「責任の所在を明確にする」ために、
部長、課長、工場長、場合によっては役員まで、承認プロセスが多段階に分かれているケースが目立ちます。
特に高額商材や新規サプライヤーの場合は承認フローが増え、1つの発注に数日〜数週間を要します。
こうした構造こそが、現場のスピード感と経営層の安心感の間に深い溝を作っています。
サプライヤー納期遅延という「悪循環」が生まれる背景
発注遅延が工場オペレーションに与える影響
社内承認が間に合わないことで、
「適正リードタイムを守れない」
「部品が届かず、急遽生産計画の変更」
「工程の手待ちやライン停止」
といった実害が現場で頻発します。
納期を守りたくても間に合わず、サプライヤーにとっては突発的な短納期発注や、無理な発注要求が降りかかる形になり、結果的に品質リスクやコスト増にもつながります。
サプライヤー側から見た調達・購買担当への信頼度
サプライヤーの立場からは、「なぜ毎回ギリギリまで発注が来ないのか」「余裕を持って依頼してくれれば生産準備も万全にできたのに」といったフラストレーションが溜まります。
その結果、A社よりももっと発注段取りが良いB社へリソースを優先したい、という心理的傾向にも拍車がかかります。
この「納期が守れない→サプライヤーから信頼を失う→ますます良い対応が得られなくなる」というのが典型的な悪循環です。
業界動向とDXの進展:なぜ変われないのか
デジタル化の波と日本的慣習のジレンマ
昨今は、調達購買も含めた間接業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)が叫ばれています。
クラウド型のワークフローシステムや電子稟議、サプライヤーとの電子発注EDIなど、テクノロジーは十分に用意されています。
しかし一方で、「上司がパソコンに慣れていない」「紙の方が安心だから」「電子承認に法的効力があるか不安」といった日本特有の現場抵抗感が依然として根強いです。
このため導入が後手になった結果、社内承認の遅延問題は昭和から続く“構造的課題”となっています。
アナログ文化がもたらした「調達バイヤー」の苦労
承認プロセスの煩雑さは、実は調達バイヤー自身のSTRESSに直結します。
早くサプライヤーに発注したいのに、社内根回しや稟議の進捗確認で1日の大半が消える。
承認プロセスがブラックボックス化し、「今、誰のところで書類が止まっているのか分からない」という状況もしばしば発生します。
バイヤーとしてステップアップしたい人間にとっても、発注管理の仕組みがレガシーなままでは、付加価値ある業務(コスト削減、サプライヤー開拓、サステナビリティ対応など)に本腰を入れられません。
社内承認のスピードアップ・抜け道を探る実践的アプローチ
「見える化」と「プロセス自動化」でボトルネックを特定する
まず必要なのは、自社の承認ルートを徹底的に可視化することです。
紙とメール、口頭依頼が入り乱れる現場では「どこで、どのくらい、停止しているのか」が把握できていません。
承認件数や所要日数、遅れが発生した部署の実績を見える化し、ボトルネックを数値で示すことで、初めて経営レベルの真剣な議論につなげることが可能になります。
さらに、ルーティン業務は積極的にワークフロー自動化・RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を活用しましょう。
これにより仕組み自体から待ち時間を削ぎ落とせます。
リードタイム逆算思考で“いつまでに”“誰が”を強制定義する
サプライヤーへのリードタイムを精緻に分解し、「社内承認に何日かかっているのか」「本当に全承認が必要か」をゼロベースで見直してみて下さい。
現場でありがちなのは、誰もが「なんとなく」「習慣だから」承認している状態です。
リードタイム逆算思考を徹底し、見積り入手から発注までの工程をショートカットすることで、「これなら納期に間に合う」という判断基準が明確になります。
稟議簡素化・分権化による“現場判断”の推進
あまりにも承認階層が多いなら、金額やリスクによって分権化を進めるべきです。
たとえば「〇万円以下かつ継続購入品は現場長承認だけでOK」「緊急対応の場合は起案者と次長で決裁」など、裁量を広げる運用も考えられます。
これにより「サプライヤーに素早く実供給を依頼→現場の手配も機動的に行う」という好循環を作り出せます。
サプライヤーとの関係性を見直し“納期遅延ゼロ”文化をつくる
Win-Winなパートナーシップ構築に向けて
サプライヤーはただの外注先ではありません。
「早期発注なら仕入コストも下げやすくなる」
「情報共有ができるほど、工程の変化や市場リスクへの対応もスムーズ」
という長所があります。
発注先に無理を強いる一方通行型の関係に陥らないよう、短納期発注による負担や、急な仕様変更を極力減らし、お互いの信頼関係を深める努力が必要です。
「社外」ではなく「社内」との信頼構築も欠かせない
実は調達バイヤーとして評価されやすいのは、「サプライヤーとの社外交渉力」だけではありません。
購買部門と設計・生産部門、現場と本社をつなぎ、「この人がいるなら大丈夫」と思われる社内調整力も極めて重要です。
社内承認の遅れでサプライヤーに迷惑をかけるようだと、「あのバイヤーは現場に配慮しない」といった悪いレッテルを貼られかねません。
だからこそ、現場と経営層の懸け橋に自分がなる意識を持ちましょう。
まとめ:昭和型アナログから脱却し、調達購買の新しい地平線へ
製造業における「社内承認が遅く、サプライヤー納期が守れない」問題は、一朝一夕で解決できるものではありません。
背景には日本の製造業が誇る品質主義や責任回避文化、そしてアナログ業務の根強さがあります。
しかし、デジタル化・見える化・プロセス自動化に積極的に向きあい、現場主導の発想で運用ルールを変えることで、少しずつ悪循環から好循環へと舵を切る事が可能です。
発注を素早く、正確に。
信頼できるサプライヤーと、対等なパートナーシップを。
時代遅れの業務フローから一歩抜け出し、調達購買のプロとして新しい価値創造を担うバイヤーへ。
この記事が、その第一歩のヒントとなれば幸いです。
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