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物流システム更新が遅れ“現場だけがExcel”に頼る構造

目次
物流システム更新の遅れがもたらす「現場Excel依存」現象とは
生産現場や工場管理の現場で、物流システムの更新に遅れが出ることで「とりあえずExcelで管理しよう」という姿勢が根強く残っています。
令和の時代になっても、バイヤーや生産管理担当者、そしてサプライヤーの現場責任者から「うちの現場、まだExcelなんですよ」とため息がもれる話は後を絶ちません。
この現場目線の“Excel依存”がどうして今なお続いているのか、そしてそれが製造業の成長に何をもたらしているのかを現場経験から深く掘り下げてみます。
なぜ製造業現場で「Excel管理」から脱却できないのか
システム投資決定のハードルと現場の温度差
多くの工場や物流センターでは、業務の根幹を支える基幹システム(ERP)やWMS(Warehouse Management System)が導入されています。
しかし、現場実務の隅々までシステム化が浸透しきれず、結局「現場だけExcel」に頼る状況が残りがちです。
その最大の要因は、システム導入や刷新の意思決定を行う管理者と、実際に作業を運用している現場スタッフとの間の深い認識ギャップにあります。
システム投資のコストや運用リスクばかりが重視され、現場の“使いやすさ”や“柔軟性”への配慮は二の次になりがちです。
「現場では毎週毎日、突発の変更対応が求められる。だからこそ簡単に編集できるExcelが無難」という判断が積み重なっています。
昭和時代から継承されてきた業務プロセスの固定化
加えて、昭和の終わりごろから続いている「これまでの業務のやり方」を変えられないという業界特有の文化も見逃せません。
長く続いてきた生産管理表や品目管理台帳、作業進捗表のスタイルが暗黙知化しているため、システム側を無理に新方式に変えるよりも“Excelで自分なりにカスタマイズ”する方が現場としては話が早いのです。
外部サプライヤーや協力会社との連携障壁
さらに、部品メーカーや仕入先といった外部パートナーを多く抱える製造業界にとって、取引先毎にシステムレベルが違いすぎる、データ形式がまちまちであるという問題も根深くあります。
近年ではEDI(電子データ交換)が普及しているものの、「Excel添付メール」や「FAX」の世界もしぶとく残っています。
そのため、現場担当のバイヤーや調達部門としては、結局“どんなシステムでも最終的にはExcelに転記して管理”という手段を選んでしまう実態があります。
「Excel任せ」に潜むリスクと品質低下の危険
ヒューマンエラーと属人化の問題
Excel管理の最大のリスクは、ミスが可視化しづらく再発を繰り返しやすいことです。
「昨日の在庫数を間違えて入力してしまった」「納期調整の伝達漏れがあった」など、些細なミスが製造ラインのストップや余剰在庫の発生につながります。
属人的なファイル管理も問題で、担当者が休んだり退職したりするとあっという間にブラックボックス化してしまいます。
進まぬ業務標準化と“暗黙知”の蔓延
さらに、Excel依存の業務はプロセス標準化の妨げになります。
教育や引き継ぎのたびに、現場担当の「俺流Excelマクロ」が課題になり、会社全体としてのパフォーマンス向上が実現しません。
これではDX(デジタルトランスフォーメーション)が進まず、業界としてのイノベーション速度も鈍化してしまいます。
セキュリティリスクと監査対応の不備
近年、取引先や顧客からの監査項目でも「データ管理のセキュリティ・トレーサビリティは万全か」が問われるようになってきました。
メール添付のExcelや、USBで持ち運ばれるファイルは、誤送信や紛失による情報漏洩リスクが高く、コンプライアンス上見過ごせません。
また、“いつ誰がどんな操作をしたか”の履歴が取れず、問題発生時の原因追跡が到底追いつきません。
現場を変える「システム刷新」の成功に必要な視点
バイヤーとサプライヤーそれぞれの現実的なニーズ把握
物流システム更新でありがちな失敗例は、“上流設計に現場の声が届かなかった”ケースです。
実際、私が現場責任者としてシステム導入に携わった際も、バイヤーやサプライヤーの業務フローを細かくヒアリングしなければ、最適な構築は不可能でした。
カタログスペックやベンダーの提案だけに頼るのではなく、日々の改善提案や現場の“痒いところに手が届く”機能を共創していく姿勢が必要です。
小さな更新・短サイクルでのPDCA実践
DX推進のカギは「一気に全てをシステム化しよう」としないことです。
いきなり全工程を自動化・デジタル化すると、運用コストや現場心理的負担が跳ね上がります。
月単位・工程単位で“小さな成功事例”をつくりながら短いサイクルで見直し、現場スタッフの納得感を高めるアプローチが現実的です。
現場“Excel革命”活用のススメ
完全なシステム化が理想とはいえ、ExcelやAccessなどの既存ツールも条件付きで活用する価値があります。
マクロやVBA、自動化ツール(RPA)を活用し「ヒューマンエラーが発生しない」「データ同期や履歴管理ができる」Excelファイルを開発すれば、現場の納得と業務の効率化を両立できます。
特に予算的・人員的制約が大きい中小規模の現場では、高価なパッケージ導入以前の“現実解”として有効です。
デジタル推進の先に生まれる新しい競争優位性
現場改善から経営判断までシームレスな情報連携
システム更新と業務プロセスのデジタル化が進むと、受発注や在庫、進捗状況がリアルタイムに可視化できるようになります。
現場のイレギュラー対応もしやすくなり、属人的な判断が減ることでミスや残業が減少。
また、蓄積したデータを活用した経営判断のスピード・精度も向上し、「攻めの調達・生産体制」へとシフトできます。
取引先・バイヤーとサプライヤーの関係性変革
バイヤーは、“在庫の見える化”や“進捗の共有”がシステムを通じて実現すれば、より戦略的な購買活動が可能になり、サプライヤーは「納期遅れ・誤出荷」などのリスクを未然に察知できます。
これによって取引先・協力会社同士の信頼関係が深まり、新たなビジネスチャンスや長期的なパートナーシップにつながります。
現場こそ、未来のビジネスを変える起点
物流システム更新の遅れがもたらす「現場だけがExcel」依存の構造は、単なるITの問題ではありません。
現場の業務プロセスや暗黙知、昭和型の体質改革、そしてバイヤーとサプライヤーの連携の在り方といった、多様な課題が絡み合っています。
しかし、現場での気づきと改善提案こそが、会社全体を大きく動かす起爆剤になります。
属人的なExcel文化の先にこそ、製造業の“次世代の強さ”が生まれるのです。
今こそ、バイヤー・サプライヤー問わず、すべての現場関係者が垣根を越えて“現実的なデジタル化”“現場主導の業務改革”に挑んでみてはいかがでしょうか。
この現場目線の気づきと実践こそが、日本の製造業のレガシーをアップデートし、令和以降も世界に誇る競争優位性につながるのです。