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OEM工場との関係値を高める“情報開示の深さ”

目次
はじめに:なぜOEM工場との関係性が重要か
製造業の現場で20年以上働いてきた経験から痛感するのは、バイヤーとサプライヤー、特にOEM工場との“関係値”が、ものづくりのクオリティや安定供給、コストメリットを大きく左右するという現実です。
取引先を数値だけで選び、ドライな調整だけで進めていく手法も一理ありますが、製造業は人と人、現場と現場を繋ぐ“温度感”がまだまだ根強く残るアナログな世界です。
この業界でバイヤーや購買担当が活躍したい、あるいはサプライヤー側として信頼される存在になりたいと考えるのであれば、OEM工場との「情報開示の深さ」を意識し、関係値を高めていくことが欠かせません。
本記事ではその本質について、現場目線での実例や、過去の事例を交えながらラテラルシンキング(水平思考)を活用し、OEM工場との連携を一段進化させる“情報開示の深さ”について掘り下げていきます。
OEM工場との情報開示で失敗しがちな3つのパターン
OEM工場との情報開示と聞くと、「どこまで開示して良いの?」、「本音はどこまで伝えるべき?」、そんな疑問を持つ方も多いでしょう。
しかし現場では、情報開示の不足もしくは偏った開示によって、さまざまなトラブルが発生しています。失敗例を3つ紹介します。
納期遅延の本当の原因が見えなかったケース
バイヤー側が「とにかく急いでほしい」とだけ伝え、OEM工場がなぜ納期が遅れるのか深掘りしなかった結果、サプライチェーン全体の混乱を招いた事例は枚挙にいとまがありません。
トラブルの本質は「設備トラブル」ではなく、「部品調達のボトルネック」という根本原因でした。しかしこれを工場が正直に話していなかったため、バイヤーも適切な対処が取れませんでした。
コストダウン交渉で信頼を損なったケース
「他社ではもっと安い」「コストダウンを早急に」と一方的なプレッシャーをかけた結果、OEM工場側は内情を正直に話せなくなり、品質低下やダンピング提案といったリスクだけが残る場合があります。
両者とも歩み寄りができなければ、付加価値のある提案や、中長期最適化が実現しません。
「現場の暗黙知」が共有されず品質問題が噴出
品質要求や仕様についても、「数値化・データ化できる情報」だけをやり取りして安心してしまい、現場が実は“感覚的”に積み上げてきたノウハウ=暗黙知が共有できていないことが多々あります。
このギャップが工程抜けや品質クレームの遠因となるのです。
昭和から続くアナログな現場文化と「信頼」の本質
デジタル化やAI活用が進む昨今ですが、製造業現場はいまだに「人と人・現場と現場」の関係性に大きく寄りかかっています。
昭和世代の職人文化とも言える“つるしの図面”や、“阿吽の呼吸”といったアナログな共有ノウハウも、決して時代遅れではありません。
日本の多くの中小型OEM工場で今も強く根付いているのは、「うちと長く付き合ってくれるお客様は、困った時こそ本音で話してくれる」、「利益だけの付き合いではなく、ともに成長できるパートナー関係を築いていきたい」という実直な価値観です。
この“信頼の本質”を無視して効率一辺倒で進めると、トラブル時の真の情報が上がってこなくなり、結果的に自社のサプライチェーンが脆弱化してしまいます。
関係値を高める“情報開示の深さ”の5つのポイント
ここからは現場実践で有効だった“情報開示の深さ”を高めるポイントを5つ紹介します。
1. 目先の取引条件だけでなく「背景目的」を開示する
例えば新製品開発や大口案件獲得のための製造依頼など、単に「安く・早く・多く」という条件面だけでなく、その案件がどんな戦略意義を持っているか、会社全体で何を目指しているのかといった背景も伝えるようにしましょう。
OEM工場側は、その背景を理解することで安直な値下げや短納期対応ではなく、納得感を持って自社技術やアイデアを全力投球できます。
2. 工場現場に“きちんと足を運び”、作業工程を自分の目で見る
数字や進捗表だけでなく、自ら現地に足を運んで工程を観察し、製造現場の考えや悩みを直接ヒアリングする。これが「口先だけの関係」から「腹を割った協力関係」へ進化する重要なアクションです。
現場との雑談や些細な会話のなかにも重要な“情報”が含まれているものです。
3. 工場側の「不都合な真実」も一緒に考える
納期遅れ、材料ロス、技術未熟、コスト圧縮の限界…。工場側がなかなか言い出せないネガティブ情報も、真剣に耳を傾けましょう。
「話してもどうせ咎められるだけ」と思われる関係性ではなく、「一緒に解決策を考えてくれる」と実感してもらうことで、現場は真実をより早い段階で共有しやすくなります。
4. 成果を分かち合う仕組みを明言化する
コストダウンして工場側は赤字、バイヤー側は一人勝ち、では関係は長続きしません。
例えば、「一定の原価低減が達成できたら、その一部を特別ボーナスとして還元する」、「品質向上提案が実現したら取引量アップを約束する」と明確に宣言することが重要です。
現場からの自発的な改善提案や積極参加が生まれやすくなります。
5. SLA(サービスレベル契約)を活用し「賢い見える化」を進める
近年は、口約束や感覚重視から一歩進んだ、SLA(Service Level Agreement:サービスレベル合意契約)を取り入れて、“何をどこまでやるか”を双方がすり合わせる企業も増えています。
ただし、「お役所的なチェックリスト管理」になってしまうと逆効果です。
KPIや評価指標は大まかに定めつつも、現場と現場の“生きた情報”がリアルタイムで相互共有できる環境構築が大切です。
例えば、クラウド日報やカメラによる工程モニタリング、チャットツールでの逐一簡易報告など、テクノロジーの“現場目線”活用も今後は重要となります。
OEM工場が「あなたと仕事したい」と思うバイヤー像
現場で本当に信頼されるバイヤーとはどういう人物でしょうか。
ただ安値を引き出すことや上から指示する存在ではなく、次の特長を備えている人です。
対話の時間を惜しまない
コスト交渉の場だけでなく、雑談や情報交換の場を定期的に持ち“雑音も含めて”情報交換をする。
特に新たな仕様変更や調達難の局面では、電話やオンラインだけに頼らず生身の対話に時間を割くことが必須です。
一緒に現場で汗をかける
図面やスペックに“書ききれないリアル”を一緒に見て、困難も分かち合う。
小さな困りごとにも気配りを見せられるか—これが現場で「この人は本音が言える」と評価される鍵です。
“四方良し”の着地点を探れる
自社だけでなく工場や最終顧客にもメリットがある「四方良し」を目指し、情報・課題・成果をオープンにしたうえで、Win-Win-Win関係を目指せる人は必ず重宝されます。
これからの時代、OEM工場とのパートナーシップは“競争力”そのもの
少子高齢化、人手不足、原材料高騰、世界的なサプライチェーンの混乱…。厳しい時代を勝ち抜いていくためには、OEM工場との本気のパートナーシップ構築が不可欠です。
特に日本の多くの中小型OEM工場は、データだけで評価できない匠の技術とフレキシビリティを持っています。
表面的な仕様書やコストだけに頼らず、現場の知恵と“深い情報開示”をベースとした対話に力を入れていくことで、「他社には真似できない競争力」を育み続けていきましょう。
まとめ:バイヤーの腕は“聞き出す力”と“開示する勇気”で決まる
製造業にとってOEM工場とは単なるコストセンターや外注先ではありません。
“情報開示の深さ”をどこまで追求できるかで、あなたの仕事の付加価値も、サプライチェーン全体の未来も変わります。
ぜひ日々の調達や交渉のなかで、「この話は現場にも共有しよう」「この課題は一緒に考えよう」と、一歩踏み込んだ関係づくり=深い情報開示を心がけてください。
その継続こそが、「昭和の現場文化」と「最新テクノロジー」のどちらの良さも活かした、“オンリーワン”の企業体質をつくる礎となるのです。
今こそOEM工場との“情報開示の深さ”を高め、もっと強いものづくりジャパンを共に目指しましょう。
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