投稿日:2025年9月6日

ペット用おもちゃOEMで差別化を図るデザインと素材の工夫

はじめに:ペット用おもちゃOEM市場の現状と課題

ペット市場は年々拡大を続けており、特にペット用おもちゃの需要が非常に高まっています。

この流れに乗って自社ブランドのペット用おもちゃを展開したい、あるいは既存製品との差別化を狙いたいと考える企業が増えています。

しかし現実には、どの企業も似たような商品を並べてしまい、価格競争に陥るOEM案件が後を絶ちません。

現場を知る立場から言えば、「作れるもの」だけを並べても顧客には響かず、差別化・ブランド力の向上は望めません。

本記事では、OEM製品で差別化を図るためのデザイン面と素材面の工夫を、実際の工場運営や品質管理・バイヤー視点・サプライヤー視点も交えて深掘りします。

製造業の「昭和的」アナログ慣習と現代ニーズの間にあるギャップも明確化し、現場目線から実践的なヒントを共有したいと思います。

ペット用おもちゃOEMの基本構造を理解する

OEMとは何か?基礎知識の整理

OEM(Original Equipment Manufacturer)とは、発注元のブランドによる企画や販売戦略に合わせ、サプライヤーが製造を担うビジネスモデルです。

ペット用おもちゃ業界でも広く採用され、多くの大手ペットショップや雑貨チェーンブランドがOEMで製品を展開しています。

特徴は発注元が商品デザインや仕様を決め、サプライヤーがその設計に沿って製作する点です。

しかし現場では、ふんわりとした仕様しか示されず、サプライヤー任せになってしまう案件も多く見受けられます。

これが「ありふれたOEM商品」が市場に溢れる背景です。

製造現場の抱える課題

現場視点で課題を挙げると、以下のような点が挙げられます。

・コスト重視の安易な素材選定が多い
・安全性基準・認証の確認漏れが散見される
・デザイン変更の工数や現場負担への配慮が不足
・バイヤーが現場エンジニアリングを軽視する風潮

これらはアナログな製造業界特有の「前例踏襲文化」が根強く残るため、なかなか革新が進みません。

差別化のためには、このような課題を根本から見直す姿勢が不可欠です。

OEMおもちゃの差別化ポイント:デザインの工夫

ターゲット顧客の「本音」を汲み取る

ペット用おもちゃは「ペットのための商品」と思いがちですが、購入決定者はあくまで飼い主です。

飼い主ごとのニーズや価値観に根差したデザイン戦略が重要となります。

例えば、以下のような要素をリサーチすることが効果的です。

・「映え」を意識したSNS拡散しやすいデザイン
・インテリアへのなじみやすさ(家の雰囲気を壊さない色味や形状)
・知育要素や多機能性(ペットの知的好奇心や学習効果への配慮)

このような視点に立ち返り、企画段階から意識してプロジェクトを進めましょう。

昭和型OEMの限界と「体験価値重視」へのシフト

従来型のOEMでは、量産のしやすさや既存金型の再利用が優先され、「何となく売れそう」なデザインで妥協しがちです。

しかし、近年は体験価値(エクスペリエンス)を重視した商品設計がトレンドです。

例えば、「愛犬と飼い主が一緒に遊べるインタラクティブ玩具」や、「ペットの知育や運動不足解消にコミットしたギミック玩具」などが挙げられます。

小ロット対応や3Dプリント、プロトタイピングの導入も視野に入れることで、試作・改良のサイクルを高速化し、オリジナリティを磨くことが可能です。

量産現場で実現できるデザイン工夫のポイント

ただし現場サイドとしては、コスト、歩留まり、設備負荷への配慮も不可欠です。

例えば量産型樹脂成形品の場合、

・着色剤の調整でバリエーションを持たせる
・「顔のある」モチーフやストーリー性のあるデザインを意識する
・パッケージデザインを工夫し付加価値を与える

といった工夫で現場負担と差別化のバランスを図ることができます。

デザイン専門職と現場エンジニアの密な連携が、良品への近道です。

素材選びで勝つ:安全性・機能性・エコロジーを追求

「安価な素材が正義」からの脱却

OEMの世界では、ついローコスト素材ばかりを選びがちです。

しかし、ペット用おもちゃは「噛む、舐める、引っぱる」などの厳しい使用環境下に置かれます。

また、万が一口にした場合の安全性も問われます。

一時的なコスト優先では、すぐにユーザー離れやクレームにつながりかねません。

製品企画段階から安全基準や各種試験(ST基準、米国(ASTM F963)や欧州(EN71)規格など)の確認を行いましょう。

選ばれる素材の特徴とは

今、ペット業界で注目されている素材の例を挙げます。

・食品グレードのシリコーン
・環境配慮型エラストマー(TPR, TPE)
・天然素材(オーガニックコットン、ヘチマ、カンナ竹繊維等)
・リサイクル樹脂・バイオマスプラスチック

こうした素材を効果的に組み合わせることで、差別化は一段と明確になります。

現場で課題になりやすい「成形性」「耐久性」もあわせて評価を行い、バイヤーは量産試作段階での確認プロセスを省略しないことが肝要です。

「命を守る」品質管理とリスクアセスメント

素材や部材の選定には、サプライヤーとしての「命を守る責任」が伴います。

食品用容器や玩具と同程度の安全性検査を課し、品質管理担当者によるロット毎の抜取検査、リスクシナリオ分析も徹底しましょう。

昭和的な「現場の勘」に頼る時代から、データに基づく品質保証体制への転換が、OEM発注先選定においても重視されつつあります。

バイヤー視点とサプライヤー視点:双方が「共創」する価値

バイヤー(発注者)は何を考えているか

多くの発注者は、「コスト」「納期」「既製品との差別化」に悩んでいます。

さらに近年は従来以上に「安全性」「コンプライアンス」「サステナビリティ」などの社会的責任も問われるようになりました。

このため、ただ安価に作るだけでなく、上記条件をハイレベルで満たすパートナーを求めています。

モノづくり現場への遠慮から、現実的な要望を伝えきれていないケースも多いのが実情です。

サプライヤー群雄割拠時代に生き残る心得

一方、サプライヤーが差別化できず「言われた通りにしか作れない」という受け身姿勢では、悪い意味での「昭和型下請け」から脱せません。

逆に現場から積極的に「こんな新素材・新工法があります」「御社のブランドイメージにあわせた工夫案を提案します」と働きかけることで、より密な価値共創が可能です。

OEM案件は「受け身」でなく「共創」の意識が鍵です。

発注者と供給者という立場の垣根を越え、ウィンウィンのパートナーシップを築きましょう。

デジタル化と業界トレンド:「昭和からの脱却」とその実践

DX(デジタルトランスフォーメーション)の波

業界全体に共通する課題として、依然として紙台帳や電話・FAXに依存するアナログ業務が根強く残っています。

見積もりから図面やデザインデータの共有、ロット管理、品質基準など、デジタル管理への移行は避けて通れません。

3Dデータやクラウド設計書の共通化、品質データベースの整備、IoTを用いた生産トレーサビリティなど、現場を熟知した管理職だからこそ現場目線で推進できる要素があります。

SDGs、サーキュラーエコノミーへの対応

ペット業界も持続可能性や環境配慮が問われる時代です。

エコ素材採用、使い捨て抑制設計、リサイクル可能パッケージの開発など、OEMでも企業価値を上げる工夫が必要です。

そうしたSDGs経営に貢献する提案ができるかどうかが、バイヤーにとって大きな評価ポイントとなります。

まとめ:ペット用おもちゃOEMで競合に打ち勝つために

ペット用おもちゃOEMで差別化を図るには、デザインや素材の工夫はもちろん、企画・製造・品質管理・サステナビリティにわたる総合力が必要です。

さらに、バイヤー視点・サプライヤー視点を「共創」へと高めることが競争優位のカギとなります。

現場目線で実行できる施策を積み重ねることが、自ずと「昭和から抜け出し、令和時代に愛される商品」を生み出す第一歩です。

製造業界に携わる皆様が、本記事をヒントに日本のモノづくりの知見を次世代につなぎ、グローバル市場でも誇れるプロダクトを生み出していくことを願っています。

You cannot copy content of this page