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電子機器の安全性と信頼性を確保するための設計と未然防止策の技術ノウハウ

目次
はじめに:電子機器の「安全性」と「信頼性」の重要性
製造業に携わる方、また調達や品質管理など現場の第一線にいる方にとって、電子機器の「安全性」や「信頼性」は避けて通れないテーマです。
製品の差別化や市場での競争力を左右するだけでなく、最悪の場合はリコールや損害賠償という経営リスクにも直結します。
一方で、昭和時代から根強く残る現場の慣習や、手作業に頼るアナログな工程もいまだ多いのが現状です。
この記事では、現場目線かつ実践的なノウハウをもとに、「設計段階からできる未然防止策」と「技術的な信頼性向上策」に迫ります。
調達購買、生産管理、品質管理、それぞれの観点も織り交ぜながら、バイヤーやサプライヤー双方に役立つ新たな視点をご提案します。
安全性と信頼性を高める「設計思想」とは何か
設計段階で80%が決まる:フロントローディングの本質
現場で多く聞くのが「設計時点で不具合の8割が決まる」という言葉です。
これは決して大げさな話ではありません。
電子機器の場合、回路設計、部品選定、筐体配置、放熱設計、絶縁処理の良し悪しが、後工程での品質・信頼性・コストを決定づけます。
設計段階でどれだけリスクを先読みできるか。
失敗事例や市場クレームの「なぜ?」に徹底的に向き合い、工程FMEAやFTAの徹底により潜在リスクを洗い出すことが「未然防止」の鍵と言えます。
業界に根付く「設計と現場の分断」問題
一方で、実際の現場では設計部門と生産現場の距離が遠いケースがまだまだ多いです。
設計者の知恵や意図が現場まで伝わらず、「図面通りになっていればOK」という風土が根強く残ることもしばしばです。
この分断を埋めるには、現場の視点に立った「設計レビュー」「モックアップレビュー」「サンプル評価」をしっかり反復すること。
また、不良品や事故発生時には設計段階まで遡り、「なぜこの設計に至ったのか」「見落としたリスクは何か」を設計部・生産部・品質部で徹底討議することが不可欠です。
安全トラブルを未然に防ぐための技術ノウハウ
ポイント1:リスクアセスメントの徹底
電子機器の設計では、まず法令・規格(PSE、UL、CEなど)で求められる安全基準を満たすのが大前提です。
しかし実際は、規格適合だけで油断して現場事故を招く例も少なくありません。
そこで重要になるのが「自社独自のリスクアセスメント」です。
「どんな状況でも製品が壊れる・発火する・ショートすることはないか?」「ユーザーの想定外の使い方が考えられないか?」を具体的な事例やヒヤリハットデータと突き合わせて洗い出します。
現場で有効なツールとしては「HAZOP」、「FTA(Fault Tree Analysis)」、「FMEA(Failure Mode and Effects Analysis)」などがあります。
これらを使い倒し、リスクの棚卸しを小ロット単位で実施する、という地道さが差別化のポイントです。
ポイント2:共振・ノイズ・静電気への現場対策
電子機器の長寿命化や安全性確保で見逃されがちなテーマが「共振」「ノイズ」「静電気(ESD)」への対策です。
例えば高密度実装による発熱、過電流時のプリントパターン焼損、安易なGND設計による漏洩電流、瞬断…。
これらは往々にして試作では見抜けず、量産現場で「たまに出る不良」として表面化します。
対策例としては
– 絶縁距離の物理チェック
– コネクタ・端子部分のEMIノイズシールド強化
– 静電気放電(ESD)試験を設計段階・工程通過ごとに繰り返し実施
– 熱設計(ヒートシンク、エアフロー設計、サーモスタット活用)の徹底
などが挙げられます。
また、現場にありがちな「試作部品でOK=量産部品もOK」という思い込みも要注意。
サプライヤー変更やロット違い、微細な外観・寸法差が大きなリスクになるため、継続的な部材評価・再現試験が不可欠です。
ポイント3:未然防止のための「見える化」
アナログが根付く現場ほど、「経験と勘」の個人技に頼りがちになります。
しかし、これでは属人化・伝承断絶につながります。
未然防止のカギは、工程ごとのチェックポイント、異常兆候データ、ヒヤリハット情報を「見える化」し、過去の失敗とノウハウを「共通財産」として社内データベース化することです。
例えば
– 不具合発生時は「なぜ?」を最低5回掘り下げる(トヨタ式5Why分析)
– ヒヤリハット・クレーム情報を誰でも参照できる形で社内公開
– 製造条件(温度、湿度、トルク、電圧など)をIoT化して常時モニター
など、技術と現場の融合による「暗黙知の形式知化」がイノベーションにも直結します。
バイヤーが知っておくべき信頼性評価の勘所
品質評価は「帳票」ではなく「再現性」を重視すべき
バイヤー(調達購買担当者)はどうしてもコスト・納期・スペックに目が行きがちですが、トラブル品をいくら帳票で保証されても現場は救えません。
本当に信頼できるサプライヤーかどうかを見極めるには
– 加速試験や長期信頼性の過去データ
– 品質異常(PPM、クレーム件数)の推移と改善活動の中身
– 現場での出荷検査・製造工程の見学
など、単なる帳票依存ではなく「再現性」「未然防止活動のレベル」を自分の目と足で確認する姿勢が大切です。
サプライヤー視点で考える:バイヤーは「何を見ている」のか
サプライヤー側に求められるのは「バイヤーが値段以外で重視しているもの=製品の『再現性』と『未然防止力』」だと気づくことです。
例えば
– クレーム対応時のレスポンスと情報開示姿勢
– 工程移管や設備更新時の影響評価の有無
– 第二サプライヤー体制の有無
などがバイヤーの評価ポイントです。
裏を返せば、こうした体制づくり・説明力があれば、価格競争に巻き込まれずに「付き合いたい相手」になれるのです。
品質クレームから「未然防止」の文化を根付かせる
品質事故の真因追究と改善のコツ
品質クレーム・リコールから学べることは極めて大きいです。
大切なのは「誰の責任か?」という犯人捜しではなく、「なぜ発生したのか?」「どうすれば再発防止できるのか?」という真因追及と、本質的な改善にあります。
「設計→調達→組立→検査→出荷」までサプライチェーン全体で「どうつなげていくか」が現代の課題です。
現場で有効なのは
– クロスファンクショナルチーム(CFT)で部門横断の原因分析
– 市場不良品を用いた実物解析による「五感での気づき」
– 類似部品・類似工程への水平展開
という地道な活動となります。
特に中小メーカーやサプライヤーの場合、「人的ネットワーク」「協働姿勢」「日常の小さな変化への敏感さ」が差を生みます。
自動化・デジタル技術と「アナログ現場」活性化のヒント
電子機器の信頼性向上は新しいデジタル技術なしには進みません。
一方、「昭和のアナログ現場」が今も強靭な現場力を維持することも事実です。
鍵となるのは
– IoTセンサー・AI診断による異常予兆検知
– 生産設備の自動データロギングによる「見える化」
– タブレット・スマホ活用による現場の情報共有
を戦略的に導入することです。
しかし、重要なのは「技術を現場に押し付けず、現場の声と知恵を主役にして進める」こと。
現場のベテランが蓄積した勘をデジタルにどう転写するか、という課題意識が成功の鍵となります。
まとめ:製造業の「本質価値」は安全性と信頼性に宿る
電子機器の安全性・信頼性向上は、設計・調達・生産・品質管理・現場あらゆる人の「現場目線」と「知見の学び合い」があってこそ実現します。
昭和型のアナログ現場であっても、新しい技術活用や知識の共有化を恐れず進めることが重要です。
そして何より「設計段階で決まるリスクを未然防止する」ことこそ、サプライヤー・バイヤー双方にとって持続的競争優位の原点です。
自社や取引先の「現状価値」と「これからの本質価値」を、いま一度見つめ直してみてはいかがでしょうか。
読者の皆さまが、現場からより安全で、より信頼されるものづくりに一歩踏み出されることを願っています。
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