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型内スライド削減で金型費を抑える意匠設計の考え方

目次
はじめに:金型費用と意匠設計の関係性
金型は製造現場における“心臓部”ともいえる重要なツールです。
特に樹脂成形やダイカスト、プレスなどの分野で量産を担う金型は、一度製作すれば何十万、何百万もの部品を生み出していきますが、その初期コストは非常に高くつきます。
製造業の調達や生産管理を担当した経験のある方なら、部品設計初期の段階で金型費の引き下げ案がどれほど現場を救うか、身にしみてご理解いただけることでしょう。
本記事では、金型費用を押し下げるための実践的な意匠設計手法、とりわけ「型内スライドの削減」に焦点を当てます。
昭和の時代から続くアナログな意匠検討の現場でも実際によく見られる実例や、設計者・バイヤー・サプライヤーそれぞれの立場からのアプローチも盛り込みながら、現場で即実践できるノウハウをお伝えします。
金型費における“型内スライド”とは何か?
基礎用語としての型内スライド
型内スライドとは、樹脂や金属を成形する際、製品形状—特にアンダーカット部が—通常の型開閉動作だけでは成形できない時に用いられる部品の一つです。
型開閉動作に合わせ、横方向や斜め方向に移動し、成形品を抜ける形(抜き勾配が足りない、あるいは窓穴が横に抜けない等)にするための可動構造物です。
型内スライドを必要とする設計パターン
製品設計時、たとえば横向きに貫通する穴、凹形状、突起、あるいは一体で成形したいロゴマークなどは、そのまま設計すると必然的に金型へ追加仕掛け(スライド等)が必要となります。
この追加仕掛けこそが金型費を跳ね上げる一因となるのです。
なぜ型内スライドは金型費を高騰させるのか
コスト増加のメカニズム
スライド機構は、標準的な上下2枚の型では対応できない形状に対し、スライドピンや油圧・カム駆動で実現します。
可動部品が増えることで、部品点数が増加し、精度出しが難しく、摩耗・メンテナンスの頻度も高くなります。
一つのスライド追加につき、しばしば数十万から百万円単位で金型費が跳ね上がります。
試作修正のたびにスライド干渉や動作不良が発生するリスクも増大するため、結果的に量産立ち上げ時のトラブルにもつながります。
間接的コストも無視できない
可動部分が多いと、金型寿命自体も短くなりがちです。
量産途中でスライド部品が摩耗した場合、部分補修や交換作業も必要。
最悪の場合、全体生産ラインが止まるリスクも無視できません。
こうした間接的なコストやダウンタイムは、製品1個のコストのみならず、納期や信頼性にも直結するのです。
実際の現場で型内スライドを削減する意匠設計のポイント
1. 抜き勾配の意識を徹底する
設計初期段階から、「型が分割する方向で全形状を抜けるか?」を意識しましょう。
3D CAD上でパーティングライン(分型面)を確認し、可能な限りアンダーカットを減らす形状を模索します。
少しの勾配を設けるだけで、スライドを回避できる場合も多くあります。
特にロゴや窓穴、クリップ形状などは、方向を変えて配置するだけで金型構造が劇的に単純化される場合があります。
2. 組み立て設計と分割設計を積極的に検討する
一体成形にこだわらず、複数部品に分割し嵌合(かんごう)や接着・溶着などの後工程で一つにする手法も有効です。
パーツの分割方向や嵌合部の設計を工夫することで、金型自体はシンプルにでき、結果として型費全体やメンテナンス費用も大幅に低減できます。
80年代・90年代の大量生産時代の“一体化志向”から抜け出し、後工程も含めたトータルコストでメリットが出るなら、このアプローチも積極的に検討するべきです。
3. 共通化・流用設計を推進する
設計段階で他案件や過去の型構造を流用できれば、その設計知見・型ノウハウも活用できます。
既存金型に含まれるスライドや可動部の設計が流用可能なら、新規設計分も大幅にコストダウンが可能です。
“他品種少量”・“多品種多量”いずれも、標準化された部品構成や意匠ルールを社内横断で共有しましょう。
4. 手戻りを抑えるコミュニケーション
現場の金型担当者(専門メーカーや工場の金型技術スタッフ)と初期設計段階から密接に連携することが何より重要です。
3Dデータやコンセプトスケッチの段階で「どこまで抜ける形状か?」「本当にこのアンダーカットは必要なのか?」をレビューすることで、設計側が“意匠のこだわり”を金型現場のリアリティに落とし込みやすくなります。
アナログ色が強い業界ほど“言った言わない”のトラブルが生じがちですが、現場の知見を迅速に取り入れることで型費は大きく変わります。
型内スライドを最小限に抑えた実践事例
事例1:家電メーカーにおけるコントロールパネル部品
以前私が工場長を務めていた現場で、家電内部の透明パネル部に四角い窓が2つありました。
設計初期案ではスライド2個必須でしたが、「横から成形品を挟み込む」2パーツ分割構造に見直し、スライドゼロに。
設計・型製作・量産すべてにわたって合計300万円以上のコストセーブとなった実例があります。
事例2:産業機器筐体におけるロゴ・リブ設計の見直し
外観の見栄えと強度確保のため、複雑なリブと一体ロゴを成形する設計が検討されていましたが、パーティングラインの位置を抜き方向と揃えることで、アンダーカットが皆無に。
最小限の抜き勾配を確保してスライドを不要にしました。
金型トラブルやダウンタイムが激減し、納期遵守率が格段に改善しました。
バイヤー・サプライヤーが知るべき本質的な金型費用の考え方
バイヤー視点:総合原価と“見積もりの真理”
型内スライドの有無は、金型メーカーの見積額に直接跳ね返ります。
“とにかく最安値”を狙うのではなく、設計初期段階での仕様絞り込みによって「根底からコストが膨れない構造」にすることがバイヤーの最大の腕の見せどころです。
また、量産後のトラブル可能性も含めた“ライフサイクル原価”で金型選定基準を設けるべきです。
サプライヤー視点:顧客ニーズとの対話の重要性
サプライヤーは、“顧客がなぜその意匠を必要としているか”に寄り添いつつ、自社の型内スライド削減ノウハウや、コスト・納期短縮メリットを論理的に提案できる体制づくりが重要です。
また、「スライドを使わず、同じ意匠・機能を実現するには?」というクリティカルな逆提案も歓迎されます。
現場での小さなアイデアが最終的にB to B信頼構築の決定打となるケースも珍しくありません。
まとめ:アナログ現場から脱却し型内スライド削減で競争力を高めよう
型内スライドの削減は、単に金型費を下げるだけでなく、全社的な競争力強化につながる本質的な手段です。
意匠設計者が現場目線で“抜き勾配”や“組み立て設計”を意識するだけで、数十万円〜数百万円単位のコストダウン、さらには納期短縮やメンテナンス性改善も実現できます。
昭和から続くアナログ的な発想に囚われず、新たな視点で現場の声を“見える化”し、設計・パートナー連携を強化しましょう。
型内スライド削減を製造現場の“当たり前”に変えていくことで、今よりもっと堅牢で、低コストなものづくりの未来を切り拓くことができるのです。
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