投稿日:2025年12月11日

ユーザーの誤使用をどう扱うかで設計判断が割れる議論

はじめに:ユーザー誤使用はなぜ起こるのか?

製造業で商品や設備を開発していると「ユーザーの誤使用」をどう捉え、対策するかが設計現場でしばしば議論になります。
特に昭和時代から続くアナログ主体の現場では、「ユーザーも勉強するべきだ」「全部設計でカバーすべきか?」といった考え方の対立が根強く見られます。
この問題が現代のモノづくりや調達現場でどう位置付けられているか、管理職としての経験と現場目線を軸に、現実的かつ未来的な視点で深堀りしていきます。

ユーザーの誤使用をめぐる2つの立場

設計は「想定使用」で進める派

製品仕様書や業界規格で「想定される使い方」が明文化されており、過度な安全率や異常動作のカバーをしすぎるとコストも肥大化します。
このため、設計・調達サイドとしては「ここまではユーザー責任」と切り分けたい気持ちが強くなりがちです。
特に伝統的大手メーカーでは標準仕様・JIS準拠を盾に「これ以上の配慮は異常仕様」と区切る傾向があります。

「ユーザーは想定外に使う」現場実感派

一方で出荷後の現場やクレーム対応に携わると予想外の使い方が頻発します。
私の経験では、「なぜドライバーで押し込もうとした?」「なぜその場所に据え付けた?」といった事例は日常茶飯事でした。
特に新規設備や特殊工程は、導入初期に現場オペレーターが独自の手順を生み出し、対象外のソフトや工具を持ち込むケースも多く見てきました。
この現場目線では「リスクが予想できるなら最初から落とし込め」という声も強いです。

誤使用リスクはなぜ見過ごされるのか?

現場と設計のサイロ化

設計者と最終ユーザー(現場作業者やバイヤー)が物理的・心理的に分断されていることが大きな要因です。
多くの工場では、販社・設計・試作・製造・物流がそれぞれ独立した組織であり、現場ヒアリングが不十分なまま量産に入ることも珍しくありません。
購買・調達部門もまた「安く、早く」が第一優先になりがちで、ユーザー体験まではあまり目が届きません。

コスト優先思考の壁

「そこまでやると採算が合わない」「追加のテストや設計変更は現実的でない」という現実的な制約も根強いです。
特に製造原価や納期がシビアなシチュエーションでは、リスク低減策を講じること自体が後回しにされやすいです。

事故事例から見える教訓

ちょっとした誤使用が大事故につながる

私がかつて担当したラインでは、小型部品のアッセンブリ工程で「工具を使わず素手で圧入」する現場判断が横行し、最終的に不良率増大と大型クレームにつながりました。
最初は些細な工夫という評価でしたが、「想定外の使い方」が連鎖すると、設計・調達・現場すべてが大きな損失を負うことになります。

現場の教育だけでは限界がある

「現場教育でカバーしよう」という方針が昭和の現場では浸透していました。
しかし、人的ミスや担当者の入れ替わり、言語化・標準化されない属人的工程が残存すると、結局事故は繰り返されます。
設計段階から「誰が、どんな状況で使うか」をとことんシミュレーションし、「誰がやっても誤使用できない仕組み作り」が今や求められているのです。

設計の判断を分ける3つの視点

①ユーザー起点:誰がどう使うかを問う

バイヤーやエンドユーザーが「意図しない使い方をするか?」を関係部門全体で洗い出します。
・現場オペレーターは新旧でどんな作業傾向があるか
・工具や補材の選び方に癖がないか
・使用マニュアルをどの程度読まれているか
現場での観察や事前のヒアリングが極めて重要です。

②工程・流通起点:どんなシーンで誤使用が起きるか

運送時の衝撃や現地据付時の予期せぬ力のかかり方、保管中の気温・湿度変化によるトラブルも想定しなければなりません。
調達・生産管理の観点からは、「全工程のリスクマップ化」が不可欠です。

③設計・品質起点:どこまで仕様に盛り込むか

最重要なのは「どこまでを設計の責任、どこからをユーザー責任とするか」を関係部署で明示することです。
・リスクアセスメント結果を図面・仕様書に明記
・想定外使用例もQ&AやFAQに開示
・それでもカバーできない場合の免責範囲を契約書化
法的リスクも踏まえた明文化・合意形成が求められています。

AI・IoT時代の新しい議論

「誤使用」自体を検知するモノづくり

近年はセンサーやAI・IoT技術の進展により、「ユーザーの誤使用」をリアルタイムで感知・自動通知するシステムも実現できるようになりました。
たとえば、規定外の力が加わったらアラートを出す、異常操作を自動記録する、などです。
この技術応用により、市場クレーム発生前にトラブルの芽を摘むことが現実味を帯びてきています。

ユーザーとの連携強化が不可欠に

導入現場やサプライヤーに対し、ただ「誤使用禁止」を押しつけるのではなく、現地現物のデータに基づく対話的な設計が求められてきました。
現場からのフィードバックや実際の使われ方を継続的に取得し、設計へ高速反映する体制が重要です。

バイヤー・サプライヤー双方が理解すべき本質

サプライヤー:自社製品の「使われ方」を学ぶ

机上での仕様検討だけでなく、現場での実用・誤使用パターンを五感で把握することが競争力強化につながります。
相手現場で実際に使われている様子を観察し、潜在的ニーズやピットフォールまで深掘りしましょう。

バイヤー:想定外リスクを契約・認識できているか

「メーカーが何もかも責任を負う」時代ではありません。
バイヤーとしても「どこまでが仕入先責任、どこからが自社責任か」を明確に合意し、FAQや現場教育体制まで見極めて調達判断を行うことが重要です。

まとめ:次世代の設計・調達は「誤使用ウェルカム型」へ

ユーザーの誤使用を「排除・切り捨てる」か「設計で包み込む」かは、組織カルチャーの試金石です。
昭和流の「仕方がない」「現場の気合で何とかなる」時代から、AI・データ時代には「誤使用自体を設計・運用でウェルカム」する柔軟性が求められています。
設計、調達、現場、サプライヤーが一体となり、誤使用を前提にした「ユーザー目線の製造業」を実現していきましょう。
今こそラテラルシンキングで、次の時代の現場価値を切り開く一歩が求められています。

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