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ユーザーの“当たり前使用”が過酷環境で設計が破綻する事例

目次
はじめに
製造業において、製品の設計や開発において最も重要なのは「ユーザーの使い方を正しく想定すること」です。
しかし、現実の現場ではユーザーの“当たり前使用”――すなわち使う側が意図しない環境や方法で製品が使用されるケースが後を絶ちません。
とりわけ、製造現場や工場、検品工程などの過酷な環境では「設計時の想定」と「現場のリアルな使い方」に大きな乖離が発生しがちです。
結果、本来の設計を上回る応力や環境変化により、思いもよらない製品不具合やトラブルが発生することも少なくありません。
この記事では、20年以上にわたり現場で経験してきた“当たり前使用”が原因で設計が破綻する実例を交えながら、その本質や調達購買・バイヤーとしての視点、そしてサプライヤーがどのような対応策を講じるべきか、SEOを意識したキーワードも散りばめつつ分かりやすく解説します。
ユーザーの“当たり前使用”とは何か
設計意図とユーザー行動のギャップ
設計段階では、必ず「想定使用条件」が定められています。
たとえば、温度変化や湿度、負荷、使用サイクル、メンテナンス頻度など、カタログスペックには明記できないリアルな条件です。
しかし実際の現場では、「本来の仕様書」を確認せず、従来通り、あるいは現場なりの工夫で“当たり前”に使われるケースが大半です。
これにより、想定された耐用年数以前に部品が破壊したり、予想外の摩耗や劣化が発生したりする事態を招きます。
なぜアナログ思考の現場でギャップが生まれるのか
昭和時代から続く現場文化には、「一度作ったラインを変えたくない」「今までこの方法で問題なかった」とする思い込みや惰性があります。
加えて、現場の作業者が設計意図にまで思いを巡らせることはまれです。
設計図面や仕様書が難解で読まれない、または「書いてあることが現場の作業手順と合わない」と感じられ、結果的に現場独自の“当たり前の運用”が根付いてしまうのです。
“ユーザー当たり前使用”による設計破綻の実例
温度・湿度による樹脂部品の変質
たとえば、ある樹脂パーツ。
「常温環境・適度な湿度で使用する」ことを前提に設計されているにもかかわらず、現場では猛暑日や結露が発生する冬場でも“普通に”使用されます。
本来であれば「要注意」とされる高温・高湿環境下では材料の膨張や収縮、脆性破壊などのリスクが高まります。
実際、特定ラインで集中的に“クラック(亀裂)”や“変形”が多発し、原因究明の結果「現場が出入口横の直射日光&結露ポイントを作業場所にしていた」という驚くべき事実が発覚したことがありました。
洗浄剤・油脂によるコントローラーの故障
“汗や手油、クリーナー液が基板に付着しても問題ない”と安易に考えられがちな塗装現場。
しかし、対策をしていない設計の電子部品や開閉器が「毎日の拭き取り掃除」の度に誤動作や絶縁劣化を繰り返し、最終的に故障。
本来は「IP等級」(防塵防水保護等級)が要求される場所で使われていたにもかかわらず、出荷時点でその情報共有が十分ではなく、不良品率が急上昇した例も見られました。
冶具を“間に合わせ”で現場流用、部品破損の連鎖
生産工程では「専用の冶具(治工具)」以外を使わないことが基本です。
しかし、現場の作業効率化や急なトラブル対応として、近くにあるドライバーやスパナなど“間に合わせ工具”を使い、本来想定されていない応力や摩擦が加わることで部品が欠損・変形する事例も後を絶ちません。
この一時的な“当たり前使用”が、連鎖的な破損や誤組み立て、部品交換サイクルの乱れをもたらし、生産性の低下や損失に直結するのです。
現場“あるある”がもたらす構造的リスク
「できるだけ安価」「早く調達」志向の調達購買
コスト競争力・納期厳守という観点から、調達現場では安価ですぐに手に入る部品を優先しがちです。
本来なら「使用環境の情報」も含めて仕様伝達・選定をすべきですが、価格・納期だけが重視され、細かな要求条件や使い方の詳細がサプライヤーに正確に伝わりません。
その結果、「設計意図を外れた“当たり前使用”」に気づかないまま部品が現場に流れ込み、不具合の連鎖が生まれるのです。
“現場の声”と“設計・購買”の断絶
現場作業者―設計者―購買担当―サプライヤー。
この伝言ゲームの過程で、本来伝えるべき「現場のリアルな使い方」や「ちょっとした現場改良ノウハウ」が明文化されずに失われていきます。
昭和型の旧来マネジメントでは「担当部署が違うから」と線引きがなされ、現場も顧客も“自分流に使って”問題が起きてからようやく問題認識されることが多いのが現状です。
“当たり前使用破綻”の本質的な構造
リスクはサプライチェーン全体で発生する
「設計―調達購買―現場―品質管理」というプロセスのどこか一箇所に“見落とし”があるだけで、不具合や損失は全体に波及します。
特に自動車や電子部品、食品・化学など「複数サプライヤーを経由する」製造業では、設計意図や実使用条件の差異が積み重なることで、知らず知らずのうちに大きなリスクとなります。
現場の「当たり前」は、サプライチェーンのどこかで「設計崩壊」や「納期遅延」の地雷になることを肝に銘じる必要があります。
昭和的“属人化・暗黙知”の罠
現場の「やり方」は、多くの場合ベテラン従業員の経験や個人ノウハウに依存しがちです。
よくある例が「Aさんがやっていた方法だから間違いない」と継承される暗黙知です。
しかしそれは、設計者やサプライヤーに伝わることなく、属人性の罠に陥ります。
ベテランの引退や異動で、現場の“当たり前”が突然消失し、標準作業が混乱する要因にもなりえます。
対策:設計と現場が協働する“真の現場起点”マネジメント
1. 「現場観察」からの設計見直し
既存ラインの現場作業を設計者・調達担当者が定期的に“観察”し、実際の使用状況・癖を把握することで、設計意図と現場実態のギャップを埋めることができます。
現場で生きている“小ワザ”や“工夫”をフィードバックして設計や購買仕様に反映させることが、トラブル防止に直結します。
2. サプライヤーとの現場情報共有
購買調達部門は、サプライヤーへの部品発注時に、使用環境や期待される運用方法まできちんと伝えるべきです。
とくに欧州系サプライヤーは「現場ヒアリング」を前提とする企業が多く、日本企業も「現場の声」「使われ方」の情報伝達をルール化することで、トラブル時のリスク回避と改善サイクルが加速します。
3. “条件付き当たり前使用”の明示化
仕様書や取扱説明文に「想定使用範囲外」の場合の注意点や禁止事項を、あえて目立つ形で明記することが重要です。
“これくらいなら大丈夫”と判断されがちな慣習的運用も、数値データやトラブル事例を交えて伝えることで現場の危機意識を高めることができます。
4. 教育と意識改革の継続的推進
現場向けには、設計どおりの運用がなぜ大切なのか、なぜ省略や“自己流”が全体損失につながるのか、過去のトラブル事例と共に繰り返し教育啓発を行うべきです。
まさに「One Team」として生産現場・調達購買・設計部門が連携し、リアルタイムに情報共有・改善提案を行う循環型の体制を目指しましょう。
業界動向:デジタル化が変える現場運用の「当たり前」
IoT・センサー活用で「現場使用状況」を見える化
近年はIoT技術の進展により、現場機器やライン設備の使用パターンや環境データをリアルタイムで取得・解析することが当たり前になりつつあります。
センサー情報をクラウド上で集めることで、「誰が」「どんな環境で」「どの部品を」「どのように扱っているか」を数値的に把握できます。
従来の「現場作業者の感覚」に頼りきる状況から、「データに基づく現場起点改善」への移行が進みつつあります。
PL法(製造物責任法)・トレーサビリティ要求の高まり
組立・加工工程を混流生産する分野や、食品・医薬品など高い品質保証が求められる分野では、工程ごとの「正しい使い方」や「管理状況」を証拠として記録することが義務付けられています。
今後は「想定外の当たり前使用」リスクにも、システム的・仕組み的な対策を組み込むことがますます重要になります。
まとめ:製品価値の持続のために
ユーザーの“当たり前使用”は、常に設計やサプライチェーン全体にリスクとイノベーションの両面を与えます。
現場の知恵や工夫は、時に設計の想定を超える進化をもたらしますが、それを正しく仕様化・標準化しなければ設計破綻・品質問題の温床となってしまいます。
今後さらにデータ化・自動化が加速するものの、現場目線でものづくりの本質を捉え続けること、設計者も購買も現場を観察し「本当の使われ方」に寄り添った製品開発や調達に努めましょう。
バックキャスト(未来から逆算)型の発想と、現場フィードフォワード(現場起点改善)のラテラルシンキングで、新たな製造業の地平線を一緒に切り拓いていきたいものです。