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高品質を確保するためのデザインレビューと効果的な進め方

目次
はじめに:なぜ今「デザインレビュー」が求められるのか
デジタル化やグローバル競争が進む今、製造業における「高品質」は企業の生命線といえます。
しかし、昭和時代から続く「勘と経験に頼ったものづくり」の現場では、いまだに図面ミスや手戻り、品質トラブルが絶えません。
こうした課題解決の強力な手段が「デザインレビュー(Design Review)」です。
デザインレビューを形式的な「やっつけ作業」にせず、現場に定着させ、高品質を実現するための実践的な進め方を、筆者の20年以上の経験をもとに深堀りして解説します。
デザインレビューとは何か:現場目線で再定義する
単なるチェックリスト作業ではない
デザインレビューとは、設計段階で発生し得る問題点・リスク・曖昧さを、関係部門が集い、早期に徹底的に洗い出す技術会議です。
「ただ承認のハンコをもらう場」や「設計者の自己満足」ではなく、バイヤーや生産現場、品質保証、調達など多職種の知見を集約し、モノづくり全体の視点から製品仕様の完成度を高める重要な場です。
設計不良の約8割は設計段階で防げる
多くの現場で実感するのは、「現場で発生する不良の8割は、設計段階に原因がある」という現実です。
ここで手を打ち、問題を未然に防ぐことで、後工程の手戻りやコスト増加、品質クレームを激減できます。
デザインレビューこそが、製造業の現場力の根幹を担うのです。
デザインレビュー成功のポイント:実践的アプローチ
1. レビューの目的とスコープを明確にする
まず最初に陥りがちなのが「なんとなく、前からやっているから」と形骸化したレビューです。
現場で本当に役立つデザインレビューとするためには、「どの工程の、どんな品質リスクを、どうやって潰すのが目的か」を関係者全員で共有しましょう。
2. 現場・サプライヤー・バイヤー、それぞれの視点を徹底的に入れる
生産現場からは「この溶接構造はバラツキが出やすい」「段取り時間が伸びてロット管理が難しい」といった具体的リスクが出ます。
サプライヤーからは「材質公差が厳しすぎる」「手作業の多い箇所がコストアップになる」など、購買視点では見えない実情があります。
バイヤーや調達は「今後の供給リスクや代替品対応」「品質保証体制」なども加味し、三位一体で死角を無くします。
この「多様な立場の知恵の集積」こそ、デザインレビューの真髄です。
3. 曖昧さ・バラツキ・例外を徹底的にゼロにする
現場でよくあるのが、「まあ、たぶん大丈夫でしょう」という曖昧な合意です。
たとえば、「±0.2mmの精度でお願いします」の設計指示が、加工現場では「どこまで妥協できるのか」「例外は?」と誤解される場合も多いものです。
ここで「現場で困ること・疑問点」をすべてさらけ出し、可能な限り具体的な形(数値、画像、手順)に落とし込むことが肝要です。
これが後々の品質安定・現場力強化に直結します。
昭和のアナログ文化を超えるデザインレビューの改革
“根回し重視文化”からオープンな議論・合意形成へ
昭和的な製造現場には「失敗を表に出しにくい」「上司に遠慮して指摘しづらい」「根回し中心の密室決定」という文化が残りがちです。
これを打破するコツは、「指摘リストを匿名化する」「設計者以外がレビュー進行役を担う」「指摘は設計に対する攻撃でなく、お客様利益のためだと明確に宣言する」ことです。
こうして本音の議論を活性化し、ヒューマンエラーや見落としを防ぎます。
デジタルツール導入でレビューの抜け・漏れを極小化
紙の図面や口頭説明だけでは、レビューが属人的になり、抜け・漏れの原因となります。
この時代は、CAD画面共有やオンラインでの3Dシミュレーション、SlackやTeamsでの指摘共有など、自社にあったデジタルツールを積極的に活用しましょう。
作業ログやトレーサビリティも向上し、遠隔地のサプライヤーや工場とも抜け目なく意見を集約できます。
バイヤー・サプライヤーの立場から読み解くデザインレビューの価値
バイヤー視点:コスト・納期・品質トラブル防止のための“投資”
調達バイヤーにとって、デザインレビューの最大の価値は「後工程のコスト爆弾、納期遅延、サプライヤークレームの芽を設計段階で摘む」ことです。
原価低減だけを追いかけると、致命的な設計ミスや仕様の曖昧さから大きな損失につながることも珍しくありません。
バイヤー自身が能動的にレビューに加わり、「サプライヤーが要求通り作れる体制になっているか」「安定供給にリスクがない仕様か」も確認することが重要です。
サプライヤー視点:要求の隠れリスクを洗い出し利益確保へ
サプライヤーが苦労するのは、「設計から伝わる要求が現場実情に合っていない」「後から仕様変更・クレームの嵐」といった現象です。
デザインレビューに真剣に参加し、自社視点から「この仕様なら作業効率が落ちる」「歩留まりが下がる」「特定作業者に依存してしまう」など、現場で見える“現実的なリスク”を必ず提出しましょう。
これが自社の利益を守るだけでなく、発注元にとっても高品質・低コストにつながり、Win-Winの関係構築へ大きく前進します。
デザインレビューの進め方:具体的なフローとチェックポイント
事前準備:設計資料とレビュー観点リストの共有
・レビュー対象となる設計図、仕様書、各種基準書を全員が事前に確認します。
・「品質」「コスト」「納期」「安全」「操作性」「作業負荷」に関する観点リストを事前配布し、目線のブレを防ぎます。
レビュー当日:多職種・現場担当者・外部専門家も巻き込む
・設計者だけでなく、生産現場、品質管理、保全、調達、必要に応じて外部サプライヤーや専門家も招集します。
・一人ひとりが自部門の立場から必ず「現場で困る点」「リスク」「不明点」を具体的に発言する場をつくります。
・発言を全件ホワイトボードやデジタルツールで見える化し、「誰が」「いつまでに」「どう対応するか」を記録します。
合意形成とアクション
・指摘内容が設計変更に反映されるまでをトレースし、漏れなくクローズします。
・対応結果をフィードバックし、「なぜ指摘されたのか」「どう直したか」を現場・サプライヤーも含めて共有します。
・レビューを単なる儀式にせず、次回以降の設計・現場改善に生かすPDCAサイクルへつなげます。
よくある失敗パターンとその防止策
形式的な会議“だけ”で終わる
→解決策:現場担当者や外部を巻き込み、「現物現場主義」で生きた指摘を促す。指摘内容の見える化とフォローアップを徹底する。
設計者だけが主役で“現場不在”
→解決策:生産技術、工程管理、品質保証など現場部門も必ず加え、「使う・作る側の声」を重視した議論推進体制をつくる。
後からの“手戻り”が多発する
→解決策:初回レビュー時点での徹底的な指摘出し・全チェックリストの網羅・記録管理の徹底で再発防止。
まとめ:今こそ“垣根なき連携”で高品質をつくる
デザインレビューは、形式的なイベントではなく、現場力を最大化し、お客様・関係者全員の利益を守る「未来投資」です。
昭和的な「場当たり主義」「根回し主義」から脱却し、現場・サプライヤー・バイヤー・専門家が本音でぶつかり合う「オープンな場づくり」が、高品質ものづくりへの最短ルートです。
現場で培った知恵やノウハウ、業界の古い壁を超えるラテラルな視点で、デザインレビューを“本当の武器”に育て、製造業の次の時代をともに切り拓いていきましょう。
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