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陶器マグの取っ手印刷で段差を滑らかに仕上げる版位置設計

目次
はじめに
陶器マグのカスタム印刷は、近年急速に需要が拡大している分野です。
販促用品や記念品、飲食店のオリジナルグッズなど用途は多岐にわたります。
その中で特に難易度が高いのが「取っ手付きマグカップ」への全面印刷です。
円筒ボディと取っ手部分のつなぎ目、いわゆる“段差”部分の仕上がりをいかに滑らかにするかは、多くの印刷現場が抱える共通課題です。
本記事では、20年以上にわたり製造現場で培った知見を交え、この段差を乗り越えるための「版位置設計」にフォーカスし、現場で実践できるノウハウ、そしてバイヤーの選定基準や業界の最新動向も分かりやすく解説します。
陶器マグの構造が生む「段差問題」
マグカップは本体の円筒部分と、持ち手となる取っ手部材から構成されています。
この2パーツは成形・素焼き後に接合されるため、取っ手両端の付け根部分には目視可能な段差やわずかな凹凸が必ず生まれます。
通常のシルク印刷や転写印刷では、この段差にさしかかる箇所でインクの乗りが悪くなったり、版が浮いてしまいかすれや滲み、版ズレが発生しやすくなります。
この“つなぎ目への印刷品質”がマグ製造現場における大きな技術的ハードルの一つです。
段差が引き起こすリスク
・デザインが切れて不自然な仕上がりになる
・段差付近のインクが薄くなり部分的な白抜けが発生
・転写紙の浮きやエア噛みで剥離やひび割れが起こる
これらの問題が品質クレームに直結し、納期遅延や追加コストの要因となります。
版位置設計の最適化が仕上がりのカギ
陶器マグの全面印刷で「なめらかな仕上がり」を実現する第一歩は、段差を前提に版(デザイン)の配置や設計そのものを工夫することです。
段差に重なる“またぎ”部分のケア
業界に多い手法は、デザインの“またぎ”部分(取っ手接合部)を意図的に調整し、段差を美しくごまかすことです。
代表的な設計ノウハウは以下の3点です。
・取っ手またぎ部に無地ゾーンや背景グラデーション、ぼかしをあえて配置
・段差部分を意識したピッチ合わせ(版下データの左右端で連続性を持たせる)
・つなぎ目にラインやバンド柄など“ずれ”やすい要素は避け、ランダムパターンを利用
例えば、細かいチェックや均質な横ストライプが途切れると目立つため、そうしたパターンは段差と重ならない位置に意識して配置します。
思い切って段差箇所にノイズ感のあるデザインやグラデーションパターンを採用することで、多少のズレやカスレも意匠の一部として昇華させることができます。
段差上での版合わせ精度向上
シルク印刷の場合、治具(治工具)や印刷アームの調整で版の密着度を高めたり、版のテンションや押し当て圧力を微調整することで、凹凸部分でのインク乗りを強化できます。
また、転写印刷では段差部分に合わせて転写紙を事前に“起伏なじみ”加工し、圧着ロールの当て方を最適化し、浮きを極力排除します。
バイヤーが押さえたい「選定ポイント」
発注側=バイヤーの立場で重要になるのは、最終製品が「どこまで滑らかな仕上がりになるのか」そして「標準品の仕様範囲」を正確に理解し、サプライヤーに具体的な品質要求ができるかどうかです。
サンプル現物で段差仕上がりを必ず確認
カタログやデータ上ではわからない、段差部の仕上がりサンプルを実物で評価することが欠かせません。
必ず“量産イメージでの現物確認”を要求し、どの程度のズレ・カスレが「標準品範囲」なのか、基準値を合意して契約します。
段差付近の印刷条件を仕様書で明文化
現場では印刷の許容ズレや段差部の仕上げ基準が曖昧だと、クレームリスクが高まります。
印刷版の突き合わせ許容値や、段差付近の印刷ムラ許容範囲を画像付きで明文化し、製造側と「現実的な品質水準」を目線合わせすることが重要です。
印刷現場での「デジタル化」進展
昭和的アナログ業界のイメージが強い陶器マグ印刷ですが、近年は版下データの3Dシミュレーションや、AIを活用した自動配置設計ツールの導入が徐々に進んでいます。
段差部分の高さデータを3Dスキャンで計測し、その凹凸に最適化した版下を自動生成するシステムも登場。
ミスの早期発見や手戻り防止、量産での安定品質に大きく寄与しています。
サプライヤー目線での「バイヤー志向理解」
発注側がどのような点に注意し、何を重視しているかを理解するのはサプライヤー(下請け)にも必須です。
安さより“安心な出来栄え”が最重要
バイヤーは単価や納期はもちろんですが、最終的には「市場で使われてクレームが少ない」=品質安定という“安心”を最大評価しています。
特にOEMやノベルティグッズの場合、段差部の仕上がり一つでブランド価値や顧客評価が大きく左右される現実を意識しましょう。
「段差はゼロにできない」現場事情の説明責任
段差なし100%のパーフェクトな仕上がりは原理的に困難な場合もあります。
「最高水準の設計と調整をして現状このレベルまで向上可能」と技術的背景を説明し、リスクコミュニケーションを取ることが信頼関係を築く近道です。
未来視点:陶磁器印刷の進化と業界動向
IoTやスマートファクトリー化の流れを受けて、陶器マグ印刷の現場も着実に進化を遂げています。
例えば、インクジェット技術によるフルカラープリントの段差跨ぎ精度が飛躍的に向上したり、ロボットがマグを自動搬送し、最適な角度で印刷を施すシステムも現実になってきました。
今後はAI画像認識による自動検品や、段差の個体差に応じたリアルタイム補正のアルゴリズム適用も進む見込みです。
まとめ:段差問題は「設計×現場連携」がすべて
陶器マグの取っ手印刷で段差部分を滑らかに仕上げるカギは、「版位置設計」の工夫と材料・印刷現場の連携にあります。
バイヤーはリスクや標準仕様への理解を持ち、サプライヤーは現場目線の技術的ケアを明確に説明し、お互いの歩み寄りがより良い製品づくりにつながります。
デジタル化や自動化の新技術も積極的に取り入れ、業界全体の品質底上げと効率化を進めていきましょう。
“段差品質”を競争力に変えてこそ、アナログ業界にも新たな成長の地平線が現れるのです。
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