投稿日:2025年10月22日

営業マンが移動せずに全国の顧客対応を可能にするオンライン商談設計

イントロダクション:アナログ業界でもオンライン商談が進む理由

With コロナ以降、以前は「アナログの最後の砦」とも呼ばれた製造業もオンライン化の波にさらされています。
ですが、現場視点で考えると、現実はまだまだ昭和スタイルが根強い。
「顔が見えないと取引できない」「現物を手に取らずに判断できない」などの価値観が、営業や商談の場にも色濃く残っています。

しかし、これからの製造業が持続的な成長を遂げるためには、アナログ的体質とデジタルの両立が不可欠です。
とくに調達・購買、生産管理、品質保証などの現場に、オンライン商談を効果的に組み込むことができれば、移動コスト削減とリードタイム短縮という大きな武器を手に入れることになります。

今回は、実際に現場でオンライン商談体制を構築し、全国の顧客をオンライン対応してきた経験から、実践的なオンライン商談設計のポイントをお伝えします。
営業マンが移動に費やしてきたムダな時間を一気に利益へ変えるための設計ノウハウを、現場目線で徹底解説します。

オンライン商談がもたらす製造業現場へのインパクト

営業が抱える移動コストと非効率性

従来の営業スタイルでは、営業担当者が全国の顧客を巡回し、現地で商談を重ねることが常識でした。
その結果、移動コスト(交通費・宿泊費)はもちろん、営業担当者が移動に費やす「隠れた人件費」の膨大さが慢性的な課題でした。
また、一人当たりが対応できる顧客数も限界があり、営業リソースが頭打ちになるケースが多発します。

オンライン化による効率化とレスポンスの加速

オンライン商談体制に切り替えると、営業担当者が物理的に移動する必要がなくなります。
一日に3社、場合によっては5社・6社と、これまででは考えられないスピードで複数の顧客対応が可能となります。
問い合わせへのレスポンスも劇的に向上し、新規顧客へのファーストアクションも数日以上早められるようになりました。

また、調達・購買担当者が本社から全国のサプライヤーを同日で比較検討することも可能になります。
これにより「サプライヤーにとってバイヤーが何を考えているのか」も、よりオンラインで可視化され、合理的な意思決定が生まれやすい環境になります。

現場を知る営業マンが実践する“失敗しないオンライン商談設計”のポイント

1. 顧客と“現場感”を共有する工夫

昭和的なアナログ業界の顧客は特に、「モノが見えない」「現地の空気が読めない」ことに強い抵抗感を持ちやすい傾向にあります。
この心理的障壁を乗り越えるには、ただビデオ会議ツールで話すだけでは不十分です。

事前に提供する資料は、現物写真・工程動画・サイズ感が伝わる比較画像など現場のリアルが伝わるものを多用しましょう。
また、スマホやウェアラブルカメラでの工場ツアーをライブ配信し、“現場の匂い”をオンラインでも届けることが、信頼感の醸成につながります。

さらに、工程ごとにポイントとなる人材(例えば品質管理の責任者や現場リーダー)もオンライン商談に参加させ、「顔が見える関係性」を仮想的にでも構築します。
こうしたひと工夫が、オンライン特有の“壁”を取り払い、昭和的な顧客でも安心感を持ってもらう大きなポイントとなります。

2. “段取り”が命。事前準備で決まるオンライン商談の質

対面以上に、オンライン商談では段取りと資料設計が勝負の分かれ目です。
なぜなら、画面越しでは“間”や“空気”をリアルタイムに調整しにくく、場当たり的な対応が極めて難しいからです。

必ず商談議題・プロジェクトの背景・各工程のQ&Aをリスト化し、「どのステップでどの質問が出るか」をあらかじめ想定しておきましょう。
この時に、“バイヤー目線”も意識して、「コスト」「納期」「品質管理体制」など相手が知りたい情報を先回りして用意します。

サプライヤーの立場であれば、「価格交渉や納期調整でバイヤーがどのポイントで懸念を抱きやすいか」を洗い出しておきます。
逆にバイヤー側なら、どのタイミングで「現場の技術責任者」「品質保証担当」など専門家を引き込むべきかも計画に入れておくことで、より合理的かつ納得感ある意思決定が可能になります。

3. “対話の記録”を最大限活用して次回の商談へ活かす

オンライン商談最大の利点は、そのまま“記録”として残せる点です。
しかし、現場では「録画しただけで満足している」ケースも多々見受けられます。

実践的な活用法としては、
・会議録音やチャット問答を必ずテキストもしくは要点サマリー化
・顧客から下された課題や交渉条件を、プロジェクト管理ツールに即時反映
・次回商談の事前資料やトークスクリプトに“過去の履歴”を盛り込む
こうした蓄積が、“前回と今でバイヤーの関心や要望がどう変化したか”まで追跡でき、オンライン営業の成功率を確実に高めます。

オンライン商談時代、バイヤー・サプライヤーが共に注意すべき点

バイヤー視点でのオンライン商談の課題

製造業の調達担当者がオンライン化で感じがちな不安は、「実物を見られないことによる仕様齟齬」や「サプライヤー現場の本音を掴みにくい」点です。
こうした課題に対しては、事前に「動作確認動画」や「オンサイトライブ中継」を組み込むことで、疑似的な“現地検分”体験を作り上げておくことが効果的です。

スケジューリング上は、「サプライヤーの現場担当者」「営業マネージャー」など複数部門と一度に会議ができるメリットも活かし、部門横断的な意思決定を加速させましょう。

サプライヤー視点でのオンライン商談のカギ

サプライヤーにとって、オンライン商談では“サービスや技術のアピール不足”になりやすいという落とし穴があります。
とくに日本の中小メーカーでは「何も言わなくても分かってくれる」「昭和流の阿吽の呼吸」で済ませがちですが、オンラインではこうした“空気感”が全く伝わりません。

ですから、事前に「御社向けにこうアレンジできる」「この課題はこう解決する」など、きめ細かなカスタマイズ提案をセットにし、“顧客ごと提案ストーリー”をビジュアル化しておきましょう。
また、受発注→生産→品質管理→納品の一連フローについても、「どこで顧客との情報共有が必要か」「どんなリードタイムを約束できるか」を繰り返し言語化することが、信頼感構築の近道となります。

現場体験からのラテラルシンキング提案

商談の“場所”を進化させる:バーチャル工場視察やデジタルデモルーム

これからの製造業オンライン商談で新しい地平線を切り開くためには、リアルの“代替”ではなく、リアルにはない新価値の創出が必要です。

その一つが、「バーチャル工場視察」「デジタルデモルーム」による商談体験の高度化です。
3DモデリングやVR技術を組み合わせ、製品設計から工程管理、出荷検査までを“その場で一緒に歩きながら疑似体験”できれば、「わざわざ移動しなくても現場を深く理解できた!」という納得感を、クライアントに提供できます。

また、リアルタイムで工程データや品質モニタリング画面を共有し、社内外プロジェクトメンバーが一斉に議論できる体制を設計することで、オンラインならではの「多拠点・多部門・多担当者による同時検討」を標準化できます。
これは、アナログ現場では絶対に成し得なかった、新世代のサプライチェーン改革の第一歩となるはずです。

“オンライン営業プロセス設計”のDX化でオペレーションそのものを変革

単なるTV会議ツール→オンライン商談ではなく、“オンライン営業プロセス”そのものをツールで標準化・自動化することで、営業管理の生産性は劇的に向上します。

具体例として、
・商談前後にAIチャットボットで顧客要望を自動ヒアリング。
・過去商談の議事録や交渉履歴、納期管理をERPやCRMへ自動連携。
・バイヤーの購買アクションや意思決定プロセスを“ダッシュボード化”し、サプライヤーにも共有。
営業一人一人の力量や勘に頼る昭和的体制から、“データドリブン”なチーム営業体制へシフトすることができます。

この変化は、「人海戦術」と「精神論」で乗り切ってきた現場の旧体制を、根本からアップデートする大きな切り札となります。

まとめ:オンライン商談設計は“現場の進化”を生む

営業マンが移動に縛られず全国の顧客対応を可能にするオンライン商談設計は、単なるコスト削減や効率化にとどまりません。
それは、現場の働き方を抜本的に変え、時代遅れだったアナログ文化の限界を突破する、新たな製造業の進化です。

重要なのは、「オンライン化=リアルの代用品」ではなく、“オンラインならではの強み”を最大限に活用し、現場感覚を失わない体制をつくることです。
オンライン商談設計をしっかりと行い、段取り・現場共有・記録活用・DX化を同時に推進すれば、アナログ現場でも確実に成果は出ます。

今この記事を手にしたバイヤー、サプライヤー、現場スタッフの皆さんが、それぞれの立場で新しいオンライン商談体制をデザインし、ぜひ日本の製造業の未来を共に切り拓いていきましょう。

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