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製造設備側の制約を理解しない設計が量産で無理を生む構造

目次
はじめに:設計がもたらす量産現場の「無理」とは
製造業で働いている方や、これからバイヤー・サプライヤーを目指す方は一度は「設計で描いた世界と現場の現実とのギャップ」を感じたことがあるのではないでしょうか。
設計者が素晴らしいアイデアや理想を盛り込んだ製品図面。
しかし、いざ量産フェーズになると「こんなの作れない」「コストが跳ね上がる」「歩留まりが悪すぎる」と現場が頭を抱える場面は昭和の時代から今に至るまで絶えません。
本記事では、設計と製造現場の関係性や、なぜ「製造設備側の制約を理解しない設計」が量産における“無理”の連鎖を生むのか、長年現場で培った視点も交えて実践的に解説します。
昭和的ともいえるアナログ業界特有の文化や、令和の時代にも根強く残る構造的な課題にも言及し、よりよいモノづくりに向けた考え方を読者の皆さまと共有したいと思います。
現場目線に立てば見える「設計と製造の壁」
図面には宿らない、現場のリアルな課題
設計図面は緻密で論理的です。
しかし、製造ラインや加工設備には“物理的な事情”や“人に依存する作業限界”がついて回ります。
例えば
– 微妙なR形状(角の丸み)の指定
– 極端に厳しい寸法公差
– 特殊な材質や、得意としない加工方法の指定
こうした設計が図面で振る舞うものの、実際の加工機や治具では固定が難しかったり、複数工程が必要になったり、時には手作業の職人技に頼らざるを得なくなります。
特に、自動化やロボット導入が進んでいない中堅以下のメーカーや、工程が完全にアナログ化している現場では、この「設計意図」と「現場の実現性」の断絶が日常茶飯事です。
なぜ壁が生まれるのか──組織構造の弊害
昭和から脈々と受け継がれる“設計と現場の縦割り”。
設計部門と製造部門の間には情報の壁が厚く、密なコミュニケーションがなかなか取れません。
設計者は「新しいアイデアで勝負したい」「独自性を出したい」という思いから、挑戦的な設計を行いがちです。
一方、製造現場は「安定・品質・コスト」を重視します。
この二つの力がせめぎ合い、現場はいわば設計側の“無茶振り”に日々苦しんでいるのです。
「製造しながら設計補完」が横行する現実
理想と現実のギャップを埋めるため、下請けや現場サイドが「図面補完」を行う場面もよく見られます。
設計で曖昧な指示や非対応な加工指示があると、現場が現実的なやり方で“勝手にアレンジ”して成立させるのです。
その結果、本来の設計意図が伝わらず、予期しない不具合や品質バラツキ、トラブルの温床となります。
こういったアナログ的な“なあなあ対応”が、実は未だ多くの中小メーカーやサプライヤー現場で根強く残っているのです。
設備制約の主なパターンと現場の工夫例
加工精度の限界とその見極め
たとえば「ミクロン単位の寸法公差」を求める部品から「見た目にこだわる外観部品」まで、設計図面の要求は多岐に渡ります。
しかし、古い工作機械や汎用の金型しか持たない協力工場では、設備精度自体がそもそも設計要求に追いつけません。
この場合、現場は「極力歩留まりを上げる工夫(検査・選別追加)」や「手作業での微調整」という昭和的手法で、どうにか要求に少しでも近づこうとします。
ですが、これを大量生産で続けるとコスト上昇や不良率増加に直結し、結果として「量産不能」「継続受注不可」となってしまうのです。
治具や金型、手作業の隠れたコスト
設計段階で「複数パターンのバリエーション」、「複雑なアッセンブリ部品」などを盛り込むと、それに対応するための治具や金型が多く必要となります。
工場側は泣く泣く段取り替えや治具交換を多発させたり、専門の作業者をあてがったり──“陰の努力”が積み上がります。
これらは一見、見積もりには出にくい工数・コストですが、最終的に製造全体の生産性・コスト・品質に大きく影響します。
意外と見過ごされるこの「隠れコスト」が、量産の現場目線で最も恐れられる存在だと言えるでしょう。
「自動化」「ロボット化」が万能でない理由
最近はIoTや自動化、ロボットの導入が製造業のトレンドです。
しかし、実際の現場では「イレギュラー対応」「微細な調整」を人間の手に頼っている製造プロセスも非常に多いです。
設計段階で“全自動”を前提とした部品形状や組立工程を盛り込んでも、現場の自動化設備が追いついていなければ意味がありません。
また、自動化設備の仕様や対応範囲を理解せずに「全てロボットでやってくれ」という発想も、現場からは大きな反発が起こります。
自動化できない部分、どうしても人手が必要な部分があるという「現実認識」を設計初期から持つことが極めて重要なのです。
設計-現場ギャップが生む“無理”の連鎖
無理を強いると何が起きるか
– 品質トラブルの多発
– コスト超過、利益激減
– 現場作業者の士気低下、退職
– 更なる外注化or海外生産の加速
– サプライヤー側の信頼喪失
これらの現象は全て、設計と製造の協業がうまくいっていない証拠です。
設計課題は現場の工夫で何とかなる──そう思い込んでいるといずれ現場力の限界を迎え、“もう無理”という返答が返ってきてしまうのです。
バイヤー・サプライヤー双方で起こる悲劇
バイヤー(発注側)は「設計通り」「品質良く」「値段もおさえて」と求めます。
一方、サプライヤー(受注側)は「これじゃ量産できない……」「また値段でしわ寄せが……」と板挟みになります。
設計-製造-取引の関係性が改善されなければ、サプライチェーン全体が蝕まれる事例も後を絶ちません。
なぜ“設計-現場-調達”の連携が必要なのか
日本的ものづくりの強みの再興へ
かつて日本の製造業が世界を席巻できたのは「現場発のカイゼン」「設計と製造の泥臭い対話」が根付いていたからです。
– 設計者が現場に足を運び、製造設備の制約を肌で知る
– 現場が設計意図を読み取り、可能性と限界をフィードバックする
– 調達・バイヤー担当も、現場や工程ごとのコスト構造まで理解する
この三位一体の“現場主義”こそが、量産の可能性と限界を見極め、強い日本型ものづくりを再興させるカギだと確信しています。
“現場目線の設計”が量産を救う
設計者は「量産設備で再現可能か」「どの工程でリスクが潜んでいるか」を初期から想定する視点が必要です。
製造現場は「できない理由」ではなく「こうすればできるのでは?」という建設的な提案を設計に返す姿勢が望ましいです。
サプライヤーや協力工場も、設計者に積極的に現場見学を呼びかけ、線引きされた図面の裏にある現実を伝えていきましょう。
結果的に、歩留まり・コスト・納期すべてが好転し、「バイヤーもサプライヤーも嬉しい」状態へ近づきます。
これからの製造業に求められる意識変革
業界全体で育てる“現場感覚”
旧態依然とした日本の製造業にはまだまだ昭和的な縦割り文化が残っています。
しかし、変化の激しい令和の時代こそ「現場を知らずに上流工程を設計しない」「開発からものづくり現場まで一気通貫して連携する」ことが重要です。
バイヤーも単なるスペック要求だけでなく、現場の制約や加工の“物理限界”を理解したうえでパートナーを選ぶべきです。
サプライヤーも現場目線の気付きや提案を積極的に持ち込み、“巻き込む設計”に貢献する文化が求められています。
アナログ現場・デジタル現場の共存へ
完全な自動化やAIの活用ももちろん重要ですが、日本的な“現場の知恵”やアナログの工夫を活かしつつ、設備制約を柔軟に捉えた設計と融合していくことが、競争力維持に不可欠です。
「業界の常識」を疑い、“なぜそれができないのか、どうしたらできるのか”を多角的に考え続ける姿勢が、次世代のものづくりを牽引します。
まとめ:本当に強い設計は現場から生まれる
「量産現場で無理が生まれる設計」は、設計と現場の対話や連携不足が生む構造的問題です。
現場目線で製造設備の限界を知り、それを設計段階で想定すること。
バイヤー・サプライヤー間でも“モノ作りのリアルな事情”を率直に共有・提案・相談しあうこと。
こうした土壌がなければ、どんな先進的な設計も量産現場の「無理」の前には無力です。
日本の製造業全体で設計・現場・調達が連携し、深く現場の制約を理解することが、これからのモノづくりの新たな地平を切り開くと信じています。
皆さんの明日のものづくりが、無理のない、強い設計で満たされますように。
そして、業界全体で一歩先の生産イノベーションを目指せることを願っています。
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