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OEMアウターの販売単価を上げるためのディテールデザイン戦略

目次
はじめに:OEMアウターの販売単価を高める重要性
製造業の中でも存在感を高めているOEM(Original Equipment Manufacturing)アパレル事業において、アウター製品の単価を上げることは企業の収益性やブランド価値に直結します。
特に、アウターは客単価が最も高く、最終製品の品質やデザインが消費者の満足度と再購買につながる重要なカテゴリーです。
しかし、昭和時代からのアナログな流通や根強い価格競争の慣習が残るこの業界では、単にコストダウンや生産効率化だけに目を向けていては継続した成長は難しい現実があります。
本記事では、現場での豊富な実体験と最新の業界動向を織り交ぜながら、OEMアウターの販売単価を上げるための戦略、特に“ディテールデザイン”へのアプローチを深掘りしていきます。
ディテールデザインの価値とは何か
差別化の原動力としてのディテールデザイン
アウターの見た目や機能に“決定的な違い”を生み出すのがディテールデザインです。
ポケットの形状や配置、ジップの種類、裏地の素材や縫製、ステッチワークなど、ユーザーが手に取った際に“何となく良い”と感じる部分にこそ、多くの付加価値が潜んでいます。
既存市場では見過ごされがちなこれらの微細な部分が、“他にはない”存在感を生み出し、結果として販売価格アップを正当化します。
OEM現場が陥りがちなデザイン軽視とその弊害
OEMアパレルの最大の課題は“量産志向”によるデザイン画のマンネリ化です。
バイヤー側が価格や納期重視の場合、「前年と同じで」といった指示が多くなり、新規性に乏しい製品が市場にあふれています。
これでは価格競争から抜け出せません。
逆にディテールまで気を抜かずに開発した製品なら、例え原価が2~3%上がったとしても、小売現場での説明しやすさやブランド強化につながり、長期的に見て顧客獲得や収益性に大きく寄与します。
販売単価を上げるディテールデザイン5つの着眼点
1. “感性品質”の可視化
近年、消費者は単なる防寒や防汚といった基本性能だけでなく、“着た時の高揚感”や“自分らしさ”を重視しています。
例えば高級感のあるボタン、絶妙な位置に隠されたユーティリティポケット、裾や袖のラインに統一感を持たせたパイピングなど、見た目と使い勝手を両立したデザインは、手に取った瞬間に違いを実感させます。
これこそがリピート購入や口コミを生み、サプライヤーの指名買いにつながるのです。
2. コスト掛からず“語れる”付加価値を仕込む
例えば縫製糸を通常より細く繊細なものにする、複数の機能(撥水・透湿)のある裏地を採用するなど、1着あたり50円~100円程度、敢えて一手間かけることで“小さなこだわり”を商品説明の切り札にできます。
バイヤーは“これは他のOEMにはできない”という差別化ポイントを常に探しています。
低コストで実装できる“語れるディテール”こそODM提案やPB(プライベートブランド)交渉での抜群の武器です。
3. 量産時の安定性・再現性まで逆算した設計
凝ったディテールを設計しても、現場で再現性が低くNG品が増えれば、追加コストで利益を圧迫します。
近年の品質管理(QC)手法や、デジタルパターン活用などを駆使し、工場ごとの生産安定性を担保しつつ、独自デザインを量産体制に落とし込むノウハウが重要です。
昭和の手作業頼みから抜け出し、ITや自動化も積極活用した設計思想が“利益ある単価アップ”の基盤となります。
4. ブランドや販売チャネルとの最適化
同じデザインでも、セレクトショップ向けOEMと量販店向けPBOEMでは“効くディテール”が異なります。
ターゲット販路のトレンドやブランド政策を正確に理解し、売り場ごとに最適化した提案力が求められます。
例えば20~30代向けであればトレンド重視、シニア向けなら着脱のしやすさ、有名アウトドア向けならテクニカルな機能強調、というように、バイヤーとの綿密なすり合わせが不可欠です。
5. サステナブル視点とストーリーテリング
今や欧米・日本問わず、環境配慮型製品へのニーズが拡大しています。
再生素材を利用したディテール(裏地、ファスナーのテープなど)や、脱炭素工程への配慮などを積極的に取り入れることで、価格に転嫁しやすい“ストーリー”が商品に付加できます。
OEM段階からこうした視点を採り入れた提案は、上流バイヤーの信頼獲得やPR分野との連携も期待できます。
現場事例:実際に単価アップに成功したディテールデザイン
防寒アウター:着用感の変わるネック部分
暖かさ重視の一般的な防寒アウターでは、従来ウール素材のチンガードやフード端部にタフな人工皮革を提案。
同時にファスナーの引手部分を冷たさを感じにくいラバーコーティングとすることで、手袋でも扱いやすい使用感を実現しました。
コスト上昇は1着あたり120円で収まりましたが、店頭では「ここまで気配りされたアウターは珍しい」と高い評価を受け、定価を3000円アップで設定することに成功しました。
レディーストレンチコート:配色裏地&お直し対応仕様
裏地の一部にカラーアクセントを入れ、見た目の鮮度を演出。
さらに袖丈をセルフで直せる縫製方式を導入し、“ジャストサイズ志向”の消費者ニーズに応えました。
バイヤー提案時には「今までの同型より高く売りたい」という反応を即座に獲得。
小売現場では1着あたり従来比+10%の販売価格設定となり、リピート案件にもつながりました。
OEM業界ならではのディテール提案の進め方
初回商談時から“小さなこだわり”を提示
多くのOEM営業では、商談初期は“標準スペック”の話題になりがちです。
ですが、あえて「こういった新素材や新ディテールも可能です」と、サンプル段階から一手間掛けたアイテムを提示することで、価格決定権のあるバイヤー層への印象が劇的に変わります。
また、その現場でしかできないローカルな職人技や、QCノウハウもセットで情報提供。
現場主導で主体的に“付加価値の種”を育てる意識が大切です。
現場のモチベーション管理と評価軸の転換
昭和型の“早く・安く・大量に”というKPI(評価指標)から、“いかに語れる商品を増やすか”へと現場目線のマインドチェンジを図ります。
たとえばディテール設計者の評価会議には営業、品質管理、物流など多部門を交え、自社のものづくり力そのものの底上げを促します。
新しいディテールアイデアにはインセンティブを設けることで、現場自身の提案力アップにもつながり、現代の柔軟な生産管理や自動化と好循環を作れます。
まとめ:令和時代の“強いOEM”はディテールから生まれる
OEMアウター事業で販売単価を上げていくためには、古い商習慣を見直しつつ、ディテールデザインに徹底的にこだわる姿勢が不可欠です。
消費者が価値を実感し、バイヤーが“説明したくなる”ような差別化ポイントを随所に盛り込むことで、単なるコスト競争から抜け出すチャンスが広がります。
現場の声や技術を最大限に活かし、ラテラルに視野を広げた提案力で、一歩先行く“売れるOEMアウター”を生み出していきましょう。
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