投稿日:2025年8月9日

低コード拡張APIで独自業務アプリと受発注プラットフォームを統合する開発ガイド

はじめに:製造業における業務アプリと受発注プラットフォームの課題

製造業の現場では、長らく「紙伝票」や「Excel台帳」といったアナログな仕組みが根強く残っています。

しかし、2020年代に入り、DX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性が叫ばれる中、多くの企業が受発注プラットフォームや独自の業務アプリケーションの導入を急速に進めました。

その一方で「現場の業務フロー」と「プラットフォーム」のギャップ、「既存システムとの連携が難しい」「現場のルールが柔軟に反映できない」といった課題は今なお解決されていません。

この記事では、そうした現場の課題解決を目指して、今注目される「低コード拡張API」による業務アプリと受発注プラットフォーム統合の実践的な開発ガイドを解説します。

現場出身の目線から、理想論にとどまらない現実的な手法と、昭和から続くアナログ業界の“空気感”も加味しつつ、製造業DX実現へのステップを具体的に提案します。

低コード時代の業務アプリ開発とは?

低コード開発とは

低コード開発とは、専門的なプログラミング知識がなくても、ドラッグ&ドロップやテンプレートの活用により、短期間・低コストで業務アプリを構築できる手法です。

代表的な低コード開発プラットフォームには、Microsoft Power Apps、kintone、OutSystems、Salesforce Lightning Platformなどがあります。

我々製造業の現場では「エンドユーザーが自分で開発する」「部門でスピーディにPDCAを回す」ことが可能になる点が最大の魅力です。

製造業現場における必要性

工場現場や資材調達、品質管理の業務は、日々の「ちょっとした例外」「イレギュラー対応」が頻繁に発生します。

スクラッチ開発や大掛かりなパッケージシステムでは、「本当に困っている現場の声」「解決すべきボトルネック」が直ちにシステム反映できません。

その点、低コードであれば現場担当者自らプロトタイプを作り、試行錯誤を繰り返しながら現実的な業務アプリをスピーディに育てていけます。

受発注プラットフォームと現場業務アプリの「分断」問題

プラットフォームの導入進展と現場の“乖離”

最近では、アラジンオーダー、モノタロウ、SAP Ariba、CO-NECTなど、B2B向けの受発注プラットフォームサービスも拡大しています。

調達部門、購買担当者の多くは、これらを活用することで業務効率化やコスト削減を目論みます。

しかしその一方で、現場の日々の発注申請、納期調整、イレギュラー対応など「実務」は依然としてExcel・FAX・電話が主役で、「プラットフォームのデータと業務実態が連動していない」といった分断が指摘されています。

よくある現場の嘆き声

・「プラットフォームに入力し直すのが二度手間」
・「社内の品番や担当者名と合わないから混乱する」
・「得意先や現場ごとの “ローカルルール” が吸収できない」

こうした声は、昭和以来の現場文化が根強く残り、クラウド化・システム統合を阻む“壁”になっています。

低コード拡張APIで統合を実現するアプローチ

拡張APIとは何か

拡張APIとは、受発注プラットフォームが公開している「外部連携のための仕組み(Application Programming Interface)」です。

このAPIを活用することで、現場業務アプリと受発注プラットフォーム間で自動的にデータ連携させることが可能になります。

たとえば、
・現場アプリで発注申請→API経由でプラットフォームに直接登録
・プラットフォーム上の最新納期情報をアプリ側のダッシュボードに自動反映
などが実現可能です。

なぜ“低コード+拡張API”なのか?

従来のシステム統合では、「高価なEDIや連携バッチ」「専門SIerによる独自開発」が必要でした。

しかし、低コードツール×拡張APIの組み合わせなら、ノンプログラミングでもデータ連携・画面連携が組みやすく、現場レベルでPDCAサイクルを早められます。

これが、昭和型組織にもなじみやすい「現場起点のDX」の決定打となるのです。

実践的な統合開発ガイド

1. 統合対象業務を可視化する

まずは、現場業務の流れと、受発注プラットフォームの「自動化の余地」を洗い出します。

・どこまで現場アプリ側で吸収すべきか?
・どの情報をAPI連携で自動化すべきか?
・「イレギュラー」はどこに生じやすいか?

業務フロー図やカスタマージャーニーマップで現場担当者と意見交換し、可視化します。

2. 拡張APIの仕様選定

受発注プラットフォームごとにAPI仕様は異なります。

・利用可能なエンドポイント(例:発注登録、納期取得、仕入先マスタ連携)
・APIの認証方式
・利用可能なデータ形式(JSON、XML)
・1回あたりのリクエスト上限
を必ず確認しましょう。

ベンダーのサンドボックス環境が用意されている場合、早期検証が可能です。

3. 低コードツールによるプロトタイプ開発

Power Appsやkintoneなどを用いて、まずはシンプルな実証モデルを組んでみましょう。

・発注伝票の入力画面(アプリ側)からAPIコール
・取引先情報をリアルタイムに取得・表示
・登録済み受注データを双方向に同期

“現場ユーザー自身が”テストしやすいUIを心がけると、定着率が一気に高まります。

4. イレギュラー・例外処理の仕組み化

実際の工場や調達部門では、「緊急手配」「誤発注対応」などイレギュラー案件が頻発します。

低コードとAPIで自動化できるのは標準パターンだけですが、例外発生時には
・「アラート通知」の自動発行
・「承認プロセス」へのエスカレーション
・Chatツール(Teams、LINE WORKSなど)との連動
など、幅広く“現場に刺さる”仕掛けを組み込みましょう。

5. プラットフォーム運用現場との定期レビュー

外部サービス側は仕様変更や新機能リリースが頻繁です。

「APIが変わったので連携が止まった」「新しい帳票項目に追従できていない」などのトラブルも増えます。

定期的に現場レビュー会議を設けて
・API仕様変更時の通知フロー
・障害発生時の手動リカバリー手順
もマニュアル化することが、現場根付きを大きく左右します。

「昭和型アナログ文化」でもDXを定着させるコツ

日本の製造業は、「現場ファースト」「属人的な情報伝達」「目視チェック」といった伝統が色濃く残ります。

どれだけ優れたシステム・API統合を設計しても、現場の“納得感”と“安心感”がないと活用されません。

現場巻き込み型プロジェクト推進

・現場リーダーを早い段階から巻き込む
・小さな成功事例 “現場の武勇伝” をつくる
・マニュアルだけでなく「朝礼」「現場掲示板」で利用方法を発信

現場の“口コミ”と実感値こそが最大の推進力です。

グラデーション型自動化戦略

「いきなりフル自動化」は現場反発の元です。

まずは「自動チェックアラート」「半自動化フォーム」など、“現場目線の即効性ある小規模化”から段階導入し、外堀を埋めていくのがコツです。

これから求められるバイヤー・サプライヤー像

受発注プラットフォームと現場業務アプリをAPI連携で統合する時代、バイヤー(調達担当)には
・現場とITをつなぐファシリテーター力
・アナログの価値とデジタルの利便性をバランスさせる調整力
が不可欠です。

また、サプライヤー側も
・バイヤーの「現場事情」を理解する配慮
・API連携や電子データ受け入れ体制づくり
といった進化が求められます。

まとめ

低コード拡張APIを武器に、独自業務アプリと受発注プラットフォームを統合することで、昭和型のアナログ文化にも根を張った、現場親和性の高いDXを実現できます。

現場巻き込み、イレギュラー対応、現実的な小規模自動化など、机上論にとどまらない“ものづくり”ならではの視点から、自社に最適な開発・運用ノウハウを身につけていきましょう。

これこそが、令和時代の「現場主導型DX」の新たな地平線だと確信しています。

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