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エンジニア部品リクエストを自動購買に転送して試作リードを短縮した開発支援フロー

目次
はじめに:エンジニア部品リクエストの課題と時代背景
現在、多くの製造業の現場では、エンジニアからの部品リクエストプロセスが依然として手作業や口頭、Excel表といったアナログ手法に頼りがちです。
昭和から平成、令和へと時代は流れていますが、この流れに取り残され、“紙”や“ハンコ”がまだ根強く残る理由は、ノウハウの属人化や現場の抵抗感、そして「このやり方でなんとか今までやってきた」という安心感が挙げられます。
しかし、グローバル競争はますます激化し、製品開発サイクルの短縮や市場投入までのリードタイム短縮が経営課題となっています。
エンジニアが欲しい部品を、欲しいタイミングで確実に手に入れる。
それが実現できれば、試作から量産立ち上げまでの開発リードタイムは大幅に圧縮されます。
その現実解のひとつが「エンジニア部品リクエストを自動購買に転送する開発支援フロー」です。
本記事では、私の長年の製造現場経験で実際に感じた課題と、それを乗り越えてきた最新のフロー改善事例を絡めて、皆様に「アナログ製造業でも実現できるデジタル化の威力」を現場目線で詳しく解説します。
従来の部品リクエストフローの課題
手作業・属人化によるタイムロス
設計や開発エンジニアが試作用部品の調達を申請する際、手書きの用紙を使ったり、メールで依頼した内容を調達担当者が手作業で基幹システムに転記する、という工程がよく見受けられます。
この作業は、無駄な手間が多く、申請ミスや伝達漏れ、「誰が今どの段階なのか」といった進捗のブラックボックス化も引き起こします。
また、購入ルートや手配ルールが担当者の裁量に委ねられる状況も多く、担当者が休暇の場合は“停滞”が生じてしまうのが現状です。
コスト見積もりと承認の複雑化
見積もり取得から発注、承認申請に至るまで、いくつもの部署や管理職の印鑑を経由しなければ前に進まない…。
こうした「スタンプラリー進行」は、製造業では“伝統芸能”のように残っています。
一方で、現場では「この部品が今週中に欲しい」といった“スピード重視”のニーズは高まるばかり。
ですが、購買・調達部門は法令順守や社内オペレーションを死守しなければならない。
このジレンマが、ものづくりの俊敏さを阻害しています。
自動購買システム導入の全体像
SaaS型調達プラットフォームの活用
アナログからの脱却に効果的なのが、近年普及が進むSaaS型部品調達プラットフォームです。
例えば、アラジンオフィスやクラウドサプライチェーン、スマート購買といったサービスは、エンジニアが「欲しい部品の条件」を入力すると、社内の承認フローをオンラインで完結し、複数サプライヤーから見積もりを自動取得。
承認後は、そのまま自動で発注・納期確認まで進めるものが主流です。
これにより、紙やExcelの“リクエスト申請→調達担当へメール送付→内容転記→手作業で見積もり依頼→進捗確認→押印申請”という多重手間を一掃できます。
既存のERP/基幹システムとの連携
導入にあたり障壁となるのは「今使っているERP(SAP, Oracle, OBIC7等)との連携」です。
ところが最近のサービスはAPI連携やCSV吐出といった標準機能が充実し、一部の業務フローだけでも段階的に自動化が可能です。
たとえば見積依頼や購入申請→承認→発注連絡までのフローだけを切り出し、他の生産管理プロセスは従来どおりのまま「併存運用」する、といった形でも導入が進んでいます。
現場で生まれるメリットと変化
リードタイムの劇的短縮
最大のメリットは、試作に必要な部品調達リードタイムが1/2〜1/3に短縮されることです。
エンジニアが午前中にシステムでリクエスト入力しさえすれば、業後には見積回答。
翌日には承認・発注まで進めるフローが可能となります。
これにより、今まで「社内申請待ち1週間、見積もり回収1週間、承認スタンプラリー5日」とかかっていたものが、最短2〜3日で終わります。
調達購買部門の生産性向上と新しい役割
調達部門の仕事が無くなるのでは――という懸念も生まれますが、実際には購買ごとの価格分析やサプライヤー評価、リスク管理・新規サプライヤー開拓など、より高度な業務にシフトできます。
また、アナログ時代に常態化していた「根回し」「属人的な調整」から脱却し、部品リードタイム短縮やコスト分析など、多面的な業務価値創造が求められるようになります。
サプライヤー側のメリットと適応力強化
自動発注が定着すると、サプライヤーにも変革が求められます。
オンライン見積や納期回答が標準化され、見積書フォーマットや納期回答の“ばらつき”が減少。
さらには「客先の欲しいタイミング=リアルタイムに自社もアクションを起こす」リードタイム短縮体質の強化が必須となります。
この変化に早く順応したサプライヤーは、顧客からの評価や次回注文獲得のチャンスが広がるでしょう。
導入ハードルと現場アナログ派への反発
現場の“変化への抵抗”の本質
どれほど便利なシステムも、「今までのやり方に慣れている」「新しい仕組みに乗り遅れたらどうしよう」という不安は根強いものです。
管理職や現場の購買担当の多くは、自分たちの成功体験・職人的勘に誇りがあります。
そのため、全てを一度に置き換えようとすると大反対が起きやすいです。
“並走運用”と現場ヒアリングがカギ
昭和的な現場に浸透させるには、「紙とデジタルの併存」、つまり現場にやさしい並走運用が肝心です。
また、リクエスト入力項目の最適化や画面のわかりやすさなどについて「実際に使う人」の声を聞き、何度も改修サイクルを回すことが成功要因です。
たとえば、「型式名がわからない部品は自由記述も認める」「電話によるリクエストも併用可」といった柔軟性をもたせるのも現場浸透には有効です。
今後の製造業バイヤー・サプライヤーのあるべき姿
アナログから“新しい現場力”へ
自動購買を起点にした調達フローの進化によって、バイヤー(購買担当)は「業務効率だけでなく事業価値を高める存在」としての力量が問われる時代に入ったといえます。
また、現場エンジニアや設計者は調達のプロセスに詳しくなり、「手配・見積・納期回答含めた総合的な“QCD”調整」を積極的に担う必要があります。
サプライヤー担当者も同様で、自社サイトやEDI対応、オンライン商談など、従来営業から一歩進んだ「調達の共創パートナー」としての役割が求められます。
DX化が生み出す“現場発イノベーション”の芽
こうした流れでは、現場から生まれる小さな課題や“こうだったらいいのに”という声をもとに、システム側(情報システム部門や外部ベンダー)と二人三脚で改善を重ねていくことが重要です。
たとえば「試作部品の再注文が多いので類似注文履歴からの入力補助機能を追加」「納期回答のリマインダーを自動化」のような改善が、現場目線のイノベーションとなります。
これが、競争力のある製造現場を創る大きな推進力となるのです。
まとめ:一歩を踏み出す現場主導の改革を
エンジニア部品リクエストを自動購買に転送するフロー構築は、一見するとハードルが高く感じられるかもしれません。
しかし、これからの製造業は“現場と管理部門が協働して前進する”ことこそが成果に直結します。
アナログならではの泥臭さ、人間的な現場感覚も大事にしながら、デジタル化のメリットを少しずつ現場に根付かせる。
そのプロセスを一歩ずつ積み重ねることこそが、“試作リード短縮”を実現し、よりよい日本のものづくりに繋がります。
ぜひ皆様の現場で、「現場目線の開発支援フロー改革」に挑戦してみてください。
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