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DFA設計指数で部品点数を半減する評価基準と事例

目次
DFA設計指数で部品点数を半減する評価基準と事例
はじめに:製造現場が待ち望んだ本質的な改善策とは
製造業の現場は、常に「コストダウン」「品質向上」「納期短縮」の三大テーマを追いかけ続けてきました。
しかし、多くの工場や設計部門では、未だにアナログな手法や「これまでのやり方」を守り続け、抜本的な改革に踏み切れていないのが実情です。
そんな中、大手メーカーだけでなく中堅・中小の現場でも近年注目されているのが「DFA(Design for Assembly:組立容易性設計)」です。
特に、DFAの設計指数を活用することで、製品の部品点数を半減し、コスト・リードタイム・品質・生産性を一気に改善した事例が続出しています。
本記事では、20年以上にわたる筆者の現場経験に基づき、DFA設計指数とは何か、導入による評価基準とメリット、そして実際の現場で得られた具体的な事例について、現場目線でわかりやすく解説します。
また、調達購買やサプライヤーの視点、今後の業界動向まで踏み込みますので、ぜひ明日からの業務改善にお役立てください。
DFA(組立容易性設計)とは何か
DFAの基礎概念
DFAは、製品設計の段階で「どうすれば最も簡単・速く・確実に組み立てられるか」を評価し、設計自体を組立性優先に変革しようというアプローチです。
「このパーツ、本当に必要?」「溶接でもカシメでもいいのでは?」といった徹底的な見直しをシステム化し、個人の経験や勘ではなく、数値(DFA設計指数)として評価・意思決定します。
DFA設計指数とは
DFA設計指数(ロジックによってはアセンブリ指数などとも呼ばれる)は、具体的には「理論的最小工程数」と「実際の組立工程数」から導き出される指標です。
この数値が高いほど、無駄なくシンプルな設計がなされていることを表します。
– 設計指数=理想的(最小限)の部品点数 ÷ 実際の部品点数 × 100
多くの場合、「設計指数は60%以上を目指しましょう」などと基準が明示され、定量的な設計改善コンテストやVA・VE活動にも応用されています。
DFA導入でなぜ部品点数が半減するのか
設計と生産の間に横たわる「昭和の壁」
設計者は「技術的な合理性や機能」に注目しがちで、現場の工員は「作りやすさ」「段取り替え工数」「取り数」を重視します。
両者の考え方はしばしばズレます。
DFAの本質は、設計段階から“組み立てる人の視点”を強制的に導入し、自動車や家電、機械などあらゆる製造業で「そもそもの部品数自体を減らせないか?」と発想を転換することにあります。
半減が実現するメカニズム
以下のような設計再構築がDFA活動では頻繁に見られます。
– 三つの小部品を一体化したモノづくり(インサート成形、カシメ一体化など)
– ネジ固定部~はめ込みやワンタッチクリップへの変更
– 左右対称→片側専用品への統合
– 機能の同時実現(たとえばカバー兼スペーサ、ブラケット兼配線ガイド)
「部品を外せないか?」「固定方法を変えられないか?」という視点を徹底し、一つの部品で複数の機能を担わせる設計を重視します。
こうすることで、部品点数が2分の1になることも珍しくありません。
購買・調達との強い連動性
部品点数削減は、調達購買部門にも強力なメリットをもたらします。
購入品目・発注数・在庫管理負荷も減少し、サプライヤー側でも製造段階のコスト・ノンバリュー工数(=付加価値を生まない手作業や確認作業など)が減るため、見積の際の原価低減に直結します。
DFA設計指数を活用した業務改善の具体例
事例1:自動車部品メーカーのコントロールユニット設計
筆者が携わった自動車用ECU(電子制御ユニット)の開発現場では、従来6パーツ構成だったケース部をDFA再設計により2パーツへ削減しました。
– スクリュー4本+上下カバー2枚+スペーサ→一体化クリップ付カバー2枚構成へ
– 専用工具不要のワンタッチ着脱
– 配線ガイドもカバー用リブで兼用
DFA設計指数は従来40%から70%まで向上し、組立時間75%削減・ライン人員1名減・部品発注点数1/3という劇的な効果を達成しました。
事例2:家電メーカーでのギアユニット設計
某家電工場では、各ギア・シャフト・スペーサ・座金などの従来20点超えのアセンブリを、射出成形の一体成形パーツ5点に集約。
ねじ締め工数と部品紛失・仕掛品在庫も激減し、年間300万円超の原価低減に成功しました。
また、取引先工場でも同様の設計指針が展開され、部品納入から完成品までのスループット(工程全体の速さ)が約1.5倍になりました。
事例3:生産設備メーカー(設備業界もDFAが不可欠に)
いまや設備メーカーでも、DFA設計指数を使ったVA活動が盛んです。
冶具プレートの設計で、従来は様々な金具と固定ねじで組んでいた結果、都度ミスや部品不足でトラブルが発生。
そこでスロット付き押え一体化設計に。
調達購買も「見積依頼先が一社で集約、生産時の調整も不要」と大きく業務効率が向上しました。
この時のDFA設計指数は当初35%→55%まで改善しています。
DFA設計指数による評価基準の設定ポイント
評価項目は「必要性」と「非効率性」
DFA設計評価では、現場が巻き込むべきポイントが明確です。
1. その部品は、本当に必要か
2. その部品が、他で兼用できないか
3. 一体化できる工法は使えないか
4. 組立工程が簡略化できる形状か
5. 組立方向は単一方向(下から上だけ等)で完結するか
6. 工具や特殊設備の使用は極力避けられるか
7. 品質・耐久性に悪影響を与えないか
各工場の実態や設計慣習も考慮しながら評価マトリクスを作り、それぞれ点数化して「設計指数」と合算していくやり方が一般的です。
米国製造業はDFA指数90%以上が標準水準
米国の有力メーカーでは、すでにDFA指数90%以上をグローバル標準水準とし、新規開発部品の承認要件に組み込む動きがみられます。
一方、日本の工場では平均50~60%程度が多く、円安・部材高騰・人手不足の今だからこそ欧米流の抜本改革が求められているのです。
サプライヤー・バイヤー視点でのDFA活用法
バイヤー目線:DFA提案で“値引き合戦”から脱却
バイヤー業務に携わる方なら、原価低減と言えば「価格交渉」や「多社比較」と考えがちです。
しかし、DFA設計に明るくなるほど「図面そのものの簡略化」が究極のコストダウンであることがわかります。
つまり、DFA設計指数に基づいた「部品改革提案」をセットで持ち込むことで、発注先にも利益が還元され、持続的な取引・新規案件の拡大も見込めるのです。
サプライヤー目線:攻めのDFA提案で差別化
サプライヤー(部品メーカーや加工会社)の立場でも、単なる品質・納期順守では今後生き残れません。
「御社の設計なら、こうすれば部品点数半減できます。年間〇〇円のコスト低減効果も見込めます」と具体的DFA事例をもって提案することで、取引先バイヤーや設計現場との信頼関係が飛躍的に高まります。
このような提案型営業力が、今後の受注競争でも圧倒的な武器になると断言できます。
今後の業界動向とDFA指数の新しい可能性
IoT・自動化とDFAの親和性
近年は、工場のスマート化(IoTやAI導入)が急速に進んでいます。
しかし、いくら最先端の自動化を導入しても、組立工程が複雑で部品点数が多ければ「ロボットも人手も」非効率なままです。
DFA設計指数をKPIに据え、製造工程全体の平準化・自働化設計と連動させれば、「昭和の多層工程」から「令和のシンプル製造」へ一気にジャンプできます。
DFAで日本のモノづくりが進化する
DFA設計指数は、単なる部品点数削減のツールではありません。
– 設計者・現場・購買・調達・サプライヤー
– 上流から下流まで
全プロセスの関係者が「シンプルで、強いモノづくり」の共通言語として使うことで、昭和流のムダ・ムラ・ムリを徹底的に排除し、課題解決力やモノづくり力の底上げにつながります。
まとめ:今日から始めるDFA指数ベースの現場改革
本記事では、DFA(Design for Assembly)設計指数を活用して部品点数を半減した現場の実践事例や、評価基準、業界動向を解説しました。
部品点数を削減するだけでなく、調達・購買・サプライヤーの生産性も向上し、結果として日本のモノづくり全体を進化させる取り組みです。
「製品を設計する」ことは「部品を減らすこと」と再定義し直し、ぜひ自社・自職場でもDFA設計指数をKPI化してみてください。
現場から始まる小さなDFA活動が、やがて世界に通じるモノづくりの進化につながるはずです。
また、製造業に携わる方、これからバイヤーを目指す方、サプライヤーの立場でバイヤーの考えを理解したい方も、本記事を参考に現場改善・業務提案の武器として積極的に活用していただければ幸いです。
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