投稿日:2025年11月27日

フルオーダーOEMパーカーとセミオーダーOEMの違いと活用方法

はじめに:OEMパーカーの需要が高まる背景

近年、ファッション業界や企業向けユニフォーム、販促品として「パーカー」のOEM(他社ブランドの製品を製造)依頼が急増しています。

多様化する顧客ニーズやデザイン性、機能面へのこだわりの高まりを受け、既製品ブランドでは対応しきれない要望が増えていることが大きな要因です。

特に、従来の昭和時代的な“言われたものをそのまま作る”受身型の製造から一歩進み、顧客の課題やブランドイメージ・訴求ポイントに合わせた細やかなOEM提案が求められるようになっています。

そうした中、「フルオーダーOEMパーカー」と「セミオーダーOEMパーカー」という2つの方式が浸透しつつあります。

本記事では、その違いと活用方法、実際の製造現場目線からの留意点や導入のヒントを解説いたします。

OEMとは?―製造業のバイヤー・サプライヤー目線で読み解く

OEM(Original Equipment Manufacturer)は、自社ブランドの製品ではなく、顧客(発注者)のブランド名で製品を企画・製造・納品する生産方式です。

発注者側は、アイテムの企画・販売に注力でき、自社の生産設備や資材調達、品質管理リソースの大幅な軽減につながります。
一方、サプライヤーは、顧客ブランドへの深い理解と、生産現場での高い柔軟対応力が求められます。

最近のOEMは「単なる下請け」的な感覚では務まらず、より積極的に課題解決やコスト・品質提案を行う新しいバイヤー・サプライヤー関係が構築されつつあります。

フルオーダーOEMパーカーとは

仕様設計の自由度が最大限に広がる

フルオーダーOEMとは、デザイン・素材・サイズ・ディティール・カラー・機能性・副資材(ファスナー、紐、タグなど)に至るまで、顧客の希望通り“ゼロから新設計”で製作する方式です。

完全オリジナルゆえ、サンプル製作から型紙(パターン)、素材相談、染色・縫製仕様まで、徹底したヒアリングと綿密な打ち合わせが必要となります。

導入メリット

・他社との差別化が絶大
・ブランドアイデンティティや世界観を100%反映できる
・特殊な要望(スポーツ用途の機能性、ノベルティの意匠性など)への対応力が高い

想定される課題と対応策

フルオーダーは自由度が高い反面、「コスト増」「開発リードタイムの長期化」「最低ロット量の増加」など制約も多くなります。

例えば、生地ロールの染色や副資材の一点手配、サンプル量産の調整には熟練の知見や業界特有の段取り力が必要です。
企画内容と納期・コストのバランスを“現場と机上”で徹底協議することが成功の秘訣です。

セミオーダーOEMパーカーとは

既存ラインを活用したカスタマイズ型

セミオーダーOEMは、サプライヤー側が保持する「ベースになる既製デザイン/パターン」を活用し、カラー・素材変更、ワンポイント追加、ロゴカスタム、サイズ拡張など指定範囲内でアレンジを行う方式です。

完全な新規設計と比べると「ある程度枠が決まっている」ため、コストや納期、ロット対応でフルオーダーより有利になるのが特徴です。

導入メリット

・ベースラインがあるため打ち合わせ~サンプル~量産までスピード対応が可能
・最低ロット数やコスト圧縮がしやすい
・大手量販用途や販促キャンペーンなど大口注文にもフィット

想定される課題と解決策

セミオーダーは「ベースに制約がある」ため、“自由度が限定的”です。
本格的なブランド個性訴求や、特殊素材(吸汗速乾、難燃、ストレッチ等)を要する場合は難しいケースもあります。

その場合、サプライヤーの製品カタログや、ベースライン拡充提案を細やかに提示できること、また「できること・できないこと」の線引きを数値で可視化しておくことが重要です。

製造現場からの実践アドバイス

業態に応じたOEM方式の選択ポイント

OEM方式の選択には「どこに譲れないこだわりがあるのか?」を明確にし、これを発注者・サプライヤー双方の言語で共有することが鍵です。

たとえば
・社内ユニフォームはコスト重視&短納期なのでセミオーダー
・ブランド立ち上げやEC新規参入なら、出発点はセミオーダー→ヒット商品をフルオーダーで深掘り
・アーティストグッズや特別なイベント用では全方位カスタムのフルオーダー
といった視点が重要です。

昭和的なアナログな現場の現実

設備や工程がデジタル化・自動化しても、「サンプル確認」「現場打ち合わせ」「小ロットでの品質評価」「生地や副材の一つひとつの手配」では未だにアナログなやりとりが根強く残っています。

OEMの現場は“カタログで見せるだけでは伝わらない微差”に対応するウェットな感覚と、「現場を見に行く」「現物を触る」「職人同士でしか分かり合えない質感」を根気よくすり合わせる文化も大切です。

バイヤーサイドもサプライヤーも、時に「現地現物主義」の姿勢が品質トラブルや不良リスク低減につながります。

バイヤーとサプライヤーの新たな関係性とは

従来は「言われた通りに作って納める」だけだったOEMパーカーですが、今後は
・トラブル未然防止のための事前課題洗い出し
・コストダウン案や工程改善提案を含む付加価値型の商談
・デジタル×アナログ双方の長所を生かした現場連携
がトレンドになると考えます。

納期短縮・多品種小ロットニーズには「共通パーツを使ったセミオーダーの基盤強化」
希少性やブランド力強化には「完全フルカスタマイズ」
など、使い分けの“頭の柔らかさ”が重要です。

OEMパーカー調達時の押さえたいポイントと事例

コスト比較

多くの場合、フルオーダーは金型代やパターン費、サンプル費など初期投資が大きくなります。

一方、セミオーダーはベース設計のためイニシャルコストを概ね抑えられ、追加カスタムが発生した場合でも単項目ごとに細かくコントロールできるメリットがあります。

納期管理

フルオーダーは設計フェーズが重要で、工程管理・品質管理のノウハウが問われます。
現場では、「いつまでに、どの状態まで進捗把握できているか?」というガントチャートや工程表の共有が欠かせません。

一方で、セミオーダーであれば工程が標準化されているため、予期せぬトラブルも少なく、トータルリードタイムの予測が立てやすくなります。

品質確保&トラブル防止

OEMパーカーは完成度そのものが「顧客のブランドイメージ」と直結しています。
製造業としては「検品基準」「工場監査」「納入前確認」などの体制構築と、万が一の不具合対応まで事前合意をしっかり取ることがトラブル防止の鍵です。

まとめ―OEMパーカー選びの新時代へ

フルオーダーOEMパーカーとセミオーダーOEMパーカーは、それぞれ特徴・メリット・制約が異なります。
顧客のブランド価値や用途目的、コスト・納期の兼ね合いをよく吟味し、調達購買・生産管理・現場の経験値すべてを動員してベストな選択をしましょう。

中・長期でコラボレーションできるパートナーづくりこそが、21世紀の日本製造業が世界で輝き続ける原点です。
OEMパーカーの調達・提案で迷ったときは、現場本位の目線が大きな武器になります。

これから製造業でバイヤーを目指す方、サプライヤーとして更に一歩踏み込みたい方も、工場の現場目線と時代の流れを意識し、OEMパーカーの“最適解”を提案できる存在を目指してください。

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