- お役立ち記事
- 量産品とオーダーメイドの生産体制の違いを理解する
量産品とオーダーメイドの生産体制の違いを理解する

目次
はじめに ― 製造業で求められる柔軟な生産体制
製造業の現場において、「量産品」と「オーダーメイド品」の生産体制は大きく異なります。
一見、どちらも「モノづくり」という点では同じですが、実際の業務プロセス、必要なノウハウ、顧客対応のあり方など、細かなポイントに至るまで違いが存在します。
この記事では、20年以上製造現場と寄り添ってきた経験をもとに、量産品とオーダーメイド品の生産体制の特徴や課題、そして今後のトレンドについて現場目線で解説します。
量産品生産体制の特徴
標準化と効率化が命
量産品とは、主に大量に、同一の品質・規格で製造される製品を指します。
自動車・家電・電子部品…、私たちの生活に直結する多くの製品がこの方式で作られています。
量産品生産体制でもっとも重視されるのは「標準化」と「効率化」です。
生産ラインは作業手順が徹底的に整理され、マニュアル化されています。
また、品質管理も「ばらつき」削減が求められ、各種の自動検査装置や統計的手法が導入されます。
生産計画・資材調達・在庫管理の連携
量産品の生産では、大量の部品・原材料の調達が必要です。
サプライチェーンマネジメント(SCM)は生産の中核であり、多くの場合ERPや生産スケジューラーなどのITツールが導入されています。
在庫管理も重要です。
過剰在庫はコスト増、品切れは生産ストップを招きます。
需要予測と購買・生産計画が精密に連動することが、量産品生産体制の強みといえます。
工場自動化とIoT・デジタル化への対応
量産では「標準化された作業=自動化しやすい作業」になるため、工場のロボット化やIoT導入が進んでいます。
各工程で得られるデータをもとに、品質・効率・保守の最適化が実現できます。
工場側は依然としてアナログ的な風土も強いですが、少しずつ若手が現場改善を推進しているのも事実です。
オーダーメイド品生産体制の特徴
多品種少量・受注生産が基本
オーダーメイド(受注生産)は、お客様からの要望にあわせ、一品一様で製品をつくり上げる体制です。
試作品、専用装置、特注治具、航空宇宙・医療分野の特殊品などが該当します。
この場合、標準化・効率化というよりも、「柔軟性」や「技術力」が問われます。
単品生産、あるいはごく少量生産になるため、毎回異なる設計・加工・組立・検査フローが発生します。
短納期や難易度の高い要件も多いため、「現場力」の真価が発揮される場面が多いです。
設計・生産管理・調達が一気通貫で連携
オーダーメイドの場合、多くの工程が「仕様確定」段階からスタートします。
設計担当と生産現場、調達部門の連携が欠かせません。
サプライヤー選定も重要な要素となります。
標準品で対応できない場合には、部品そのものから新規調達や別注が必要です。
その分バイヤーの役割は“指名買い”から“開発パートナー”にシフトしていきます。
現場の柔軟性と個人の力量が命運を分ける
生産現場は、毎回異なる段取りや治具を工夫する必要があり、ベテラン技術者の経験値が求められます。
日本の製造業では、昭和時代からの「職人技」や「現場主義」がいまも色濃く残っており、現場の知恵が新たな付加価値を生む土壌となっています。
業界動向 ― アナログからデジタルへの変革
昭和の現場主義からの脱却は進むか?
令和となった現在でも、製造業の多くは「紙の伝票」や「口頭指示」「エクセル管理」に頼るアナログ運用が根強いのが実情です。
とくにオーダーメイド分野では設計変更や現場対応が多く、デジタル化が遅れがちです。
その一方、大手メーカーを中心に、クラウド型生産管理システムやペーパーレス化、3Dデータのリアルタイム共有などデジタル活用が急速に進みつつあります。
このような変革期には、ベテラン技術者と若手デジタル人材のハイブリッドが重要です。
「現場の勘と経験」を「データ」と「仕組み」に落とし込むことで、属人化からの脱却を目指す動きが本格化しています。
量産品×個別対応=マスカスタマイゼーションの台頭
近年、「量産品でも個別の仕様変更に柔軟に対応する(マスカスタマイゼーション)」という新しい潮流が広がっています。
カスタムパーツをあらかじめ複数用意し、ECサイトで顧客が細かく仕様を指定できる仕組みや、3Dプリンタやセル生産方式の導入などがその代表例です。
今後は、量産とオーダーメイドの境界があいまいになる分野も増えていく可能性があります。
調達購買・バイヤーに求められる役割の変化
量産品のバイヤーには、供給安定・コスト競争力・グローバルサプライチェーンの構築能力が求められます。
一方、オーダーメイド分野では「技術を探し出す力」や「パートナー協業力」「リスクマネジメント」など、より高度で柔軟なスキルが必須です。
海外サプライヤーとの協業やESG(環境・社会・ガバナンス)調達など、社会の変化に柔軟に対応できることが、今後の購買人材には欠かせません。
量産とオーダーメイドの違い―現場目線で捉える
現場で感じる「違い」と「難しさ」
長年工場に携わってきた立場から言えば、量産品とオーダーメイドとでは「働く人の意識や習慣」にも大きな違いが現れています。
量産品の現場は「計画的」「規律的」「チームワーク重視」。
指示とルールが明確で、PDCAサイクルが安定して回る空気感があります。
ミスや不良は許されず、「流れを止めない」ことが最大の正義です。
一方、オーダーメイドの現場では「柔軟対応」「応用力」「個人技」がものを言います。
現場ごと、ロットごとに「今回はどんな仕様?」と最初から段取りし直すのが日常です。
設計途中の仕様変更、部品未入荷、納期急変…対応力が問われるスリリングな魅力があります。
最前線で求められる力
どちらの現場にも共通するのは「品質を守り抜く」姿勢と「顧客満足を追求する」情熱です。
ただし、求められる人材像やマネジメントのスタイル、課題発見・改善サイクルの回し方は大きく異なります。
現場の力量がいっそう重要になるのは、オーダーメイドや多品種少量分野です。
これからの製造業を支えるために ― 若手・バイヤーへのメッセージ
自分の立ち位置から“競争優位”を築くコツ
もしあなたが量産品の現場にいるなら、現場改善の小さなアイディアでもどんどんチャレンジしてみてください。
デジタル化やカイゼン活動は、現場の声に基づいた「現実解」から始まるのが一番強いです。
もしオーダーメイドの現場や調達・購買担当なら、ぜひ社内外の技術者・サプライヤーのネットワークを広げてみてください。
“困ったときに助けてくれる仲間”をどれだけ増やせるかが、いまの時代を生き抜く最大の武器になります。
異なる生産体制を越境して成長する
現代の製造業は、変化のスピードがとても早いです。
量産とオーダーメイドの“いいとこどり”を目指し、自分や会社の強みを柔軟に発揮していく姿勢が必要です。
「現場オリエンテッド」「顧客志向」「データ活用」―そのバランスを意識しながら、次世代の優れたものづくり現場を一緒につくっていきましょう。
まとめ
量産品とオーダーメイドの生産体制は、それぞれに特徴と魅力を持っています。
現場での対応力や調達バイヤーのスキルも大きく異なるため、両者を正しく理解することが、自身のキャリアを高める近道です。
アナログからデジタル、量産から個別対応へと転換期を迎えているいまだからこそ、さまざまな視点を持ち続けることが大切です。
製造業で働くすべての方が、自身の現場や業務の“本当の強み”を再認識し、新たな時代の地平線を切り拓くことを期待しています。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)