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金属加工の基本構造を理解するための切削・研削・塑性加工の違い

目次
はじめに:なぜ金属加工の「基本構造」が重要なのか
金属加工という言葉は、製造業に携わる人なら誰もが耳にしたことがあるでしょう。
しかし、現場にいると「加工方法の違い」や「構造の根本的な理解」が曖昧なまま作業や管理をしているケースが少なくありません。
これは昭和から続くアナログな現場体質、経験主義の強さ、世代間の知識共有の不足にも起因しています。
しかし、デジタル化が進む現代の製造現場では、加工の選定や工程設計において知識のアップデートが強く求められています。
本記事では、バイヤー、サプライヤー、現場管理者の立場で特に重要な「切削」「研削」「塑性加工」という三つの基本加工法について、考え方と現場起点のポイントを掘り下げて解説します。
金属加工の全体像と三つの基本構造
金属加工とは、その名の通り金属の素材に対し、意図した形状や機能を持たせるための加工工程です。
数多くの加工方法のうち、代表的なものに「切削加工」「研削加工」「塑性加工」があります。
これらは現場での「比較」「選択」「工程設計」の基礎知識として、あらためて正確に理解しておく必要があります。
切削加工の特徴と現場での見極め方
切削加工は、刃物(バイトやドリル)を用いて、素材を削り取ることで目的の形状に仕上げる加工です。
旋盤、フライス盤、ボール盤などの工作機械が使われます。
切削は「材料を除去する」いわば引き算の加工と言え、ミクロン単位の寸法精度を求めることができるため、最終仕上げや高精度部品の工場で多用されます。
切削加工現場の「リアル」なメリット・デメリットは以下の通りです。
・材料ロスが多くなりやすい(歩留まり低下の要因)
・自由度が高い反面、加工時間・コストが増大しやすい
・工具の選択や適切な管理が品質・コストに直結
・切粉・油など副産物の処理負担が発生
現場では「短納期対応」と「コスト最適化」のジレンマにさらされます。
歩留まり改善や切削条件の最適化、設備・治工具の定期見直しを怠らないことが利益を生み出すカギです。
研削加工の特性と品質管理の要点
研削加工とは、一般に砥石を使って金属表面を少しずつ削り、極めて高い寸法精度や鏡面仕上げを狙う方法です。
切削加工後の仕上げや、焼入れ処理後の硬い部品の加工、円筒部品や平面の最終工程などで使われます。
現場で語られる研削加工の要点は次の通りです。
・ミクロン単位で加工面をコントロールできる
・焼入れ後も加工できるため、用途が広い
・加工熱による焼き戻りやひずみに注意が必要
・砥石やクーラントの管理が品質に直結する
管理職やバイヤーの観点からは、外注選定時の品質保証(研削焼け・寸法保証の有無)や、工程FMEAでのリスク洗い出しが常に現場課題となります。
研削加工は「高品質」が要求される工程であるため、自動ライン化や省人化を進めつつも、最終的には「熟練現場力」や設備投資のバランスを見極める能力が問われます。
塑性加工の原理とサプライチェーン最適化への影響
塑性加工は、外力を加えて金属素材を「変形」させ目的形状を作る加工です。
代表的なものに、プレス加工、鍛造、圧延、絞り加工などがあります。
素材内部で構造を組み替えて成形するため、切削や研削とはまったく異なる原理です。
現場目線で見た塑性加工のポイントは以下の通りです。
・材料歩留まりが高く、大量生産向き
・強度・靭性に優れた部品を得やすい
・金型費用・準備工程が大きく、少量生産には不向き
・ライン構築、工程設計、予防保全の重要性が大きい
バイヤーやコスト設計担当、サプライヤーの方には、「金型償却」「ロット最適化」「工程自動化の可否」といった視点が特に重要です。
金型の設計思想やメンテナンス、設備投資の回収シミュレーションなど、製造業DX時代のSCM(サプライチェーン・マネジメント)として大きなインパクトを持ちます。
業界の変化:アナログからデジタル、そして自動化へ
いまだに「ベテランの勘」や「小集団活動」を重視する現場が多い日本の金属加工業界。
ですが、グローバル競争とデジタル化の波は確実に現場を変えつつあります。
実際に、切削・研削・塑性加工各分野でも、以下のような変革が進んでいます。
・IoT化された工作機械や加工データの蓄積(工程ビッグデータ)
・自動化設備による省人化、ラインパッケージ化
・AIによる加工条件最適化や異常予知保全
・高度なシミュレーション技術での工程短縮
ただし、現場では「古い機械」の利用や「アナログ作業」の根強さもあり、最新技術と現場実態のギャップは依然として大きいのが実情です。
このギャップを埋めるには「基本構造の本質的な理解」と「現場から変えていく地道な努力」が不可欠です。
バイヤー・サプライヤーに必要な「見える化」思考と現場力
バイヤーとしての力量、あるいはサプライヤーとの良好な関係を築くには、金属加工の基本構造を理解しつつ、各工程の「何が強みで」「どこが課題になるか」を読み取る力が必要です。
例えば、
・切削がメインのサプライヤーに対しては、加工精度やリードタイム短縮への改善提案
・研削に強い外注先の場合、品質保証体制や工程能力指数の評価
・塑性加工を担うパートナー企業には、金型への投資回収スキームや量産変動リスクの議論
のように、「現場事情+業界動向」を踏まえたコミュニケーションが進むはずです。
サプライヤーの方が購買側の「この工程に何を期待し、何に困っているか」を理解できれば、提案力やパートナーシップに大きな差が生まれます。
まとめ:根本理解と現場思考で、金属加工の未来を切り開く
切削・研削・塑性加工は、金属加工の根幹をなす三つの基本です。
その違いと本質を現場起点で理解し、正しく使い分けていく姿勢こそが、日本のモノづくり、SCM革新を支える基盤となります。
また、昭和的なアナログ文化に留まらず、デジタル化や自動化の中で「基本構造」を学びなおすことこそ、製造業人材やサプライヤーとして生き抜く武器となります。
これからの時代、バイヤー・サプライヤー、技術者や現場リーダーが「工程選定」「コスト設計」「品質マネジメント」の土台を再確認し、業界の新たな地平線をともに切り開いていきましょう。
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