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設計者ごとの設計思想の違いが製品統一性を妨げる永遠の課題

目次
はじめに:設計思想の違いがもたらす現場の混乱
製造業の現場では、設計者によって生まれる「設計思想の違い」が、製品の統一性を妨げる根深い課題となっています。
実際に現場で長年働く中で、設計者ごとのこだわりやクセに由来する仕様の差異、不統一な部品指定、図面記載方法のばらつきに何度も頭を悩ませてきました。
この記事では、なぜ設計思想の違いが発生し、現場にどんな影響を及ぼすのか、その具体例や課題の本質を掘り下げていきます。
さらに、伝統的なアナログ文化が残る業界がどのようにこの問題と向き合うべきか、ラテラル思考を使って新たな打開策も模索します。
設計思想とは何か:見えない「設計者の個性」がもたらす影響
設計思想の定義とその背景
設計思想とは、設計者が「こういうものづくりをしたい」「自分はここを重視する」といった暗黙の信念や設計哲学です。
例えば、省コストを第一に考える人もいれば、堅牢性や安全性を最優先する設計者もいます。
または、過去の成功体験や所属部署の文化、出身メーカーの流儀、愛用するCADソフトのクセなど、設計思想の形成要因は多岐にわたります。
この設計思想が図面や仕様書ににじみ出ることで、同じ会社の同じ製品群でも「設計者AとBではまるで作りが違う」という事態が生まれます。
現場で良く起きる設計思想による差異の例
一つの製品に対して部品Aを「コスト重視で標準品でまとめる」設計者がいれば、「多少高くても信頼できるメーカー製を使う」設計者もいます。
表面処理の仕上げ一つ取っても、「美観優先」でこだわる人、「問題なければ簡易仕上げで充分」と判断する人がいます。
図面の寸法公差にしても、厳しい精度管理を求める設計者と、可能な限り公差を緩めて製造をしやすくする設計者に分かれることも珍しくありません。
設計思想の違いが製造現場・調達・生産管理にもたらす問題点
部品表(BOM)のバラつきと在庫管理リスク
設計思想の違いは部品表(BOM)にも如実に現れます。
設計者ごとに部品の選定基準やメーカー指定が異なるため、同じ機能・用途でも微妙に仕様が違う部品が混在します。
これが現場目線で大きな問題になります。
なぜなら品種ごとに部品在庫を個別管理する必要が出てきて、共通化によるコスト低減や在庫削減が進みません。
場合によっては、「似ているけど微妙に違う部品」の管理が煩雑になり、誤組付けや生産停止のリスクも高まります。
品質保証・クレーム対応の複雑化
統一性を欠く部品や設計は、トレーサビリティや品質保証の観点でも大きな課題です。
同じ型番・品番の製品でも、設計者の方針によって微妙に仕様が異なると、不具合が発生した時の原因究明や再発防止対策が困難になります。
「AラインとBラインで使われている部品が違った」など、納品後のクレーム対応でも現場が混乱するケースは後を絶ちません。
サプライヤーとのやり取りと納期リスクの増大
設計思想の違いは、調達・バイヤー部門にも影響します。
部品の標準化が進まず、サプライヤーごとの調達ルートが複数発生するため、発注業務や納期管理が煩雑になります。
サプライヤー側も「同じ会社なのに毎回仕様がバラバラ」「なぜこの部品だけ別品番なのかが分からない」と困惑することになります。
なぜ昭和的なアナログ文化が設計思想の個人差を強調しているのか
設計の「属人化」とベテランの暗黙知
日本の製造業、特に昭和から続くメーカー工場では、設計部門のベテランが持つノウハウや判断基準が「社内の暗黙知」になりやすい文化があります。
図面の描き方、部品の選定、設計上の注意点も本人にしか分からない経験則に頼る場面が多々ありました。
標準化・見える化の取り組みは進められるものの、実際の現場では「◯◯さん流」「△△係長流」の設計手法が根強く残っています。
設計ナレッジ共有の壁とアナログの限界
現場では設計ナレッジの形式知化がなかなか進みません。
紙の図面、メール、ファイルサーバー内のExcel管理など、電子化が進んでも設計者同士の「口伝」や「蛍光ペンの手書き指示」に頼る場面も多く見られます。
このアナログな情報伝達こそが、設計思想の属人化・非標準化を支える温床になっています。
設計思想の違いを乗り越えるための現場発の実践的アプローチ
設計標準化と部品共通化の新たな地平線
設計思想の違いによる課題を解決する第一歩は、「設計標準化」と「部品共通化」です。
しかし、紙の標準書を配布しただけでは意味がありません。
たとえば、製造現場に「部品選定ガイドブック」を置き、設計者が新規設計時に「標準部品から選ぶルール」を徹底させるような現場主導の活動が効果を発揮します。
現場から上がる「こっちの部品でも十分動く」「この方法の方が作りやすい」というリアルな声を設計部門と繰り返しディスカッションすることで、ようやく標準化が組織に根付いていきます。
このボトムアップの交流が設計思想の統一には不可欠です。
設計変更管理のデジタル化とプロセスの見える化
近年は図面管理システム(PDM/PLM)の導入やワークフローのデジタル化が進んでいます。
設計変更・部品選定の経緯をシステム上で「誰が・なぜ・どんな根拠で」決めたのか可視化することで、設計個人のクセや個性が記録され、後発の設計者やバイヤーにもノウハウが残せます。
たとえば設計レビューの内容は口頭だけで終わらせず、必ずデジタルファイルに記録・共有する仕組みを構築しましょう。
また、現場改善のカイゼン活動の一つとして、「設計思想の棚卸し会議」を持ち、設計手法のベストプラクティスをピックアップし形式知として全社で共有する取り組みも有効です。
現場意見を起点に、設計思想を進化させる
設計標準の策定やルールづくり自体も、現場の生産性や作りやすさ、調達・品質の観点を取り入れなければ形骸化します。
私が経験した現場でも、「作業者が作りやすい部品配置」「一目で合否判断できる図面記載方法」など、製造現場や調達部門からの意見反映で標準書がどんどん進化しました。
設計者・バイヤー・品質・生産管理・サプライヤーがワンチームとなって初めて、設計思想のギャップは縮まっていきます。
ラテラルシンキングで読み解く「設計思想の壁」を越える発想
“唯一解”を捨てて「多様性活用」に舵を切るべき時代
多様な価値観・方法論が共存する現代社会では、設計思想の違いそのものを「悪」とするのではなく「強み」と捉え、個々の良い点を組み合わせて最適化する発想も求められます。
たとえば、コスト重視の設計者と品質優先の設計者がペアになり、お互いの考えを擦り合わせて設計をブラッシュアップする「設計デュオ制」も効果のある手法です。
AIやデジタルツインによる設計思想の整理・最適化
近年注目されているAIやデジタルツイン技術は、「設計者ごとの癖やパターン」をシステム的に分析し、複数の設計思想パターンをシミュレーションから最適解を提案することができます。
これにより、「属人化された設計思想」も組織知として集積し、製品開発の統一性につなげることができます。
「現場起点」のカイゼンと「設計思想ステップレビュー」の新設
製造現場から設計部門へのフィードバックプロセスを定常化し、設計思想のすり合わせ工程を設けましょう。
たとえば「設計思想ステップレビュー」という新しい中間チェックを追加することで、設計者間、バイヤー含む関連部門間で違いをあらかじめ認識・調整できるフローが生まれます。
まとめ:現場・調達・設計をつなげて「新しい統一性」を創出しよう
設計者ごとに違う設計思想は、製品の統一性を妨げ、現場・調達・品質管理など多方面に課題をもたらします。
ですが、単なる「思想矯正」や「標準化の押し付け」では、現場の本質的な解決にはなりません。
現場・バイヤー・設計者・サプライヤーが本音で話し合い、「設計することの意味」「現場で作ること・管理することの現実」を擦り合わせながら、統一性ある“進化型標準”を創出しましょう。
昭和的なものづくり文化を未来に活かすためにも、ラテラル思考で本質的な価値追求、そして現場からのボトムアップカイゼンを推進することが、製造業の発展に欠かせません。
バイヤー志望者もサプライヤーも、ぜひ設計現場の“思想の奥深さ”を理解し、新たなものづくりの在り方を模索していきましょう。
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