調達購買アウトソーシング バナー

投稿日:2026年2月19日

地震対策の優先順位が拠点ごとに違う問題

はじめに

長年製造業の現場に身を置いてきた者として、地震対策の在り方については常に問題意識を持っています。
日本は世界有数の地震大国であり、製造現場も例外ではなく多大なリスクを抱えています。

しかし、現実には同じ企業グループ内であっても拠点ごとに地震対策の優先順位や内容にバラつきが生じているのが実態です。
この現象は決して個別の課題ではなく、今後の業界全体の発展やBCP(事業継続計画)強化のためにも本質的な解決が求められます。

本記事では、地震対策の優先順位が拠点ごとに異なる理由を現場目線で深掘りし、具体的な課題とその背景、アナログ業界ならではの構造問題、さらにこれからの地震対策の新たな視点と実践策を提案します。

製造業に従事する方々に、日常業務のなかで生かせる実践的なヒントをお届けできれば幸いです。

地震対策の優先順位が拠点によって異なる理由

1.「現場の感度」とリスク認識のギャップ

昭和の時代から続く日本の製造業では、各拠点の現場力やトップ判断、現場担当者の「肌感覚」をもとにした経営判断が根強く残っています。

たとえば、過去に大きな地震被害を経験した拠点では、工場長や現場管理者に「うちは絶対対策が必要だ」という危機意識が根付きやすい傾向があります。
反対に、地震被害の経験が乏しい拠点や、従業員の平均年齢が若く県外出身者が多い場合は、リスク認識が希薄になるケースが多いです。

また、本部主導のリスクマネジメント体制が不十分な場合、拠点ごとに「独自ルール」や「慣例」に頼る傾向に拍車がかかります。

2. 地域特性からくる優先度の違い

日本列島は地震多発帯に位置しますが、拠点の位置する地域によって「想定されるリスク」の重み付けは大きく異なります。

たとえば、震度6以上の地震が過去数十年発生していない地域と、南海トラフや首都直下地震が懸念されている地域では、自治体からの要請や設備強化に向けた補助金の有無も含めて対応に差が出やすいのです。

さらに、拠点周辺のインフラ状況、交通遮断リスク、川や海からの津波・浸水被害の程度にも微妙な違いが生じ、リスクアセスメントの結果もばらついてしまいます。

3. 設備・商品特性ごとの重要度の違い

例えば高精度な半導体や精密機器メーカーと、汎用的な部材や梱包資材メーカーでは、地震直後の逸失利益・信用毀損リスクの大きさが大きく異なります。

製造ラインが長期停止した際の損失額から逆算して対策投資額を決定する方式が一般的ですが、「現場ファースト」を標榜しながらも資金配分が本部・本社優位で一律な場合、どうしても現場の実情とのズレが生じます。

「コストセンターにして最小投資で済ませたい」という経営方針が根強い場合、結果的に優先順位が混在したままとなりやすいのです。

現場で見える“昭和型”アナログ対策の壁

拠点ごとの「昭和の成功体験」

長年その土地で操業してきた工場では、「大きな被害もなく乗り切ってきた」という成功体験が現場文化となっていることが多く見受けられます。

担当者の異動や組織改編によって「自分たちのやり方が一番安全」という思い込みが温存されると、最新の知見や本部指示が届きにくくなります。
いわゆる“現場至上主義”が足かせになるのです。

紙ベース・現物主義の”地震対策台帳”

多くの工場では、いまだに地震対策に関するデータ管理や点検記録が紙ベースで運用されています。
「定期的に現場を巡回して紙に記入する方式」が根強いため、他拠点と情報共有を図る手段に乏しいのです。

その結果「A工場では既に改修済みの設備が、B工場では未着手」という事態が起こっても、全社レベルで俯瞰できる体制が築かれません。

外部ベンダー依存と現場負担の増大

地震対策は専門性が高く、耐震工事や免震・制振装置の導入、ラインの再配置まで幅広い知識と実務経験が求められます。

近年は外部のコンサルタントや土木・建築ベンダーに一部をアウトソースする企業も増えましたが、やはり最終的には「現場主導で進めろ」というプレッシャーが残ります。

この結果、重要性に気付きながらも「人的リソース不足」や「業務負担の増大」が障壁となり、中途半端な対策のまま放置される傾向が出てきます。

地震対策を産業の原点から再考する

“標準化”と“自主性”のバランス

どんなに現場主義を大切にしても、地震という災害は人の経験や勘だけでは乗り越えられません。
産業全体として安全水準の下限を引き上げるには、全社標準の対策マニュアルやシステムを整備することが不可欠です。

ただ一方で、拠点ごとに「微妙に異なる固有リスク」や「地元サプライチェーンの事情」もあります。

本部一律押し付け型と現場独自対応の間の“隙間”を埋めるためには、定期的なクロスレビューと意見交換の場を設け、地震対策の取り組み自体を“自分ごと化”することが重要です。

デジタル化と「防災DX」の必要性

近年、製造業でもデジタルツールを活用した「防災DX」が注目されています。
例えば、各拠点の耐震工事進捗やリスク評価をクラウド管理することで、リアルタイムで全社的な可視化が可能になります。

また、地震・防災データをもとにした予測・シミュレーションを実施し、ライン停止時のサプライチェーン影響度や復旧手順を洗い出すことも可能です。

紙ベースの台帳管理から脱却し、自動通知・自動集計・自動分析を標準装備できれば、現場の“思い込み”や“個別判断”に頼る割合を大幅に減らせます。

バイヤー・サプライヤー視点で地震対策を捉える

調達サイドから見る地震対策の意義

バイヤーにとって、サプライヤー各社の災害リスク対策状況は取引継続の生命線です。

取引先のひとつの拠点が想定外のトラブルで長期停止した際、「なぜあのとき全体最適で対策できなかったのか」と頭を抱えることは少なくありません。
近年は大手企業がサプライチェーン全体にリスクマネジメントやBCP策定を義務化する動きも活発化しています。

調達担当者としては「自社拠点だけではなく取引先のレベルまで包含した地震対策マップ」を構築し、全体最適の観点で優先順位付けを推進できる人材が強く求められています。

サプライヤー視点とバイヤーの真意

サプライヤーの立場からすれば、地震対策のコスト負担や業務負担は切実です。
しかし、重要顧客から「この拠点のBCP対策はどうなっているのか」と厳しく問われた時、単なる「施工実績」や「点検記録」ではバイヤーの信頼を勝ち取れません。

大切なのは、「なぜ自工場だけで守ればよいと考えるのか」ではなく、「サプライチェーン全体の価値を守る」という視点に立つことです。

バイヤーが本当に求めているのは、拠点間の対策ギャップを解消し、万が一の際も柔軟なバックアップ体制が構築されていること。
「お客様に迷惑をかけない」ための戦略的防災対応が、今後のサプライヤー評価の中心となります。

地震対策の新たな地平線へ ―実践的アクションプラン―

拠点間連携の「KPI化」とインセンティブ設計

拠点ごとに異なる優先度を「自助努力」として放置するのではなく、全社共通の地震対策KPI(重要業績評価指標)を設定することが極めて重要です。

例えば、「拠点BCPレベル認証」「耐震化進捗率」「緊急訓練参加率」など、数値で実行度合いを管理し、それぞれの進捗に応じて現場評価や報奨制度にリンクさせます。

現場同士の“お互い様意識”を高めることが、組織的な対策強化の原動力となるでしょう。

「三現主義×データドリブン」のハイブリッドアプローチ

昭和の現場力で培われた“三現主義(現場・現物・現実)”は依然として大きな価値を持っています。
しかしそれを“経験と勘”だけに頼る時代は終わり、新たにデータ分析やシミュレーションと融合させることが求められます。

各拠点の被災シナリオを“見える化”し、モノ・ヒト・情報すべての動きを即座に可視化できる基盤を整備しましょう。

“現場の声”と“経営判断”のギャップ解消

現場担当者が地震対策を“自分ごと”と感じ、かつ経営層が十分なリソースを投入できるよう、現場発の提案活動や水平展開の仕組みを整えることが肝要です。

たとえば全社横断型の地震対策プロジェクトの立ち上げや、拠点横断ミーティングでの知見共有、課題報告会の定期開催などが効果的です。

業界的に「トップダウン」と「ボトムアップ」の両輪がうまく噛み合った時、真のリスクマネジメントが実現するでしょう。

まとめ ― 昭和の常識を超えて

地震対策の優先順位が拠点ごとに異なる理由は、地理的リスク・現場風土・経営判断・アナログ文化といった多面的な要因が絡み合っています。

しかし昭和時代の成功体験や現場力のみに頼ったやり方では、これからのカーボンニュートラルやサプライチェーンリスクの時代には対応しきれません。

「全体最適」を目指す視点で、拠点間・バイヤーとサプライヤー間の壁を越え、“現場主義×データ主導”の新しい地震対策モデルを一緒に構築していきましょう。

製造業に携わる皆様、現場から新たな常識を創造し、産業全体の安全と持続的成長を目指す実践者となることを願っています。

調達購買アウトソーシング

調達購買アウトソーシング

調達が回らない、手が足りない。
その悩みを、外部リソースで“今すぐ解消“しませんか。
サプライヤー調査から見積・納期・品質管理まで一括支援します。

対応範囲を確認する

OEM/ODM 生産委託

アイデアはある。作れる工場が見つからない。
試作1個から量産まで、加工条件に合わせて最適提案します。
短納期・高精度案件もご相談ください。

加工可否を相談する

NEWJI DX

現場のExcel・紙・属人化を、止めずに改善。業務効率化・自動化・AI化まで一気通貫で設計します。
まずは課題整理からお任せください。

DXプランを見る

受発注AIエージェント

受発注が増えるほど、入力・確認・催促が重くなる。
受発注管理を“仕組み化“して、ミスと工数を削減しませんか。
見積・発注・納期まで一元管理できます。

機能を確認する

You cannot copy content of this page