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多頻度納入の柔軟性が低い仕入先との調整難航問題

目次
はじめに:多頻度納入が製造業を変える理由
多頻度納入とは、部品や資材を一度に大量納入するのではなく、日々必要な量だけをこまめに納入する調達手法です。
トヨタ生産方式の「ジャストインタイム」に代表されるように、在庫を抑えて無駄を排除し、柔軟性と効率性を高めるための要です。
現代の製造業では、コスト競争力と生産リードタイム短縮の両立のため、多頻度納入へのシフトが進んでいます。
一方で、今も多くのサプライヤーが「まとめ納入」や「週1回納入」など昭和型のアナログ納入体制から脱却しきれていません。
バイヤー(調達担当者)は、柔軟な納入体制へ切り替えを要請しますが、現場での調整は難航しがちです。
この記事では、なぜ多頻度納入の調整が困難なのか、その根本理由と調達購買・品質管理・生産管理、サプライヤーそれぞれの視点から課題と対策を解説します。
多頻度納入のメリットと期待される効果
バイヤー視点:在庫削減と現場効率化
多頻度納入の最大のメリットは、工場内の在庫量を最小限に抑え、倉庫スペースや投下資本の削減につながる点です。
また、納入頻度が増すことで部品の鮮度が高まり、不良やロスの発見が早まります。
生産変動にも迅速に対応できるため、現場の無駄が減り、トータルコストダウンと現場効率化を両立できます。
サプライヤー視点:受注のチャンスとリスク低減
多頻度納入に対応できるサプライヤーは、差別化要素となり、長期的なパートナー関係を築くことができます。
また、最終需要の変化に素早く対応でき、納入後の在庫リスク(返品・廃棄等)を減らせます。
一方で、多頻度化により配送・梱包コストや納入業務の工数が増えるため、現場のオペレーション改革が求められます。
多頻度納入実現を阻むアナログな壁
昭和型体質が根強く残る理由
多くの中小サプライヤーでは、従来の「大量一括納入」モデルが根強く残っています。
理由は、①工場レイアウトや作業体制がバラ積み・まとめ納入前提で設計されている、
②IT化・自動化が進まず、納入指示もFAXや電話中心、
③コスト意識より「昔からのやり方」重視—といったヒューマンファクターが絡んでいます。
バイヤーが月次や週次で細かな納入スケジュールの見直しを要求しても、「そんなに小口で運べない」「帳票の処理やピッキング作業が増えて残業が常態化する」と現場から大きな抵抗に合うのが現状です。
デジタル化・自動化の遅れが足かせに
発注から納入までのやり取りが未だにエクセル・紙伝票・手書き伝票といった組織も少なくありません。
輸送や物流手配も属人的で、棚卸しの管理も年1回の手作業というのが実情です。
多頻度納入には、ミスを許さないリアルタイムの需給情報管理と現場自動化が不可欠ですが、その基盤整備は大きく遅れています。
現場で起こる典型的な調整難航シナリオ
発注側(バイヤー)の苦悩
例えば、装置部品を内製+複数外注の混合で調達している場合、完成品1台分ごとにバラバラに部品が届くと、仕分け・検品・組立工数が跳ね上がります。
多頻度納入を要求しても、サプライヤー側が「まとめ納入でお願いします」と拒否し、最終的には在庫負担や現場の手間がバイヤー側にしわ寄せされがちです。
また、急な顧客仕様変更で部品の品番入れ替えが必要になった場合、従来型納入では「既に出荷済みなので止められない」「在庫は返却不可」とイニシアチブを発揮できない悩みを抱えます。
供給側(サプライヤー)のジレンマ
一方のサプライヤーでも、「納入頻度が上がる=配送と検品の負担増」と直結します。
とくに人手不足の今、小口納入への切替えは、長年働く作業者の「現状維持バイアス」とも激しく衝突します。
さらに、物流費の削減要求・物流業者の値上げ・人件費高騰が圧力となり、多頻度納入に消極的になる傾向が加速しています。
その結果、「できるだけまとめて一括で送る」柔軟性の低い納入体制から抜け出せないのです。
業界動向:なぜ今こそ柔軟性が求められるのか
サプライチェーン分断リスクの顕在化
コロナ禍やウクライナ危機などの影響で、サプライチェーンの分断リスクが広く認識されました。
部材納期の乱高下や港湾・物流網の滞留が常態化する中、計画通りに部品が入らない事態への備えとして「多頻度・小口分納」の必要性は高まっています。
働き方改革・省人化の流れ
24時間稼働の巨大工場でも、現場作業者の高齢化や人員削減が進んでいます。
物流負荷のピーク平準化や納入リードタイムの短縮は、働き方改革と省人化を両立させるカギです。
多頻度納入こそが、現場変動に瞬時に適応できる組織力強化の起点となります。
課題克服に向けた具体的アプローチ
1. EDI・自動発注システムの導入
発注から納品、検品までをできるだけ自動化し、属人的な調整・帳票対応を排除することが第一歩です。
クラウド型サプライヤーポータルを導入し、発注・出荷・納品・請求情報の一元管理を可能にすることで、多頻度納入の工数負荷は劇的に下げられます。
2. 工程・在庫管理の標準化
工場内での部品受入、仕分け、棚入れ、追跡管理の仕組みを標準化・自動化することで、小口納入でも現場混乱が起きません。
RFIDやバーコード管理、AGV(無人搬送車)、WMS(倉庫管理システム)の活用が効果的です。
3. 物流・配送の共同化・外注化
サプライヤー単独では物流効率化が難しい場合、複数社での共同配送や3PL(サードパーティ・ロジスティクス)事業者の活用も有効です。
週次・日次のルート便設定やデポ(中継拠点)設置で小口化コストを吸収できます。
4. コミュニケーションとインセンティブ設計
現場作業者やサプライヤー責任者に、なぜ多頻度納入が不可欠なのか背景と目的を丁寧に伝えましょう。
さらに、納入頻度変更や納入体制改善に関しては、物流費支援・単価調整・サプライヤー表彰制度といったインセンティブ設計が納入先の行動変容を促進します。
現場目線で語る、「理想」と「現実」のギャップ
現場に根付いた体質や論理には、トップダウンの号令だけでは解決できない根深さがあります。
物流拠点の立地や工場レイアウト、現場作業者の経験則、情報システムの古さ、協力会社の組織風土。
これらが複雑に絡み合い、多頻度納入化を阻む「見えない壁」となっています。
しかし、現場の声をよく聴くと「部分的な自動化なら受け入れ可能」「在庫の見える化なら効率化できる」といった前向きな提案の芽も少なくありません。
重要なのは、「全てを一気に変える」発想ではなく、現場が納得しやすい小さな改善から着手し、徐々に多頻度納入のメリットを“体験”してもらう仕掛け作りです。
まとめ:脱・昭和型調達で次世代サプライチェーンへ
多頻度納入の柔軟性が低い仕入先との調整難航は、単なる納入方法の変更にとどまらず、サプライチェーン全体の競争力向上に直結する本質的テーマです。
調達購買・生産管理・品質管理いずれの現場も、旧来の“まとめ納入”から脱却し、「変化に強い」オペレーションへ移行できるかが、今後の企業存続を決めます。
バイヤー、サプライヤー双方がなぜ柔軟性が必要なのかを現場のリアルに根差して議論し、部分的なシステム化・物流共同化・現場教育の三位一体で着実に前進することが重要です。
新たな地平線は、旧来の常識を疑う現場の小さなチャレンジから拓かれます。
製造業に関わるすべての方が、変化を恐れず、多頻度納入の進化に前向きに取り組んでいくことを切に願います。
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