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投稿日:2026年1月31日

人的資本経営を現場に納得させる説明の難しさ

はじめに ― 人的資本経営という新潮流

人的資本経営は近年、経営者や人事部門だけでなく、現場で働く全ての製造業従事者にとっても無視できないキーワードになりつつあります。
製造業は「人」「物」「金」「情報」といった経営資源すべてを使いこなしてきた歴史があり、中でも「人材活用」については常に議論がありました。
しかし、人的資本経営という言葉が登場したことで、それが経営理念レベルに昇華し、今や“人をどう活かすか”が財務にも直結する企業価値の根幹になりつつあります。

現場に根付いた旧来型の価値観、昭和的なマネジメントが根強く残る中、人的資本経営を現場にどう説明し、どのように納得してもらうかは、管理職やバイヤー、そしてサプライヤーにとって極めてチャレンジングな課題です。

人的資本経営とは何か ― “人”が資本になる時代へ

人的資本経営の定義と製造業へのインパクト

人的資本経営とは、従業員一人ひとりの能力、経験、アイデア、情熱といった“目に見えない価値”そのものを資本とみなし、それを計画的・戦略的に最大化して企業価値向上につなげる考え方です。
欧米では“Human Capital Management”として長く議論されてきましたが、日本では2020年代に入り、ESG投資の流れや働き方改革、DX推進といった時代背景とともに急速に注目されるようになりました。

製造業においては、ハード(設備)やノウハウが重視される伝統がありましたが、人的資本経営の波は確実に押し寄せてきています。
現場の力がそのまま製品力や競争力に結びつくため、作業の自動化が進んでも、現場オペレーター、管理職、購買担当など“人の質”がこれまで以上に差別化要因となっている現実を無視できなくなっています。

人的資本経営の3つの柱

人的資本経営を本質的に理解するには、以下の3つの柱を認識することが重要です。

1. 人の成長を投資と捉えて最大化する
2. 多様性(ダイバーシティ)を尊重し組織のレジリエンスを高める
3. 人材データの可視化とビジネス意思決定への活用

これらはいずれも従来の“一律教育”“年功序列”“暗黙知重視”から大きく舵を切るものです。

なぜ現場は人的資本経営を“他人事”に感じるのか

現場特有の価値観と“昭和型”成功体験

製造業の現場には、「とにかく現場が回るように」「失敗せず安全に」「決められた手順を守ることが第一」という価値観が強く根付いています。
これは長年の経験から培った「暗黙知」とも言い換えられ、日本のものづくりの強さの源泉でした。

一方で、人的資本経営的な視点、「一人ひとりのアイデアや工夫を全社資産として活かそう」「組織全体で育成しよう」という話は、“理想論”や“上層部のきれいごと”として受け止められがちです。
かつて、高度経済成長期やバブル期は、現場をしっかり固め、ルール厳守で継続的に業績を伸ばしていました。
その成功体験が、逆説的に新しい経営スタイルへの懐疑心を呼び起こしているのです。

具体性と“わかりやすさ”の壁

現場で働く作業者や現場リーダーにとって、「人的資本経営」や「人的資本の情報開示」といったワードは、どうしても抽象的に聞こえます。
「結局、自分たちの何が評価されるのか」「今までとの違いは?」「仕事が増えるのでは?」など、疑問や警戒心が先に立ちます。
また、日本の現場では、“評価が見えないものが嫌われる”という文化も強く、どうしても「やらされ感」につながりやすいのです。

現場を納得させるための3つの具体的アプローチ

1. “成功事例”の可視化と共有

現場で活躍するベテラン作業者が、自分の経験や工夫、技能伝承が全社で評価されている。
若手が提案した改善活動が会社のコスト削減につながり、ちゃんとキャリアアップにも反映される。
こうした“具体的なストーリー”を、映像や記事、社内勉強会などでみんなに伝えることが不可欠です。

現場にとって、周囲の仲間が評価され、成長している姿を見ることが最も「納得感」を生みます。
“人的資本経営=他人事”が、“人的資本経営=自分ゴト”に転換するきっかけにもなり得ます。

2. 数値化できる指標を使って納得性を高める

従来のKPIは、部品の不良率やリードタイムなど、わかりやすい「現場指標」でした。
人的資本経営でも「改善提案件数」「スキル認定取得率」「社内・社外の研修参加率」など、分かりやすくかつ継続的に確認できる指標を設けることで現場の納得感を得られます。

例えば「改善活動に1件参加したら200円の報酬」「資格取得ごとにキャリアが1段上がる」といった具体的なインセンティブを交えるのも効果的です。
「頑張ればどこが評価されるのか」が現場目線で分かる状態を作りましょう。

3. “経営への橋渡し”役を現場に設ける

人的資本経営を現場が自分ゴト化するには、「推進担当」だけでなく、現場内のキーパーソンやリーダーがブリッジ役として機能する体制が望ましいです。
例えば、現場リーダーが「現場で出たアイデアや改善活動の効果」を経営層にレポートしたり、逆に経営側から「人的資本経営を通じて現場に還元した情報」を定期的に発信したりする流れを作るのです。

この“現場⇄経営”の往復運動が、徐々に現場の共感や主体性を醸成します。

バイヤーやサプライヤー(供給者)視点の人的資本経営

調達・購買部門では“取引先の人的資本力”が見られている

今や、大手メーカーではサプライヤーの選定にあたり、品質や納期、コストだけでなく、「人的資本」への取り組みも重視しはじめています。
例えば、「従業員の資格取得支援」「多様性推進」「技能伝承の仕組みがあるか」「現場従業員の定着率」といった観点です。

調達・購買部門のバイヤーは、最終的には自社製品の品質やSDGs対応、サプライチェーン全体の安定性を重視します。
サプライヤーにとっても人的資本経営は「新しい選ばれる要素」となり、単なる“現場の教育活動”ではなく、取引機会の拡大や競争力強化につながるのです。

サプライヤー側から見るバイヤーの関心

サプライヤーの皆さんから見れば、バイヤー側が何を考えているのかが気になるはずです。
ポイントは“人を大事にしている会社は、変化に強く事故が少ない”とバイヤーが認識し始めている点です。
例えば急なトラブル時に、「現場リーダーがしっかり育っている」「情報共有がスムーズで属人化していない」「若手が意欲的で離職も少ない」といった会社は“安心して任せられるサプライヤー”として高く評価されます。

人的資本への投資や情報発信を通じて、「人に強みがある会社」というブランディングそのものが選定基準になってきているのです。

“昭和型アナログ現場”からの脱却はどう進めれば良いのか?

“個人技”のチカラを“仕組み”に変える

長年の現場では、「ベテランの暗黙知」「匠の技」「根性と人間関係」といった、数値化しにくい“個人技”こそが組織の力でした。
これからは、それらを「可視化」「仕組み化」し、全社資産にする方向に舵を切る必要があります。
古き良き現場文化を否定するのではなく、例えば「OJTの標準化」「ベテラン作業者による動画マニュアルの作成」「進捗や改善活動のデジタル記録」といった共通言語化を図りましょう。

情報共有と心理的安全性の両輪を整える

人的資本経営の根底には、「現場ひとり一人が意見を出していい」「改善提案が下から上に通る」「失敗しても“育つ”機会とみなされる」組織風土があります。
現場同士がお互いの仕事を理解し、専用のSNSや朝礼ボードなどデジタルとアナログを組み合わせて「情報が全員に届く仕組み」を整備しましょう。
同時に、「誰もが発信できる」「否定されない」場づくりを目指すことも重要です。

まとめ ― 共感なくして人的資本経営は根付かない

人的資本経営を現場に浸透させるには、単なるトップダウンでは限界があります。
現場にとって「なぜ必要か」「自分たちの何が評価されるのか」「自分たちの会社がどう良くなるのか」、この3つを現場言葉で、成功事例や数値を用いて、愚直に伝え続けることが重要です。

アナログ文化が強い製造現場だからこそ、「納得」というステップを外しての改革は成立しません。
昭和の良さを現代に活かし、誰もが誇れるものづくり現場を次世代につなげる――そのためにも、人的資本経営という“新しい共通言語”を現場とともにじっくり熟成させていきましょう。

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