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外為通関データ連携で輸入リードタイムを7日短縮した国際調達デジタル化

目次
はじめに:製造業における国際調達の現状と課題
製造業のグローバル化が進む中、原材料や部品の調達ルートはますます多様化しています。
しかし一方で、いまだに「アナログな輸入手続き」が多くの企業現場に根強く残っています。
手作業で進める輸入申請や、煩雑な書類管理、調達部門からの現地進捗確認——。
こうした工程に起因する「リードタイムの長期化」は、多くの現場担当者の頭を悩ませています。
本記事では、20年以上製造業の現場で調達・生産・品質管理に携わってきた経験をもとに、「外為通関データ連携のデジタル化」による輸入リードタイムの短縮事例を分かりやすく解説します。
実践的な視点から、アナログ業務が根強い製造業において、どのように業務改革への一歩を踏み出すべきかについても考察します。
外為通関の基本と、アナログ現場での“落とし穴”
外為通関のプロセス全体像
国際調達においては、輸出側拠点からの出荷→船積み→通関(現地・日本)→国内配送という一連の流れがあります。
この中で最もボトルネックとなりやすいのが、「現地からの輸出許可」「国内での輸入通関」です。
通関業務には、下記のような多くの書類やデータが必要になります。
– インボイスやパッキングリスト、B/L(船荷証券)
– 原産地証明書
– 各種関税情報、輸入許可証
多くの現場では、これら書類の取得・確認・転送を「メール」や「紙」で行っています。
結果として、1件の調達品ごとに数日〜1週間、場合によっては人員の手待ち時間が発生し、工程全体のリードタイムが大幅に延びてしまいます。
アナログ業務がもたらす“昭和の非効率”
特に、昭和から続く製造業の多くは、「前例踏襲」「紙文化」が色濃く残ります。
– 書類はすべて印刷して押印
– 各部担当者が手作業で内容をチェック
– 照合した内容をまたメールやFAXでやりとり
ITシステムが部分的に導入されていても、実際には「人手がつなぐライン作業」が業務の根本にあり、データの再入力や転記ミス、対応漏れが頻発します。
現場としては、「早くIT化したい、でも過去のやり方を否定できない」「トラブルを避けるためについ人に頼る」――このような“ジレンマ”が随所に現れます。
“外為通関データ連携”で7日短縮したデジタル化事例
データ連携のポイント
今回、実際の案件でリードタイム短縮に寄与したのは「外為(外国為替)取引」「現地–日本間の通関データ連携」のデジタル化です。
従来は、輸出国での出荷案内→現地フォワーダーが書類作成→指定メールで添付送信→日本側商社・通関業者で転記、手作業による再確認、というフローでした。
これを下記のようにデジタル化しました。
– 輸出元の現地サプライヤーがデータを直接指定のクラウド(EDI等)にアップロード
– 通関に必要なデータフォーマットで、自動転送・自動照合
– 輸入側システムがリアルタイムで検知・ダウンロード・社内管理システムへ自動登録
これによって、メール添付データの先回り入力や手作業転記、現地とのやりとりにかかる「待ち日数」が激減しました。
リードタイム短縮の“実際”
実際、どのような効果が生まれたのかを具体的なプロセスで見ていきましょう。
– “現地出荷通知→必要書類送付”のタイムラグ 平均3日 → 0日に
– “書類内容の確認・照合”の工程遅れ 平均1日 → 自動照合でほぼゼロ
– “通関申請~許可”までのトータルリードタイム 従来10日 → 3日
これにより、全体の輸入リードタイムが平均7日短縮されました。
これは、繁忙期や部品需給ひっ迫の時期において、調達現場の“ボトルネック”解消につながる革新的な削減効果といえるでしょう。
改革成功のカギは「現場・管理部門の協働」と「納得感」
現場へのIT導入には“腹落ち”が不可欠
システム導入やデジタル化は「経営判断」としてトップダウンで進む場合が多いものです。
しかし、実際に書類やデータを日々扱っている現場担当者の“肌感”を無視すると、定着せず、結局は“人がやったほうが早い”という逆戻りも起きがちです。
成功のポイントは次の2点です。
1. デジタル化による「無駄取り」「時短」の具体的なメリットを、現場の言葉で伝える
2. 試行導入期間を設け、担当者の声をシステム側がしっかり吸い上げる
実際、私の工場でも最初は「業者との連携が面倒」「新しい操作を覚える暇がない」という反発もありました。
しかし「転記作業や書類回付から解放される」「確認業務にかかる残業が減る」といった“実益”が目に見えてくると、空気は一変しました。
ベテラン・若手それぞれの“納得感”が大切
昭和世代のベテランには、“失敗しないための保守的手順”への信頼感があります。
新しいことに頼るリスクを恐れるのは当然です。
一方、デジタルネイティブの若手は、「無駄な作業がない=合理的」と考える傾向が強いです。
このギャップを埋めるカギは、「小さな成功体験の積み重ね」と、「現場で実感できるアウトカムの可視化」です。
実際にリードタイム短縮や手作業削減が起きたプロセスを、職場単位で“見える化”し、ベテランが自分の目で納得できるボトムアップを大切にしました。
調達バイヤー・サプライヤー双方の“新しい地平線”
バイヤーに必要な視点:「全体最適」と「現場起点の発想」
グローバル化による案件規模の拡大や、多様化するサプライヤーネットワークでは、バイヤーには変革マインドが必須となります。
「より安く、より確実に」だけでなく、現地–日本間のデータ連携やコミュニケーションプロセスを設計し直し、「現場の手間・時間を減らす」ことこそがこれからの国際調達には欠かせません。
– 現場の手入力を、サプライヤーの出荷システムと直結させる
– 通関書類のアップロードを自動化し、ヒューマンエラーを減らす
– 状況進捗をリアルタイムに“見える化”して、手戻りや属人化をなくす
バイヤーがこうした“全体最適”の視点を持ち、現場とIT、経営をつなぐハブとなることが不可欠です。
サプライヤー視点:「バイヤーの“困りごと”を解決する提案力」
イニシアチブを握る大手バイヤーにとって、受身なサプライヤー対応は選定対象から外れやすくなってきています。
自社のアピールポイントとして、次のような施策を提案できることが“差別化”につながります。
– 通関書類をシステム・EDIで事前に一括送信できる体制
– トレース可能なデータ連携(追跡番号・ステータス共有)
– ミスや遅延を減らすための、自社業務改善への取り組み
このような姿勢を見せることで、バイヤー側の「情報を待たされる不安」「書類ミスで再申請」というリスクを減らし、有力なパートナーとして認知を得ることができます。
まとめ:地道な“現場改革”こそが日本の製造業を変える
まだまだ「紙とハンコ」「手作業での確認」が残る日本の製造業ですが、現場をサポートするITの使い方次第で、国際調達でも大きなリードタイム短縮と生産性向上が実現できます。
外為通関データ連携のような地味な業務工程こそ、実は競争力の源泉です。
「現場・管理・経営」の三位一体で、納得感のあるプロセス改革を進めていきましょう。
昭和型のアナログ業務に新しい風を吹かせ、製造業の生産現場とサプライチェーンの未来を、一緒に切り開いていきたいと強く願っています。
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