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品質不良の原因を見つけた瞬間に別の不良が出て絶望する量産現場

品質不良の原因を見つけた瞬間に別の不良が出て絶望する量産現場
はじめに
製造業の量産現場において、「不良の原因をついに突き止めた!」と安堵した瞬間に、まったく別の新たな不良が発生して現場が絶望的な雰囲気になる——。
この苦い経験は、現場で日々戦う方々なら一度は経験したことがあるのではないでしょうか。
品質不良は製造現場において避けられない課題ですが、なぜその解決がこうも難しいのでしょうか。
本記事では、昭和のアナログ時代から現代に至る日本の製造業で根深く続く課題に焦点を当て、業界動向や現場目線の実例、さらにサプライヤーとバイヤーの関係性にもラテラルな視点で迫ります。
品質不良が量産現場を蝕む根本的な理由
品質不良が量産現場からなくならない理由はいくつもありますが、最大の理由は「現場が複雑に絡み合っている」ことです。
工程が多岐にわたり、それぞれの工程でさまざまな要因が作用しています。
検査工程で発見される不良も、実際には前段の工程で生み出されている場合も珍しくありません。
特に昭和時代から続く日本の現場では、手作業や経験値に頼る「暗黙知」が今も根強く残っています。
紙の帳票や手書きの記録、現場リーダーの勘頼みの判断もまだまだ現役です。
このアナログな文化は一見、現場の融通性や柔軟さをもたらしますが、不良の根本解決という点では大きな障害となっています。
原因究明の落とし穴:一点集中型の罠
現場で品質問題が発生したとき、多くの場合、その不良現象の直接の原因を探って対策を講じます。
しかし実際には、同じ工程や設備、あるいは人員によって「連鎖的に」別の不良が発生することが多いのです。
例えば、あるプレス工程でバリ(鋭角な余分部分)が発生していたため、金型の調整を行い一時的に改善したとします。
ところが、バリが取れて安心したのも束の間、その後は「寸法不良」が多発するという現象。
これは、バリ取りのための調整が別の要素(押さえ圧や材料の変形)に影響し、新たな問題を呼び込むパターンです。
この一点集中型の対策は「目の前の火を消す」だけで、現場の本質的なメカニズムにはなかなかメスが入りません。
まさにこれが、「原因がわかった!直った!」と現場が喜んだ直後に別の絶望が生まれる構造的な要因なのです。
工場の自動化で見えてきた新たな課題
近年、製造業ではデジタル化や自動化が急速に進んでいます。
IoTやAIを活用した品質管理システムが導入され、異常検知やデータ蓄積が容易になりました。
これにより目に見える品質不良の検出スピードは飛躍的に高まりました。
しかし、現場を取材すると「データはあるが、原因が複雑化して余計に迷宮入りした」という新たな苦しみの声も聞かれます。
自動化されたラインは、人為的なミスを減らして精度を上げるものの、設定ミスやソフトウェアのバージョン違い、センサーの一時的な誤作動といった「デジタルならではの不具合」が追加されます。
こうした「隠れた不良」が現場担当者の直感や五感では発見しづらくなり、「何が起きているのかわからない」という新種の絶望が現れます。
バイヤーとサプライヤー、双方の立場から見る現場の現実
調達・購買のバイヤーにとって、品質不良はコストや納期、信頼に直結する重大問題です。
「どんなに安い商材でも、不良が出ればすべてが台無しになる」という厳しい目でサプライヤーを評価します。
一方で、サプライヤーの立場としては「数千個、数万個というロットでわずか数個の不良品が出ただけで…」というジレンマが生まれます。
特に量産の世界では、不良品がゼロになることはまずありません。
バイヤー側が“品質ゼロディフェクト”を求める背景には、自社の市場競争力や最終ユーザーへの信頼維持といった事情があります。
しかし、これを「現場任せ」「品質はサプライヤー側だけで担保」と捉えると、実効性のある不良対策にはつながりません。
ここに必要なのは、「共創型」の品質保証体制です。
お互いの現場を知り、実際にどこでどんな要因が不良につながっているかを共に洗い出す姿勢こそが、日本のものづくり復活の鍵になるでしょう。
現場目線で考える:本当の原因追及のコツ
数えきれないほどの不良対策プロジェクトを経験してきた私から見ると、「真の原因究明」にはいくつかの重要なポイントが存在します。
1. 不良が発生する“前後”にも視野を広げる
2. データ(数値)と現場の実感(肌感覚)の両方をすり合わせる
3. “ヒト・モノ・カネ”の三要素をフラットに疑い、仮設を立て続ける
特に現代では、ラインの自動化やデジタル記録が増えていますが、“記録されない領域”に不良の種が残っていることが極めて多いのです。
例えば、夜勤シフトと日勤シフトで微妙に作業方法が違っていたとか、材料ロットの切り替えでサプライヤーが変更されている期間に不良が増えた、など。
単純なロジックツリーやなぜなぜ分析だけでなく、“現場を歩く”ことと“現象に物語性を与える”記述がとても重要になります。
昭和から脱却できないアナログ文化の光と影
日本の製造業現場には、昭和から続く“職人の勘と経験”の文化が今も根強く残っています。
ベテラン作業員の一声や、“いつもと違う”という微妙な変化を感じ取る力は、AIやシステムではフォローできません。
しかし、その半面、こうした暗黙知に頼り過ぎると、本人不在時には再現性が落ち、現場リーダーの退職や部署異動でノウハウが断絶します。
本当に求められるのは、「勘と経験を体系立てて見える化し、デジタルの強みと融合する」ことです。
紙の帳票を単なる電子化するのではなく、現場語りでしか伝わらない小さな気付きや逸話も記録に盛り込む。
こうした“アナログの光”を生かしながら、テクノロジー導入で“アナログの影”も克服する、二兎を追う戦略が現場の不良ゼロ化には不可欠と言えるでしょう。
絶望から「進化」へ——現場が学びを得るために必要なこと
不良原因がやっと見つかった直後に別の不良が発生する——この絶望を毎回単なる失敗と捉えるのではなく、“現場進化”の糧とする考え方が大切です。
そのためには、
・不良の発生プロセスを可視化しておく
・「不良の連鎖」を前提に仮説を複数立てておく
・サプライヤー、バイヤー双方で“なぜ発生したか”を一緒に徹底議論する
・現場の小さな変化や違和感をデータ化して記録し、異常値扱いせず「観察記録」として残す
こうした地道な積み上げが、次の不良予備軍の早期検知と、現場での“セカンド・サードインパクト”の芽を摘むためのカギになります。
まとめ:製造現場は「不良と成長のサイクル」で進化する
製造現場で「一つの不良を直したら、また次の別な不良が湧いてきた」という絶望に直面したベテランも多いことでしょう。
しかしこれは、日本のものづくり現場が進化する過程で避けては通れない道です。
不良完全ゼロを目指すのではなく、常に「進化し続ける現場」を目指していく。
アナログとデジタル、勘とデータの橋渡し。
そしてバイヤーとサプライヤーの垣根を越え、現場の対等なパートナーとして共に課題解決に取り組む。
この積み重ねこそが、日本のものづくりの未来を担う最大の原動力になるのではないでしょうか。
量産現場の絶望を、現場の成長と進化のチャンスに変えていきましょう。
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