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標準化活動に消極的なサプライヤーへの不満点

目次
はじめに:製造業における標準化の重要性
製造業の現場において「標準化活動」は競争力を高め、品質や納期、コストパフォーマンスを保つための根幹といえます。
しかし、バイヤーの立場から長年サプライヤーと向き合ってきた経験から言えるのは「標準化活動への消極的なサプライヤー」への不満や懸念が思いのほか根深いという点です。
本記事では、昭和時代から続くアナログな商習慣が多く残る業界の特性にも触れつつ、「なぜサプライヤーは標準化へ消極的なのか」「その結果バイヤーや現場が直面する課題は何か」「今後どのように変わるべきか」について、管理職経験を踏まえ現場目線で掘り下げます。
バイヤーを目指す方、サプライヤーの立場でバイヤー心理を学びたい方には必ず役立つ内容となっています。
サプライヤーが標準化活動に消極的な主な理由
1. 昭和から続く属人的な仕事の流儀
多くのサプライヤー企業では、創業者やベテラン職人の「勘と経験」に重きを置いた工場運営が根強く残っています。
例えば工程ごとに担当者ごとでやり方が異なり、「あの人にしかできない調整」「〇〇さんだけが知っているノウハウ」という、いわゆる“名人芸”に頼る風土です。
このような属人的な現場では、手順や計測方法、管理表すら標準化できていません。
標準書の整備や文書化は「変化を嫌う」「自分たちのやり方を根本から変える必要性を感じていない」といった意識から後回しにされがちです。
2. コスト意識のジレンマ
標準化といえばISO9001やIATF16949など外部認証取得も絡んできます。
文書作成や教育、社内監査へのコストが発生し、現場からは「手間と費用が増えるだけ」といった声も根強いです。
価格や納期交渉で常に圧迫されている中小サプライヤーからすれば、「プラスの仕事(=直接利益につながらない)」と映ることが多いのが現実です。
3. コア技術の“囲い込み”と情報開示への抵抗感
特に生産プロセスに独自色の強い中小サプライヤーは、「標準化=自社技術の開示」と捉える傾向があり、流用や模倣リスクへの警戒から情報共有に後ろ向きです。
また「取引先が標準化を求めるほど、自社の“個性”や強みが埋没するのでは」という危機感も少なからず存在します。
バイヤー・発注側が抱く不満と現場での課題
1. 不良・クレーム発生時の再発防止活動が形骸化
標準作業書や手順書が未整備なサプライヤーの場合、不良やクレーム発生時の「なぜ、どうして」を正確に分析し、是正する力が弱まります。
「担当者によって対応がバラバラ」「人の入れ替わりで現場が混乱する」といった状況は、バイヤー側にとって“見えないリスク”となり、調達先としての信頼感を損ないます。
2. なぜ同じ失敗を繰り返すのか?
ある部品が不良となったとき、現場でヒアリングすると
「先輩はこうやってました」
「いや、自分は違うやり方で…」
など証言がバラバラ。
原因究明が感覚頼りになり、再発防止の入口でつまずきます。
標準書があればトレースもでき、教育も容易ですが、それが無いことで「いつまで経っても同じミスが繰り返されるサプライヤー」という悪印象が残りやすいです。
3. 工場監査や改善要求に対する柔軟性がない
近年、グローバル展開や海外バイヤーとの取引拡大により、監査・見学の受入れやプロセスの透明性が強く求められています。
標準化されていない現場では
「Aさんがいるときしか説明できない」
「図面やチェックシートが現場にない」
といった問題が露呈。
評価がマイナスになり、新たなプロジェクトや量産へのスケールアップ調達が難しくなることもあります。
業界動向:アナログ業界にも迫る「変化」
1. グローバルサプライチェーン標準化の波
デジタルトランスフォーメーション(DX)、IATF16949など国際認証拡大のなか、“標準化”への要求はますます高まっています。
たとえば大手自動車メーカーのような垂直統合型サプライチェーンでは、一次サプライヤーだけでなく二次・三次サプライヤーも標準化活動が求められ、これに追随しなければ淘汰される時代になっています。
2. 人材の流動化・技能伝承問題も深刻に
若手不足や高齢化によって、「ベテラン頼りの現場」がどんどん立ち行かなくなっています。
属人的やり方のままでは新人教育やオペレーター入替えが困難で、納期遅延や不良率増加といった重大リスクにつながります。
3. 標準化活動の「デジタル化」と“チーム力”の重要性
デジタル技術(IoT、ペーパーレス化、製造実行システムMES)の普及により、作業標準をデジタルデータとして蓄積・共有し、現場作業員のタブレット端末でリアルタイムに確認できる環境づくりが進んでいます。
これにより「誰が作業しても一定レベルの品質が保てる」現場づくりが加速しています。
サプライヤーが“逃げ”ずに標準化へ向かうためのヒント
1. 標準化の目的を「自社のため」へ言語化する
標準化の本質は「現場力の底上げ」=自社の安定経営・競争力向上です。
「お客様に言われたからやる」のではなく、「自分たちのためになる」と納得して取り組むことが大切です。
例えば、
・有休取得時や急な欠員時にも仕事が回せる
・教育や人材育成コストを下げられる
・品質データに基づく営業提案ができる
など、享受できるメリットを現場全体で考え直すことがカギです。
2. “職人技”の暗黙知を見える化し、強みを残す
標準化イコール画一化ではありません。
たしかに「個人技が失われる」と抵抗がありますが、“職人技”を動画やシートで見える化し、
「どこまでが誰でもできる作業で、どこからが匠の技なのか?」
その線引きを社内で議論することが、標準化推進の第一歩です。
本業務の本質(価値)を再定義することで、むしろ新たな“売り”になります。
3. バイヤー側が期待する「見える改善」を示す
取引先バイヤーは「標準化活動がどこまで進んだか」「具体的にどんな効果があったか」を数値やデータで見たがります。
改善前後で
「工程不良が〇割減りました」
「作業時間が〇分短縮できました」
など、事実に基づいたPRは取引継続や単価交渉にも有効です。
4. 小さな標準化から始めること
いきなり全業務を標準化しようとせず、「不良が多い工程」や「頻繁に教育が必要な作業」などピンポイントで着手し、成果とノウハウを段階的に広げていきましょう。
迅速に効果が見える分野で成功体験を積み、「標準化で現場がラクになった」という納得感の積み重ねが、全社への浸透と継続に繋がります。
まとめ:標準化は「自分ごと化」で真価を発揮する
サプライヤーの標準化が進まない背景には、コスト意識や属人文化、過去から続く習慣など様々な要因があります。
とはいえ、バイヤーや顧客にとっては信頼・託せるパートナーとなるために「標準化体制」が不可欠です。
これからのものづくりでは、標準化の推進を「インプット(やらされるもの)」ではなく「アウトプット(価値を生み出すもの)」へと“自分ごと化”することが求められます。
デジタル技術や外部支援も上手に「借りる」時代です。
サプライヤー自身の成長と、産業全体の競争力強化のために、一人一人が「自分の現場から変えていく」マインドを持つことが、これからの日本の製造業にとって最大の武器となるでしょう。
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