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DTCとDTPを併用し設計と工程で二段のコスト最適化を回す運用

目次
DTCとDTPを併用する意味―コスト最適化の二重奏
製造業のコスト戦略は、これまで一貫して「経理目線」で捉えられることが多かったです。
しかし現場を歩くこと二十年以上、私は「コスト」とは単なる数字の最適化ではなく、設計や工程一つ一つの選択の最適化の総和だと痛感しています。
そこで近年、業界で気運が高まりつつあるのが「DTC(Design to Cost)」と「DTP(Design to Process)」の2つのアプローチを併用し、コスト低減を二重のレイヤーで実現していく運用です。
古くから続くアナログな現場でも、この考え方を浸透させることは、新たな競争力の原動力となります。
DTC(Design to Cost):設計段階で徹底的にコストを抑える
DTCの概要と時代背景
DTCは直訳すると「コストを意識した設計」。
従来、日本の製造現場では設計はあくまで「スペック最優先」となり、「できあがった図面をもとにコストを下げる」というアプローチ、つまり「設計⇒コスト」の順番でした。
しかしバイヤーや生産現場で働いてきた経験から言えば、設計で大枠が決まった後のコストダウンは、言ってみれば「延命処置」に過ぎません。
製品コンセプトや必要寸法・仕様といった根本を早い段階で「コスト視点」から突き詰めることで、大胆な材料選定や形状変更、機能の見直しにつなげることができます。
現場でのDTCの実践例
例えば、機械部品の設計段階で、使用材料を高価なものから安価な標準材へ切り替えられないかを検討します。
また複数部品を一体化することで工数を削減できれば、製造・管理の両面でコストが低減します。
バイヤー目線で言えば、最初から「特注品」ありきで設計されると仕入先開拓も難航しますし、余計なコストがかかります。
DTCで「製造原価のバラツキを減らす設計指針」を徹底することで、社内外のサプライヤーとの協業がしやすくなり、結果的に安定的なコスト最適化が実現できます。
DTP(Design to Process):工程の最適化を設計から取り込む
DTCとの併用で生まれる相乗効果
もう一方のDTPは、工程(特に生産プロセス)の最適化視点を、設計に組み込む考え方です。
設計段階で、「この形状は量産時に安定生産できるか?」「保全や品質保証の観点で無理がないか?」と先々を見越して決めることがDTPの肝です。
昭和の現場は、現場力と勘・経験がものを言いました。
ですが生産設備のデジタル化・自動化が進んでいる現在では、「どんな形状だと機械で安定加工できるか」「工程をまたがずに一発で仕上げやすいか」、あるいは「品質の再現性を高められるか」という視点で設計を振り返ることが求められています。
生産技術・現場との連携が鍵
現場の生産技術・製造グループとの連携を強化し、設計側も「加工や組立てのしやすさ」を自然と盛り込む。
これこそがDTPの核であり、現実的なコスト最適化を支える土台となります。
たとえば、複雑な部品形状を避け、シンプルかつ工程数が少なくて済む形に変える。
または、組立時に位置決め治具が不要な仕組みを設計段階で考えておく。
これらは経営層だけでなく、現場の技能者や購買担当者、バイヤーにも伝えて浸透させる必要があります。
「二段のコスト最適化」を実現するための具体的運用例
1. コンカレント・エンジニアリング体制の構築
DTCとDTPは、従来型の縦割り組織(設計→生産→調達の順番)では真の効果を発揮できません。
開発初期から設計・製造・調達・品質・生産技術のメンバーが同時に議論する「コンカレント・エンジニアリング」によって、初期段階で現場起点の知見を設計図面上に落とし込めます。
例:
量産が見込まれる製品で「部品点数削減」を発案し、設計と生産技術が連携して金型や自動設備の仕様を検討。
その上で購買が標準部品カタログと照合し、最適部品を提案。
この三者が一体となって設計工程でコスト・品質・生産性の三立て解を追究します。
2. 業界の定石をあえて疑う
昭和から続く“お決まりのやり方”や“昔からこの形式”に疑いの目を向けることは極めて大切です。
現場で本当に必要な機能か、工程的に無理や問題があるのではとあえて問い直すことで、DTCもDTPも深化します。
たとえば、工程の省略、既存部品の転用、ロボットに置き換えやすい設計変更など、“当たり前”に沿うのではなく、現場起点で「なぜそれが必要なのか」を徹底深掘りしましょう。
3. バイヤー/サプライヤー間でのオープンな情報共有
バイヤー経験者は理解していると思いますが、サプライヤー側からしても「バイヤーがなぜその仕様を要求してくるのか」を知ることで、コスト低減案や加工性改善案を提案しやすくなります。
設計・購買・製造の垣根を取り払って、スペックイン前からの情報早期共有とコスト練り合わせ(俗に言う“巻き込み調達”や“早期QCD連携”)こそが、二段の最適化サイクルを動かします。
DTC・DTP併用運用で人材のスキルアップと意識改革を
設計部門の人材育成―本質的な設計力の養成
設計者にとって重要なのは、スペックを満たすだけでなく、「現場・調達を理解した設計」への意識改革です。
DTC・DTPアプローチを学ぶことで、図面・仕様書づくりから「どうすれば標準部品になるか」「どうすれば無理なく工程展開できるか」を自然と考えられる土壌を育てましょう。
バイヤー・サプライヤーの目線も強化
バイヤーになりたい方、サプライヤーとしてバイヤー目線を学びたい方にとって、DTC・DTPの運用は極めて現実的な武器になります。
例えば、
– 「より安い提案」ができる標準化・モジュール化の視点
– 工程省略や歩留まり向上に資する設計フィードバック
– コスト vs 品質 のバランスをとった交渉ノウハウ
これら全てが、“単に見積もりや値引き”だけに頼らない本来的なバイヤースキルを支えます。
古き良きアナログ現場でもDTC・DTPは可能か?
私が現場長を務めてきたラインや、下請け・町工場の現場でも、「DTC」「DTP」という言葉をそのまま使わなくても、多くの実践例が既に存在しています。
その要諦は「知恵を出し合い、納得度の高いコスト・品質改善を続ける」ことです。
権限や役割の壁を壊し、情報をオープンにしながら“現場共同体”で全員最適解を追いかける、その営みこそが二段のコスト最適化サイクルの核心です。
デジタル化やDXが進んだ今、逆にこの“昭和型現場力”にDTC・DTPのフレームワークを融合させることで、日本の製造業は次の地平線に到達できるはずです。
まとめ:DTC・DTPの併用運用で「製造業の未来」を切り開く
設計と工程の両面からコスト最適化を仕掛けるDTC・DTP併用運用。
これは単なるコストダウン活動の延長ではありません。
「製造業全体の競争力を底上げし続ける、本質的な循環」の仕組みです。
これまで以上に現場を知り、壁を越えて価値観を共有すること。
そして「変化を恐れず、問い直し続ける現場力」をもって、新たな製造現場の地平線を開拓していきましょう。
製造業に勤める皆さま、さらなる成長と飛躍のために、今こそDTC・DTP併用の運用を現場の武器にしてください。
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