投稿日:2025年10月15日

缶詰の蓋が外れないダブルシーム溶接とトルク測定の工程

はじめに:缶詰の蓋の安全性を守るダブルシーム溶接

缶詰は長期保存と輸送に優れた食品容器として、世界中の食卓を支えています。
この缶詰の品質と安全性を左右する重要な工程が、「ダブルシーム溶接」と「トルク測定」です。
缶の蓋が外れない、内容物が漏れない―この当たり前の安心を実現するための技術は、昭和の高度成長期から現代まで、一度も途絶えることなく進化し続けてきました。

この記事では、長年製造業の現場で蓄積した実体験をもとに、ダブルシーム溶接の原理と現場ならではの課題、最新の品質管理、業界のデジタル化事情について、現場目線でわかりやすく解説します。
調達・購買担当者や、サプライヤーのバイヤー志望者の方にも役立つ「現場感覚」の知見を惜しみなくご提供します。

ダブルシーム溶接とは?缶詰のフタが外れない理由

ダブルシームとは何か

ダブルシームとは、缶胴と蓋(エンド)を二重(ダブル)に折りたたみ、強固に巻き込んで密封する接合方式を指します。
この工程によって、外部からの雑菌や空気を完全に遮断し、缶詰内の食品を長期間安全に保存することができます。

ダブルシームは「溶接」と称されますが、いわゆる金属同士を熱で溶かしてつなげる工程ではなく、物理的に曲げ・圧着することで密着性と強度を持たせるのが特徴です。
そのため、工程のちょっとしたクセや狂いが蓋の外れや液漏れ、さらには中身の劣化など重大な品質問題に直結します。

二重巻き締め構造のしくみ

ダブルシームは、缶胴(本体)のフチと蓋のフチを重ね、専用の「シーマー」と呼ばれる巻き締め機で複雑に圧着します。
この時、金属が幾重にも折り重なり“層”を形成し、さらに密着部にはシール(充填用ゴム)が巻き込まれることで、高い気密性と耐圧性を発揮します。

工程を2段階(1st operation, 2nd operation)で行うことで、隙間の無い完璧なシールが可能となります。
この方式は数十年にわたり食品業界の標準となっており、「缶詰の蓋が外れない」という信頼を支える技術的支柱でもあります。

巻き締め工程の実際と現場課題

アナログからの脱却が進まない現場の現実

昭和時代から続く多くの缶詰工場では、巻き締め機は安全基準こそ厳しく管理されますが、設備そのものは大きく進化していない場合が少なくありません。
オペレーターの経験や微妙な“勘”が出来不出来を左右する場面もあり、“昭和の伝統技能”が根強く残っています。

過去には「シームローリングの圧力が強すぎて缶が変形した」「シームの重なり幅が足りずに蓋が外れる」など、典型的なヒューマンエラーも現場課題としてくすぶっています。
こうしたアナログ的な側面は、逆に現場の重要なノウハウや人的資源として評価される一方、デジタル化・自動化の課題でもあります。

現場で求められるスキルと判断力

巻き締め機のセッティングには、「リム圧(シール部圧力)」「シーム幅・深さ」「オーバーラップ率」など、いくつもの工程パラメータが存在します。
たとえば、「今日の缶のロットは微妙に肉厚が異なる」といった現場特有の条件変化にも職人が熟練した判断で微調整を加えることで、安定した品質を保っています。

また、巻き締め工程のトラブル発生時、単なるマニュアル通りの対応では根本解決できないケースも多いです。
オペレーターが五感で異音や振動を察知したり、微妙な変形を発見できるかどうかが、現場の品質を守るカギとなります。

トルク測定の重要性と品質管理

なぜトルク測定なのか

ダブルシームで圧着した缶詰ですが、最後の「保証」を与えるのがトルク測定です。
トルク測定とは、蓋を開ける・外す方向にかかる力(トルク)を数値化する検査工程です。

シームの圧着が弱すぎると、流通過程や消費者の手に触れたときに蓋が外れてしまいます。
逆に強すぎると、開封時に消費者が怪我を負う危険や、内部圧で缶が破裂するなど重大な事故につながります。
このため、製品ごと・ラインごとに適正なトルク値の範囲を規定し、サンプリングとフィードバックループによる管理が必須となっています。

測定工程のポイントと現場ノウハウ

現場では自動トルクテスターや手動ゲージを用いて、抜き取り検査を行います。
ここでも「手順通り」「スピード」「均一な力加減」という“基本”が徹底されていないと、数値に大きなバラツキが生まれます。
検査結果はすぐさま巻き締め設定の見直しや設備メンテナンスに反映させる仕組みが求められます。

さらに、微妙な傾向値の変化を見逃さず、「そろそろ工具の摩耗が限界か?」「原材料ロットで変化が…」と的確に判断する“現場目線”のフィードバックも不可欠です。
このような「PDCAサイクル」が、缶詰工場の品質と安全性の根幹を成しています。

昭和型からの転換期、缶詰業界の自動化とDXの課題

自動化・DX導入への壁と可能性

近年、多品種少量生産や即応性の要求が高まる中、缶詰製造ラインの自動化やDX(デジタルトランスフォーメーション)導入は避けて通れないテーマになっています。
画像解析を活かした巻き締め部の自動検査や、IoTセンサーでのラインモニタリング、AIによる異常予測も一歩ずつ普及が進んでいます。

しかし、現場には「ベテラン作業者の絶対的なノウハウをどう継承するのか」「設備投資に見合うROIが出るのか」といった昭和型組織に根付いた課題感も根強いです。
特に、ロットごと・サプライヤーごとに品質バラツキが出やすい缶素材への対応や、トラブル時の即応力はアナログ現場力にまだ優位性があります。

バイヤー・サプライヤー双方に問われる視点

バイヤー(調達担当者)にとっては、単なる価格競争や納期短縮だけでなく、製品の「本質的な品質力」を見抜く力がますます重要となっています。
逆にサプライヤー側も、現場力のみならずトレーサビリティやデータ管理、顧客との協働による「付加価値創造」を求められる時代に直面しています。

例えば、自働化技術の導入提案や、現場のノウハウをマニュアル化・データベース化して提供することでバイヤーとの信頼関係を強化したり、短納期・多品種の要望にもフレキシブルな生産体制で応えるなど、「ソリューション型」のアプローチが急務です。

現場発だからできる、新しい“ものづくり”の提案

“勘と経験”に科学を融合させる挑戦

缶詰製造現場の最前線で蓄積された膨大な知見は、まだまだデジタル資産として十分に活用されていません。
今後は、巻き締め設定やトルクバラツキ傾向、トラブル事例などをシステム的に記録・解析し、“人の勘”を形式知化する仕組みづくりが求められます。

また、設備メーカーやサプライヤーとも連携し、“現場でしか気づけない真の改善ポイント”をフィードバックサイクルに反映させる文化を根付かせることが、DX化の成否を握ります。

未来志向の現場力アップ策

・巻き締め・トルク管理の全自動化と品質ビッグデータの活用
・現場技能者の知見を可視化し、マニュアル+AIで新世代教育体制を確立
・サプライチェーン全体を俯瞰し、「最適発注」「最適生産」を見える化するSCM連携強化
・消費者・バイヤーの声をライブで吸い上げる“フィードバック経営”の推進

こうした取り組みは、昭和から続く“アナログ工場”から“自律型未来工場”への転換点を創り出す原動力となるでしょう。

まとめ:缶詰の蓋が外れない―その裏にある現場力と次世代ものづくり

缶詰の蓋が外れない―この簡単そうで奥深いものづくりの背景には、熟練現場の知恵と、日々磨かれる品質管理、絶え間ない工程改善と技術革新があります。
ダブルシーム溶接、トルク測定、それぞれの現場で脈々と受け継がれるノウハウと改善の積み重ねこそ、私たち日本の製造業を支えてきた「現場力」そのものです。

これからの時代、バイヤーもサプライヤーも「現場の目線」を学び直し、新たな発想でDXや自動化に挑むことが、付加価値のある製造業を生み出すカギとなるでしょう。
缶詰という身近な製品の舞台裏から、ものづくりの地平線を広げるヒントを、ぜひ一緒に見出していきましょう。

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