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ヘビーコットンTシャツ印刷で厚膜を均一化するための二重スキージと版厚調整

目次
はじめに:製造現場における“均一な厚膜”の重要性
Tシャツへのプリント加工、とくにヘビーコットンTシャツへの印刷は、アパレル分野だけでなく、産業用途でも高まるニーズがあります。
厚地の生地には、プリントされたインクの「厚膜」が大きな影響を与えます。
均一な厚膜は、仕上がりの美しさや耐久性、さらにはブランドの信用にも直結します。
ところが、昭和の頃から続くアナログな現場では、今なお“経験と勘”頼みで工程が進むことも珍しくありません。
そこで今回は、厚膜印刷を実現するための「二重スキージ」と「版厚調整」に注目し、その理論と現場での実践手法、そして最新トレンドについてお伝えします。
ヘビーコットンTシャツ印刷における課題
なぜ厚膜を均一にするのが難しいのか
ヘビーコットンTシャツは、標準的なTシャツに比べて生地が厚く、織り目も粗い場合が多いです。
下地が不均一なため、インクがしみ込みやすい場所と、乗りにくい場所が混在します。
そのため、「プリントムラ」「カスレ」「インク抜け」などが発生しやすくなります。
加えて、一般的な枚葉印刷では、スキージで一度インクを引くだけでは生地全体への定着・厚膜形成が難しいです。
現場でよくある解決法とその限界
従来は、「インクを多めに盛る」「スキージを何度も往復する」といった方法が取られてきました。
しかし、インクの盛りすぎは乾燥工程でのひび割れや脱落を招きやすく、不良品やクレームにつながります。
また、往復回数を増やすと生産効率も落ち、品質の安定もしません。
二重スキージの特徴と現場への導入効果
二重スキージの基本構造
「二重スキージ」とは、印刷台上に2本のスキージ(ゴムヘラ部材)を並列装着し、1回の印刷動作で複数回インクを押し込む方式です。
1本目のスキージで生地表面、2本目でさらに下層(繊維の奥)にインクを刷り込むため、厚く、かつ均一なインク被膜が形成されやすくなります。
導入時の具体的メリット
1.インクのしみこみ・定着が深くなり、プリントがくっきりする
2.一往復による厚膜形成で、カスレやムラが大幅に減少
3.生産スピードの低下を最小限に抑えつつ、品質ばらつきを防止
これらは、実際に現場で印刷工程を管理してきた経験からも強く実感できます。
複数の作業者が交代で作業しても、均質なプリント結果を維持できます。
昭和的アナログ現場での“あるある”と二重スキージの処方
例えば、「Aさんが刷ったらキレイだが、Bさんが刷ると薄い」といった職人スキルによるばらつき。
二重スキージはこの“経験値依存”からの脱却を促し、標準作業書にもしやすい利点があります。
“版厚”が厚膜均一化のカギを握る
版厚とは
「版厚」とは、プリント用のシルクスクリーン(紗枠)に塗布された感光乳剤の層の厚みを指します。
インクの通過量を左右する最重要パラメータであり、厚膜印刷では最適な版厚設定が求められます。
適切な版厚調整方法
厚膜印刷用には、通常より厚めに乳剤を盛る(コーティングする)必要があります。
熟練現場では「裏5回/表2回コーティング」が定番手法です。
ただし、乳剤メーカーや印刷インクの種類に応じて調整も必要です。
厚くし過ぎればインクが広がりすぎて版の細かな柄が潰れ、薄いと満足な厚膜感が得られません。
現場では「マイクロメーター(精密な厚さ測定器)」で乳剤膜厚を測定し目標値(例:100μm前後)に合わせることで、チーム間で均質な工程管理が可能になります。
工程設計にも活きるラテラルシンキング
従来は「1パターンの配分だけ」で単調に管理していたものを、「Tシャツの生地厚か/織り目/ロット差」に着目し、最適な版厚をレシピ化して製品別に展開する。
これは現場の“属人的ノウハウ”を“再現可能な品質”へ昇華するポイントとなります。
実践例:二重スキージ+版厚調整による印刷改善事例
私が以前担当した工程では、年間20万枚規模のヘビーコットンTシャツをOEMで受注し、プリントムラが全数検査で3%発生するという悩みがありました。
そこで、1)二重スキージ装着、2)版厚を従来50μm→110μmへアップ、3)作業者ごとのスキージ圧・角度・速度の標準化、を導入しました。
その結果、カスレ・ムラの発生率は0.2%へ激減。
歩留まり向上だけでなく、納期スピードも2割改善、現場の「やり直しロス」も劇的減少しました。
これは、二重スキージ・版厚調整の複合効果による成果です。
サプライヤー/バイヤーが知っておきたい業界動向と最新トレンド
なぜ今、厚膜&高品質プリントが求められるか
ファストファッションの台頭やOEM先の多様化により、「価格競争」から「品質競争」へとトレンドがシフトしています。
特にEC通販では、手元に届く製品の「再現性」と「顧客満足度」がブランド価値を左右します。
こうした時流に伴い、サプライヤーは厚膜技術・プリント品質の安定性を武器に商談を有利に進めることができます。
バイヤー視点では、「納品された製品がロットごとに違う」「数回洗濯すると文字が消える」などのクレームリスクを避けるために、具体的な印刷工程(スキージ本数、版厚工程管理)の確認が欠かせません。
短納期ニーズが増加する今、安定した工程設計こそが選ばれる工場・サプライヤーの条件です。
今後の自動化・DXの展望とレガシー現場の変革
最新の自動印刷装置では、二重スキージ・乳剤塗布量の自動制御・印刷スピードの最適化なども進みつつあります。
一方、国内印刷現場には“昭和的アナログ”が根強く残っています。
この両者の橋渡し役として、現場の暗黙知(標準書化ができていない経験値)を明文化し、「工場の見える化」や「新人教育」「RPAによる品質ロス抽出」などへの応用が次世代工場運営に直結します。
ラテラルシンキングを武器に、現場の知恵/歴史/勘をデータ化・DX化、新たな競争力創出に活用するタイミングが今、到来しています。
まとめ:現場の知恵を体系化し、業界の未来を切り開くために
ヘビーコットンTシャツの厚膜プリントにおいて、「二重スキージ」「版厚調整」という一見アナログな手法こそが、均一で高品質な印刷を実現する要です。
現場経験を活かした工夫と、理論に裏打ちされた工程管理を複合することが、伝統的な印刷現場にこそ求められています。
サプライヤーの方には、自社の加工現場がどういった強み(例:二重スキージ導入や版厚調整が徹底できているか)を示せるかが商談の成否を分けます。
一方バイヤー志望の方や発注担当者には、品質リスクの芽を現場工程から見抜く“見る目”と“仕組みへの理解”が不可欠です。
ラテラルな発想力と現場技術への好奇心こそが、これからの製造業を動かす原動力となります。
あなた自身の工程に、ぜひ「二重スキージ」「版厚調整」のノウハウを“標準化”して次世代への橋渡しとして役立ててください。
製造業の未来を、“昭和の勘”から“デジタル標準作業”へと発展させていきましょう。
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