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竹製トレイの印刷で熱収縮を防ぐ乾燥曲線と吸湿対策

目次
はじめに
製造業の現場では、サステナビリティや環境配慮の高まりを受けて、従来のプラスチック製品に替わる新たな素材が注目されています。
その代表格が「竹」素材です。
特に、竹製トレイは強度や軽さ、見た目の美しさだけでなく、「脱プラ」「カーボンニュートラル」への貢献という点で多くの業界から期待されています。
一方、竹という天然素材特有の課題も存在します。
そのひとつが、印刷工程において顕著となる「熱収縮」と「吸湿」です。
今回は、製造現場で20年以上培ってきた経験をもとに、竹製トレイの印刷で失敗しないための「乾燥曲線」と「吸湿対策」について、現場目線で具体的かつ実践的に解説します。
なぜ竹製トレイは熱収縮や吸湿に注意が必要なのか
竹素材の特性
竹は木材やプラスチックと比較し、「吸湿性が高い」「含水率が季節や環境で変わりやすい」「熱変形が起こりやすい」という特徴があります。
この性質が、工場での印刷や加飾工程でさまざまな不具合の原因になります。
例えば…
– 印刷ずれ
– トレイの反り
– 仕上げ寸法のバラつき
– インキの密着不良
これらの不具合は、市場品質クレームや納期遅延、歩留まり低下など深刻な損失に直結します。
印刷工程ならではの課題
印刷では、乾燥機や熱風装置などを使用し、短時間に高い熱エネルギーを加えることが一般的です。
しかし、竹製トレイの場合、急激な温度変化や低湿度にさらすと、内部の水分が一気に抜けてしまい、寸法変化や反り、割れ、インキの縮みなどが発生します。
これは、たとえ生産管理・品質管理がどんなに厳格でも、竹という素材の本質を理解していないと防ぐことが難しいのです。
熱収縮を防ぐ「乾燥曲線」とは
乾燥曲線とは何か
乾燥曲線とは、「加熱温度×乾燥時間による含水率の減少推移」を記録したグラフです。
製造現場では、資材調達の段階からこの乾燥曲線を把握しておくことで、最適な工程設定や不良発生の予見が可能になります。
例えば、
– 80℃の熱風で10分間乾燥→含水率変化3%
– 120℃の熱風で5分間乾燥→含水率変化7%
このようにデータ化することで、どの温度・時間でどの程度の収縮・寸法変化が起こるかを予測し、事前対策が可能です。
昭和時代流の職人勘から、データ駆動型管理へ
従来、例えば昭和の時代には、「このくらい乾かせば大丈夫」「手ざわりでわかる」といった熟練者の経験と勘が頼りでした。
現代のデジタル化・自動化が進む中でも、竹製品では「目視や手感による判断」がつい現場の中で幅を利かせてしまいがちです。
しかし、バイヤーや最終顧客が求めているのは「狙い通りの品質と納期」「安定した供給」です。
そのためには、経験や勘だけでなく、ラボや現場工程で事前に乾燥曲線を把握し、数字に落とし込む管理手法が必須です。
例えば、購買担当者とサプライヤーの間で乾燥曲線データを共有できれば、トラブル時も「どちらの工程で何が起きたか」「対策は何がベストか」を協議しやすくなります。
現場目線で見る乾燥工程の最適化
STEP1:前処理で安定した含水率に調整
竹素材は入荷時点で「産地」「保管状況」「輸送方法」により水分量が大きくばらつきます。
まずは、印刷前の前処理工程で「常温環境下で一定時間放置する(養生)」や「低温で緩やかに予備乾燥させる」ことで、トレイごとの含水率を均一化することが重要です。
また、現場で小型の含水率計を用いて「目視だけでなく計測値管理」に切り替えましょう。
STEP2:多段階・低温乾燥のススメ
印刷後、インキやコーティング層を乾燥させる際は、高温の熱風で一気に水分を飛ばすのではなく、「多段階・低温・長時間乾燥」が理想です。
急激な温度変化は、竹内部の細胞壁の崩壊や微細クラックを誘発し、反りや収縮の原因になります。
微妙な温度・湿度コントロールこそが、現場スタッフの腕の見せ所です。
具体的には
– 低温(50〜60℃)で一次乾燥
– 80〜100℃で二次乾燥
– 加湿器・除湿器を組み合わせて相対湿度を50〜60%程度で維持
上記プロセスを「乾燥曲線」として数値化・記録しておきましょう。
STEP3:現物評価とフィードバックの徹底
乾燥後は、寸法変化や反り量、インキ密着度などの現物サンプルをロットごとに測定・記録し、生産ラインやサプライヤーへリアルタイムにフィードバックする体制も大切です。
これにより、「現場で見える化された品質指標」としてデジタル時代の標準管理に近づきます。
吸湿対策:加工から出荷まで全工程がカギ
保管・輸送環境が最後の品質を決める
乾燥工程でどんなに管理しても、その後の保管・輸送環境が悪ければ、竹製トレイはたちまち湿気を吸って寸法や風合いが狂ってしまいます。
現場目線では、「加工後24時間以内のパッケージング・密封」「調湿剤の標準封入」「低・中湿度環境での出荷・納品」を徹底することが重要です。
例えば、シリカゲルや紙パック型の調湿剤はコストがかかると思われがちですが、市場クレームや返品リスクを思えば保険代と割り切るのが賢明です。
バイヤー・品質担当とサプライヤーの連携ポイント
バイヤー(調達購買)の視点からすると、過去に納入された竹製トレイで
– 印刷のズレ
– 反りや割れ
– 斑(まだら)なインキ密着不良
などのトラブルが発生した場合、納入メーカーから工程管理データや乾燥曲線の提示を求めます。
サプライヤー側からは、前処理・乾燥・出荷後の「吸湿率変化データ」や「環境ごとの寸法安定性試験データ」を能動的に提出し、信頼を高めることが求められます。
これが「アナログ業界」から「データ駆動型バリューチェーン」への進化です。
昭和的な現場文化を超えるためのラテラルシンキング
現場で働くベテラン作業者の知恵や経験は製造業の宝ですが、それだけでは現代の競争や品質要求に十分対応できない時代となっています。
ある意味、「昭和的な現場の思い込み」には限界があり、「今まで大丈夫だったから大丈夫」という考えは時に大きな失敗につながります。
ここで必要なのが「ラテラルシンキング(水平思考)」です。
竹のサプライチェーン全体を眺め、次のような点を問い直してみましょう。
– どの工程が最も品質に影響するのか?
– バイヤーはどこにリスクを感じているか?
– サプライヤーの加工・データ管理はどこまで進んでいるのか?
– 現場の定量データと、経験値のバランスをどう取るか?
– 従来の“常識”を疑い、斬新な工程設計やIoT活用はできないか?
このような問いに取り組むことで、現場スタッフ・管理職・バイヤー・サプライヤーが一体となり、より強いバリューチェーンを構築できます。
今後のちょっと先を読む:竹製トレイの未来像
サステナブル素材へのシフトは今後も加速していきます。
2024年以降、以下のような業界動向も視野に入れるべきです。
– EUやグローバルトップ企業による脱プラ推進
– FSC認証やトレーサビリティ対応
– 製品ごとに「乾燥曲線データ」など定量管理データ提出が商談標準化
– AIやIoTセンサーによるリアルタイム含水率・寸法モニタリング
国内外の先進サプライヤーでは、これらに対応できるデータインフラやエンジニアリング力が選定要件になりつつあります。
つまり、「昭和の職人技」だけに頼らず、「数字」「データ」「ラテラルシンキング」を融合させた現場運営が強みとなるのです。
まとめ
竹製トレイの印刷工程では、素材特有の「乾燥曲線」把握と「吸湿対策」が、品質安定・歩留まり向上・納期厳守に直結します。
今後、工場現場で重要なのは
– 乾燥・吸湿管理の数値化、工程データの共有
– コミュニケーションのデジタル化
– バイヤー・サプライヤーが一緒に品質基準・管理体制をアップデート
これこそが「ラテラルシンキング型ものづくり革新」の最初の一歩です。
昭和的な常識やアナログの知恵を尊重しつつ、新しい地平に進むため、自分たちの現場で何ができるか、今一度立ち止まって問いかけてみましょう。
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