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外部補助金に依存しすぎ自走できなかったDXの失敗談

目次
はじめに:なぜDX推進が製造現場で難しいのか
製造業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)は、業界の競争力強化や業務効率化、生産性向上のために不可欠となっています。
しかし、私が20年以上現場で見てきた経験から言えることは、補助金や助成金など外部資金に依存しすぎたDXプロジェクトが、逆に現場の改善を妨げてしまうケースが少なくないということです。
この記事では、補助金でスタートしたものの自走できずに頓挫したDXの失敗談を紐解き、そこから学ぶべき教訓と、日本のアナログ文化に根付く業界動向について現場視点で解説します。
日本製造業におけるDX推進と補助金の現状
国や自治体による補助金・助成金の概要
近年、経済産業省や各自治体は、中小企業を中心にDX推進を強力に後押ししています。
例えば、IT導入補助金やものづくり補助金など、ハード・ソフト双方に対して数百万円から数千万円規模の支援が用意されています。
製造業に勤めるみなさんも「せっかくもらえるなら使わなきゃ損」と感じたことがあるのではないでしょうか。
外部資金で生まれる「他人ごと化」の落とし穴
こうした補助金スキームを活用すると、一見DX推進が進むように見えます。
しかし多くの現場では、補助金ありきでプロジェクトゴールやITツールの選定が進んだ結果、「やらされ感」や「他人ごと化」が急激に高まります。
現場社員やバイヤー、購買部門から「どうせ補助金のための取り組みでしょ」「一時的なものだから」といった冷めた声を耳にしたこともあります。
実際の失敗事例にみる補助金依存型DXの問題点
事例1:現場ニーズ不明瞭なまま導入したIoTシステム
某中堅部品メーカーでは、ものづくり補助金を活用しIoTセンサーと解析ソフトを現場に導入しました。
しかし、現場から見ると「使い方が難しい」「いまの工程と合わない」「データが活用できない」といった声が続出。
結局、導入数カ月で機器は稼働停止となり、棚の奥にしまわれる始末。
関係者いわく「最初は補助金獲得が目的化していて、現場の実情や技能者の声を聞けていなかった」と反省していました。
事例2:補助金の執行期限に追われた結果、低品質な自動化システム
生産管理の自動化にチャレンジしたプラスチック加工業では、補助金の執行期限に間に合わすためにベンダー任せでシステム構築。
使い勝手の検証やカスタマイズが不十分なまま本番運用を開始した結果、トラブル続出。
現場の負担が増え「なんでこんなに使いにくいものを入れたのか」と職場のモチベーション低下につながりました。
事例3:補助金が切れた途端に運用停止、結局アナログ回帰
外部委託でサプライチェーン・マネジメント(SCM)をDX化した企業では、補助金期間が終わるとともに運用コストが企業負担となり、結局システム廃止。
エクセルベースの発注管理やFAX伝票にもどるという「昭和回帰」現象が起きました。
この事例からは、自走できる「仕組み化」や「費用対効果」の吟味が甘かったことがわかります。
なぜ「自走」できないDXが量産されてしまうのか
導入責任者の交代・現場巻き込み不足
プロジェクト責任者が現場と距離のある管理部門や、本社主導で交代しがちなケースでは横断的な合意形成が不十分となります。
バイヤーやサプライヤー、購買部門の声を十分取り入れず「絵に描いた餅」状態のままDXが進みがちです。
現場視点の課題解決をおろそかにすると、導入後の定着率が一気に低下します。
昭和型アナログ文化の根強さと形式主義
日本の製造業には古くからルール・慣習・帳票重視の「昭和型」文化が根付いています。
たとえば「紙の伝票管理」「印鑑文化」「FAXによる発注」など、現場のベテラン層が安心できる仕組みを無理に変えようとすると、反発や不安からDX拒否反応が強まります。
補助金依存による「他責思考」の蔓延
「補助金があるから」「上から言われたから」で始まったDXは、うまくいかないときに「行政のせい」「システム会社のせい」と責任転嫁しやすくなります。
本来、現場が主体となってトライ&エラーで革新を進めるべきですが、外部資金頼りの姿勢が定着してしまうのです。
バイヤー・サプライヤーの立場から見たDXの本質的課題
バイヤーが望む「自律型の改善活動」とは
長年調達購買を担当してきた立場から申しますと、バイヤー(調達側)がDXに期待する最大のポイントは「自社だけでなくサプライヤー全体の生産性向上や品質安定」です。
補助金ドリブンで一時的な投資だけを行うサプライヤーには、サステナブルなパートナーとしての評価は生まれません。
本質的に求められるのは「現場主導の自律的改善」「費用対効果の見える化」「改革の継続性」です。
サプライヤーから見た不安:投資回収のリスク
サプライヤー側では、補助金がおりた時点で「これで元は取れる」と安心しがちですが、実際には運用・保守・システム改良など「自社で地道に回していく」局面のほうが重要です。
ここを十分見据えずに補助金頼りの決断を続けると、制度改正や予算打ち切りの際に業務継続が危ぶまれます。
バイヤーは「補助金がなくても設備やデジタル投資を続けられる基盤」を持つサプライヤーを重視します。
「自走型DX」への転換のために必要なこと
本質課題の可視化と現場巻き込み
まず最初にやるべきは「現場で何が困っているのか」「なぜ業務が非効率なのか」を徹底的に“見える化”することです。
現場メンバーや購買、品質管理、生産技術など、多職種連携で本質課題を掘り下げましょう。
「とりあえずのIT化」ではなく、「課題解決に直結するDX」を意識することが、自走型改革につながります。
スモールスタートとトライ&エラーの徹底
最初から大規模な投資や全社展開を狙うよりも、小さく始め、現場で何がうまくいくのかPDCAを回す姿勢が不可欠です。
補助金の有無に依存せず、「自社でできる範囲から着実に改革を進める」ことが、継続性と現場定着の鍵となります。
現場技能・属人技のデジタル変換
昭和型の現場には「ベテランの勘」「ノウハウの形式知化されない口伝」が今も根強く残っています。
これらを丁寧に分解し、デジタルデータ化・ナレッジ共有ツールへの落とし込みを進めましょう。
現場技能とITを融合させた「現場起点のDX」が、アナログ文化の転換点となります。
真のコスト意識と投資対効果の検証
補助金目的ではなく、自社として「コストをどう回収するか」「どれだけ付加価値を生むか」を見据えた投資判断が重要です。
定期的な投資収益率(ROI)や現場の生産性指標(KPI)のチェックを怠らず、「継続的に改善する文化」を根付かせることが、昭和時代からの脱却につながるのです。
まとめ:自走型DXで、日本の製造業に“強さ”を取り戻す
DXは単にツールや設備を導入することではなく、現場の課題解決と技能継承、そして社員一人一人の意識変革の積み重ねです。
補助金を活用すること自体は決して悪いことではありません。
しかし「もらえるお金」に頼り切った施策では、結局成果が定着せず、元のアナログに逆戻りする危険性がつきまといます。
バイヤーもサプライヤーも、調達購買や生産管理、品質管理、全ての部署が一丸となって「自社の課題を自分たちで解決する」という覚悟が不可欠です。
自走型DXが根付いた現場こそが、日本のものづくり産業を再び世界の先頭に導いていくのです。
今こそ、ラテラルシンキングで新しい“地平線”を切り開くときです。
昭和から令和への進化の鍵は、現場一人ひとりの手の中にあります。
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