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経営指標に直結する効果が見えずDXが疑問視される課題

目次
はじめに:現場で語られるDXの“実効性”への疑問
製造業の現場において、DX(デジタルトランスフォーメーション)はここ数年、経営層から現場リーダーに至るまで大きなテーマとなっています。
政府主導の政策や新聞・業界雑誌では、DX推進こそが企業競争力の向上に不可欠だと声高に叫ばれています。
しかし、その一方で「本当に経営指標に効果が見えない」「DX投資が利益に跳ね返ってこない」「現場で実感が伴わない」という声も少なくありません。
特に、いまだ昭和のアナログ文化が根強く残る製造現場では、DX導入の意義自体に疑問符が付きがちです。
本記事では、なぜDXの効果が経営指標に現れにくいのか、現場目線でのリアルな課題やDX推進における“見えざる壁”を掘り下げていきます。
また、調達購買や生産管理、品質管理といったモノづくり現場で培われた経験を踏まえ、バイヤー・サプライヤー双方にヒントとなる実践的なアプローチも提案します。
製造業でDXが求められる背景と現場のリアル
市場の変化とDXブームの到来
グローバル化、コスト競争の激化、多品種少量・短納期への対応など、製造業のビジネス環境はここ20年で劇的に変化しました。
この中で、IoTやAI、クラウドなどの新技術を活用し、現場業務や経営判断をデジタル化する“DX”が強く打ち出されました。
政府は「2025年の崖」問題を訴え、従来のレガシーシステム脱却とDX促進を強く推進しています。
企業も大規模な投資を行い、業務システム刷新や自動化プロジェクト、データ活用体制の整備などが加速しました。
昭和から抜けきれない現場の現実
ところが、“現場”の実態はどうでしょうか。
多くの中小工場や老舗メーカーで、現役の管理職やバイヤーが抱えるのは以下の実情です。
– 現場では紙とFAX、目視確認が今なお生きている
– ベテランの職人技や属人的なノウハウに業務が深く依存
– 新システム導入で現場の混乱や手間が増した
– ITに強い人材が極端に不足している
– 経営指標(売上、利益率、リードタイム短縮など)への直接的インパクトが不透明
このような“アナログから脱却できない心理的・組織的障壁”が、DX=改革の成功を妨げているのです。
なぜ“経営指標に直結しない”のか?本質的なボトルネック
DX“ブーム”が現実離れした投資を生む
多くの企業では「データを取れ」「IoT化を急げ」「ペーパーレスへ」と、上からの抽象的なお達しが先行します。
現場の“本当に困っていること”から離れて、ITベンダー主導のシステム導入が進みがち。
結果、現場の運用に合わせた設計や、製造現場特有のイレギュラー(緊急変更や工程飛ばしなど)にシステムが追従できなくなります。
このため、せっかく高額な投資をしても
– 工数削減や品質向上に結びつかない
– 品質や納期遵守が従来以上に困難になる
– 利益や生産性、稼働率といったKPIに効果が見えづらい
という、「経営指標に直結する効果が見えない」状況になります。
経営層と現場の危機感・価値観ギャップ
経営層は「数値で成果が現れる」「競合より先に変革せねば取り残される」と危機感を募らせています。
しかし、現場サイドは「本当にこのやり方で業務が楽になるの?」「なぜ慣れ親しんだやり方を変えなければならない?」と混乱しています。
意欲的なデジタル人材を採用しても、組織の中に埋もれてしまい旧来の“業務のやり方”が壁になります。
要は、「システム化=効果創出」ではなく、「人の行動や考え方そのものが変わる」ことがDXの本質です。
この根本認識が薄いままDXが進められているため、経営数値としての成果が表れにくいのです。
KPI設計の不備とデータ活用の未熟さ
DX投資の評価指標は、どうしても売上・利益・納期短縮・品質改善などになります。
しかし、そうした指標は必ずしも短期で効果が見えるものではありません。
また、多くの現場で「データは溜まっているが、見ても意味を感じない」「数値を使って現場を変えられない」という声があります。
本来、データ収集→見える化→分析→意思決定→現場改善、という流れが回って初めてKPIが改善します。
しかし、現実には「データを溜めて満足」「見える化止まり」で終わってしまうケースが多いのです。
現場DX成功のヒント ~調達・生産・品質の視点から
成功につながる“現場起点”のDX発想
私が長年現場DXを手掛けた経験から断言できるのは、“現場目線”で価値ある課題発見ができてこそ、DXは経営指標改善に直結しやすいということです。
たとえば、
– 作業者の負荷が高い工程をIoTセンサで「まず見える化」し、ムダ・ムラ・ムリを洗い直す
– 調達購買で発生しやすい納期遅延の“直前可視化”に取り組み、“未然防止型”購買に切り替える
– 品質管理部門が、「なぜバラつきが出ているのか」原因追究をAI解析で支援し、不良撲滅率をKPI化する
本来、“現場の痛み・課題”から出発して改善施策を小さく始め、徐々に全体最適(部門横断型)へ展開することが重要です。
その結果として、売上や粗利率といった経営指標へ遅れて反映していきます。
バイヤー目線:サプライヤーとDXで“真の共創”を
購買・調達業務では、DXが“コストダウン”だけの武器と思われがちです。
しかし、バイヤーの立場こそサプライヤーと「業務の見える化・効率化・提案フローの短縮」という、DX推進で会社全体の競争力まで引き上げる主体になれます。
– 例えば、見積もりから発注、進捗管理までオンラインで“共通のデータ基盤”を活用
– サプライヤーの現場と“生の情報”を双方向でやり取りし、小さなトラブルも迅速につぶしていく
– “コスト攻め”ではなく、“安定調達(QoS向上)”をDX成果指標として互いにコミット
こうした「DXでつながる新たなバイヤーサプライヤー関係」があれば、調達リスク管理や収益向上という経営指標にもしっかり貢献できます。
人材育成・組織文化改革も不可欠な“仕掛け”
DXが経営指標にインパクトをもたらすまで、必ず「現場の人が“変化”を自分事として動き続けること」が必要です。
– 若手や中堅に現場課題の“丸投げ”ではなく、経営層・管理職がまず変化の「見本」となる
– ITリテラシー教育に投資し、“自分たちで考えて現場を良くする”土壌を醸成
– 失敗を許し、改善トライアルを繰り返す“サイクル文化”を育てる
これらがDXの本丸であり、仕組みと人が一体になることでようやく「利益」「生産性」といった数値が変わってきます。
これからの製造業とDX:昭和の殻を如何に脱却するか
“現場が輝く”DXこそ、数値を動かす原点
昭和以来の日本型製造業の強みは「現場主義」「カイゼン力」です。
DXも単なる“IT化”や“スマート工場化”ではなく、人の知恵とデータを融合した現場主導型へ進めることが成功の鍵です。
– 小さな現場課題からデジタル活用の成果(省力化・見える化・リードタイム短縮)を丁寧に積み上げる
– 最初から全体最適化を狙わず、現場の共感・納得につながる改善を優先する
– DX推進担当や現場管理職が経営層へ“リアルな成果データ”をタイムリーに示し続ける
デジタルはあくまでもツール。
「人」が主役で、変革を実感する小さな成功の積み重ねが、最終的に経営指標へ必ず跳ね返ってきます。
バイヤー・サプライヤーも“共創DX”が新常識へ
調達購買やサプライヤーの現場においても、「一方的な命令・価格交渉」から「データを共有し、共に価値を上げるDX連携」へとパラダイムシフトが始まっています。
サプライヤーは“自社の提案や強み”をデータにより可視化し、バイヤーと新たな関係創出の主導権を持つことが可能です。
「なぜ価格交渉が厳しくなったか」「なぜバイヤーは品質や納期安定化を強く求めるのか」、その裏にあるバイヤーのKPIや経営層の“真の狙い”を理解し、DXで共に成果を上げる姿勢こそが、サバイバルの条件となるでしょう。
まとめ:DXで“人も会社も進化”する未来を描こう
経営指標に直結する効果が見えにくい、不透明だ――。
だからといってDXへの挑戦をやめる理由にはなりません。
むしろ、昭和のアナログ体質が今なお続く日本製造業にとって、“現場起点”“人起点”のDX改革こそが、持続可能な成長と最終的な経営数値の飛躍を実現できます。
調達購買・生産管理・品質管理――どの現場領域も「地に足のついたDX」で“強い現場”をつくりましょう。
そして、現場の知恵とデジタル化の“橋渡し役”を担うバイヤー・サプライヤーこそ、これからの製造業発展の鍵を握っています。
人が主役となるDX改革、“昭和の殻”を破り、新たな地平線を共に切り拓いていきましょう。
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