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BCP対策を見直すたびに例外が増える現実

目次
はじめに:BCP対策の現状と業界の苦悩
BCP(事業継続計画)は、近年の自然災害や地政学リスク、パンデミックを経て、製造業でも不可欠な経営課題になっています。
しかし、実際の現場でBCP対策を見直すたびに“例外”が増え、結局属人的な運用に陥ってしまう現実に、頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。
「理想のBCP」を掲げ、丁寧にフローを作り、対策マニュアルを整備したはずなのに、現場からは「この工程だけは例外」「こっちの材料は特別」といった声があふれがちです。
状況対応や突発時の柔軟さを尊重するあまりに、例外だらけの運用になっていく——このジレンマと、どう向き合えばいいのでしょうか。
本記事では、アナログな慣習が根強く残る製造現場のリアルな課題と、ラテラルシンキングを活用した新しいBCP対策のアプローチについて、現場経験に基づいて深掘りします。
現場に根付く「例外主義」と、その背景を探る
例外が生まれる典型的なパターン
製造業の現場でBCP策定を進める際、特に多いのが「例外事項」の乱立です。
例えば、資材調達のBOM(部品表)データベースに、なぜか現場手配の“裏ルート”が存在していたりします。
また、「あのサプライヤーは商社経由でないと手配が難しい」「この工程の品番は装置との相性が独特なので別管理」といった例外も、しばしば問題になります。
多くの場合、それらは“現場で生き抜くための知恵”や“過去のトラブル回避ノウハウ”の蓄積です。
標準化が叫ばれつつも、ベテランの職人技や人脈、アナログな対応力に頼って業務が継続してきた歴史が、今なお根強く影響しているのです。
なぜ例外は放置されるのか?
筆者が現場責任者としてBCPを推進した中でよく見られるのは、下記のような理由による例外の黙認です。
・業歴の長いベテラン社員の業務“ブラックボックス化”
・経営層からのトップダウンよりも現場の内規が優先される
・「前例主義」と「事なかれ主義」の空気(問題を掘り起こしたくない)
・新しい仕組み導入に伴う教育・システム改修コストへの消極姿勢
加えて、サプライチェーンが複雑になる中で、「理想どおりのBCPフロー設計」そのものが難度を増しています。
特に、下請け・外注工程が多い日本の製造業構造では、各社独自の“例外”が芋づる式に波及しやすいのです。
昭和型アナログ現場のジレンマと、その本質
なぜデジタル化・標準化が進まないのか
昭和から続くアナログな現場では、次のような特徴があります。
・図面や手順書の紙運用、FAX注文が主流
・部材単価・納期交渉が「顔の見える関係」で成立している
・購買実務が“人の信用”に依存している
BCP更新時に、このようなアナログ慣習ごと例外扱いされてしまい、真の標準化に至らないケースが⻑年繰り返されています。
現場では短期的な“現状維持”が優先され、本質的な業務変革が後回しになるからです。
属人化のリスク:なぜ経営危機になりうるのか
属人化が進む最大の問題は、“キーマン不在”=“業務停止”というリスクを孕むことです。
BCP再策定では「誰がやっても最低限継続できる仕組み」が求められますが、アナログ運用の下では、依頼ミスや伝達モレなどヒューマンエラーも多発します。
事業継続の観点からも、人に頼った“例外運用”を温存していると、危機発生時に脆弱性が一気に顕在化します。
「例外が多すぎてマニュアルが機能しない」リスクは、経営層も直視すべき本質なのです。
バイヤー視点で考えるBCP再点検の本当の意味
バイヤーが求める“柔軟性”と“標準化”のバランス
製造現場や購買担当者目線でみると、BCPは「危機時にも止めずに調達・生産を動かすためのしくみ」です。
一方で、実際に危機が起こった時は、標準フローへの“柔軟な例外対応”がどうしても要求されます。
バイヤーにとって最も重要なのは、“現場が動かなくなるリスク”を最小に抑えつつ、サプライヤーや工程ごとのバックアップ体制を維持することです。
そのためには、以下を意識したBCP見直しがポイントになります。
・現場から上がる“例外情報”を単なるイレギュラー扱いしない
・本当に必要な柔軟性(例外)は保ちつつ、属人化解消を優先
・「例外」発生時の意思決定フローを明文化しておく
・標準業務と例外フローの境界を定義し、デジタル可視化を進める
サプライヤーが知っておくべき“バイヤーの苦悩”
サプライヤー側は、往々にして「バイヤーのBCP要求=書類対応」と捉えがちですが、実際は現場ごとに違う例外対応が暗黙のうちに求められます。
「何を重要視しているのか」「どこまでが例外扱いなのか」の認識共有が十分でなく、トラブル発生時に混乱を招くことも少なくありません。
サプライヤーに求められるのは、バイヤー側の現場論理・BCP課題にも関心を持ち、納期や調達の“例外ケース”について協力的な姿勢を示すことです。
また、突発時の調整力やコミュニケーション力が、今後ますます重視されるでしょう。
BCP対策の「例外」を減らすには?現場視点での実践アプローチ
組織的な知見の蓄積と“暗黙知”の形式知化
BCP再点検のたびに例外が増える組織は、知見の形式知化(ナレッジ共有)が、まだ中途半端な段階にあります。
属人的ノウハウは定期的に洗い出し、その理由・背景も含めて棚卸しし、ドキュメントやデジタルデータ化することが有効です。
たとえば、
・購買や生産部門横断の「例外管理会議」の開催
・現場ヒアリングで過去の“隠れ例外”を可視化
・例外処理発生時のフローや意思決定まで標準マニュアル化
・クラウド管理によるリアルタイム情報共有体制の構築
こうした仕組みによって、属人性を脱し、現場全体で例外対応のナレッジが循環できる組織を目指します。
デジタル化とアナログ現場の共存戦略
一足飛びで完璧なペーパーレス・フル自動化は難しくても、部分的デジタル化の導入は可能です。
まずは「FAX→電子メール」「電話→チャットツール」「紙BOM→デジタル図面管理」といった小さな一歩が、事業継続性アップの最初の鍵になります。
現場に根付いたやり方を頭ごなしに否定せず、「必須業務の見える化」「例外発生時のトレーサビリティ確保」など具体的な目的設定をすると良いでしょう。
リーダーシップが牽引する現場変革
BCP強化における現場リーダーの役割も、ますます重要性が高まっています。
「例外をなるべく減らす」(属人化をなくす)ことは、単なるルール変更・業務移管ではなく、“現場が自律的に自己問答できる風土”を育てるマネジメントそのものです。
「例外」という現場の“生きた知恵”を切り捨てず、むしろ組織の総合力として再活用するリーダーシップが、変化の時代を生き抜く鍵になります。
まとめ:例外の乱立から抜け出るために、今すぐできること
理想的なBCPとは、現場の柔軟な知見と、経営視点からの標準化・組織化をバランスさせたものです。
そのためには、例外の根絶ではなく、“例外を吸収しながらも自律的に継続できる業務基盤”づくりが最終目標となります。
・現場で増え続ける例外事項は、リアルな課題となって表れた“現場の声”である
・アナログな伝統と、デジタルの利点を両立する“過渡期マネジメント”が重要
・サプライチェーン全体で“例外発生時に協力し合える関係づくり”も不可欠
読み進めていただいた皆様が、自社のBCP対策や現場改善の一助として、明日から一歩踏み出すきっかけになれば幸いです。