投稿日:2025年9月9日

ドラッグストア市場に参入しやすいOEM消耗品のジャンルとは

はじめに:ドラッグストア市場の成長とOEM参入の魅力

ドラッグストア市場は近年、健康志向の高まりや高齢化社会の到来といった社会的背景を受けて、着実に拡大しています。

消費者のライフスタイル変化に柔軟に対応しながら、日用品、消耗品ジャンルの商品ラインナップが拡大し続けているのが特徴です。

こうした中、小規模メーカーや新興企業がOEM(Original Equipment Manufacturer)という形態でドラッグストア市場に参入する動きも活発になっています。

特に、消耗品ジャンルは比較的初期投資が少なく、需要も安定していることから、新規参入のハードルが低いと言われています。

しかし、実際にはどのジャンルが狙い目で、どのような業界動向や現場的な工夫が必要なのでしょうか。

今回は、現場での20年以上の経験を活かし、深く実践的な視点で「ドラッグストア市場に参入しやすいOEM消耗品のジャンル」について考察します。

OEMで狙いやすい消耗品ジャンルの選定基準

OEMでドラッグストア向け商品を生産・供給する場合、ジャンル選定は極めて重要です。

参入しやすい消耗品ジャンルには、次のような基本的な特徴があります。

1. 市場規模が大きく、需要が安定していること

定番消耗品は、景気や流行に左右されにくく、常に一定の需要があります。

代替性が高い商品(例:ペーパータオルやウェットティッシュなど)は特に狙い目です。

2. 商品規格がある程度標準化されており、OEM対応が容易であること

オリジナル開発のハードルが高い商品より、仕様がほぼ決まっている汎用品のほうがOEM設計・製造への落とし込みが簡単です。

3. 独自性やブランド差別化がしやすいこと

パッケージ変更やちょっとした機能追加で差別化できるジャンルは、OEM立ち上げ後も売上拡大が期待できます。

配合成分や形状のアレンジによって付加価値を生みやすい衛生用品などが当てはまります。

4. 法規制・認証取得のハードルが低いこと

医薬部外品や食品衛生法など特別な規制がかからない日用品が、スピード感のある市場参入に適しています。

現場目線で厳選!参入しやすいOEM消耗品ジャンル5選

これらの基準をもとに、20年以上大手メーカー現場で見てきた「参入しやすいおすすめ消耗品ジャンル」を具体的に5つご紹介します。

1. ウェットティッシュ・アルコールシート

ここ数年で利用シーンが爆発的に広がった消耗品カテゴリーです。

OEMで数種類の液剤、シート厚み、ロット単位など仕様バリエーションが出せる点、パッケージデザインによる差別化も容易です。

昨今の感染症対策需要により、市場のパイが大幅拡大しており、低コスト製造体制を確立できれば利益もしっかり確保できます。

ドラッグストアでは「特定店舗限定パッケージ」「大容量パック」など独自の要望も増えており、OEMならではの細やかな対応力が重宝される分野です。

2. キッチン用消耗品(ペーパータオル・スポンジ・フリーザーバッグ等)

家庭内で日常的に消費されるアイテム群です。

メーカー既存ラインを間借りするOEMスキームが広く浸透しており、小ロット・多品種も柔軟に対応可能となっています。

特にペーパー類はパルプ素材の選定やサイズ・厚み調整によるオリジナリティ付加、エコ素材のアピールなど、ドラッグストアのPB(プライベートブランド)展開にも適したジャンルです。

欧米ではエコ素材や再生紙利用のアイテムが伸びており、今後は日本でも環境負荷低減型の消耗品OEM化が市場をリードする動きになるでしょう。

3. 衛生・介護用消耗品(マスク・手袋・おしりふき他)

高齢化社会を背景に、一定の需要が見込めます。

これまで病院・施設中心だった商材が、在宅介護やセルフメディケーションの広がりによって家庭向けに拡大しています。

医療系消耗品は一部認可や安全基準のハードルが上がるものの、簡易マスクや家庭用手袋などはOEM参入も容易です。

不織布メーカーとの連携や海外生産拠点の活用で、コスト競争力も出しやすいのが特徴です。

また、パッケージ単位のバラエティや機能拡張(除菌剤配合、敏感肌対応など)が小ロットにも適用できるため、ドラッグストア側としても売場拡大がしやすいジャンルです。

4. 洗剤・クリーナー(住宅用・衣料用・台所用洗剤等)

洗剤類は繰り返し消費される典型的な消耗品でありつつ、配合レシピやパッケージでのOEM差別化が可能です。

ドラッグストアでは「肌にやさしい」「除菌」「香りつき」「詰替え大容量」など消費者ニーズの細分化が見られ、OEMによる限定品・機能追加商品が効果的です。

規制面では、医薬部外品や指定化学物質以外の商品を選べば、OEM化のハードルはさほど高くありません。

生産管理現場経験から感じるポイントとして、リキッドタイプ(液体)よりも粉末・タブレット形状のほうが充填・包装工程が簡単でOEM導入しやすい場合が多いです。

5. ヘルスケア雑貨(使い捨てカイロ、冷却シート等)

季節変動型商品のため生産計画の難しさはありますが、OEMでの単品投入がしやすいジャンルです。

主要原材料とメーカー既存ノウハウを組み合わせやすく、PB化やキャンペーン用パッケージ展開も軽いフットワークで可能です。

また、使い捨てカイロや冷却シートは、技術的には成熟産業であり、海外OEM先の選定も容易です。

安定受注が期待でき、売価・付加価値ともに調整しやすい消耗品として、新規OEM参入におすすめです。

昭和から続く慣習と新時代のOEM消耗品戦略

製造業や流通業界、特にドラッグストア業界は、今なお昭和時代に形成された商慣習や構造が根強く残っています。

バイヤー(購買担当者)視点やサプライヤー(OEM製造者)の立場から、押さえておくべき現場ならではの動向と注意点を解説します。

バイヤーは“実績”と“安定供給”を重視

OEM新規参入の場合、「既存のOEM実績」「安定供給の体制」などをまず問われます。

これまでの取引関係を大事にする昭和的商慣習が今も残っているため、最初の数回は小ロット・短納期など、バイヤーの要望に寄り添ったフレキシブルな対応が重要です。

また、ドラッグストア各社は自社PB強化を進める一方、急激な需要増減や店頭要望に臨機応変に応えるOEM先を高く評価する傾向があります。

“安定供給”アピールのため、サプライチェーンの複線化やサンプル納入の即応性など、地味ですが現場で気をつけるべきポイントです。

“伝票文化”や“FAX発注”など業界のアナログな壁

導入初期には「見積→受注→納品→伝票→請求」など、紙やFAX、 Excel運用が主流のクライアントも多く、電子化が遅れているのが現実です。

そのため、事務処理力や現場でのコミュニケーションスキルも、他業界以上に重要視されることがあります。

今後はDXの波が確実に押し寄せてきますが、現時点で柔軟な“昭和対応”ができるOEM先は重宝され続けるでしょう。

現場感覚を活かし、きめ細かい受発注体制を用意しておくことが第一歩です。

OEM消耗品参入で気をつけたい品質・生産管理のプロ視点

慣れないOEM生産では、時に想定外の苦労や失敗もつきものです。

現場経験からの注意点をいくつか挙げておきます。

過剰仕様・過剰包装にならないバランス感覚

バイヤー要望を聞きすぎて、無意味に過剰な品質や豪華なパッケージにならないよう注意が必要です。

コスト競争が激しく、最終的に価格面で競合に負けてしまうリスクも。

“顧客との対話”を丁寧に行い、何が本当に必要なスペックなのか見極めるスキルが大切です。

短納期オーダー増加への柔軟な生産計画

ドラッグストアの販促企画や店頭キャンペーンに連動して、急な大口受注や短納期オーダーが発生しがちです。

現場では、複数SKUを同時平行生産できるライン整備、小ロット・高頻度生産への対応など、柔軟性を持たせることが問われます。

人員配置や工程設計に“ゆらぎ”を前提としたマネジメントができると、バイヤーの信頼も厚くなります。

クレーム対応・品質保証の差別化

消耗品であっても、製品不良・欠品・異物混入など現場でのアクシデントは避けられません。

品質保証の体制構築、トレーサビリティの書面整備、現場レベルのQU(品質向上)施策をアピール材料として用意しましょう。

ドラッグストアでは一度の事故が自社PB全体の信用失墜にも繋がるため、現場発のきめ細かな品質管理がOEM参入の肝となります。

まとめ:OEM消耗品ジャンルで新たな市場地平を拓く

製造業現場の視点から、ドラッグストア市場に参入しやすいOEM消耗品のジャンル選定や現場での注意点について解説しました。

OEMは、既存設備やノウハウを新たな形で活用し、安定した需要のある消耗品市場にフレキシブルに参入できる魅力的なスキームです。

昭和時代から続く業界のアナログな慣習や文化と向き合いながらも、新しい市場トレンドや消費者のニーズにラテラルシンキングで応える。

現場の知見と工夫を積み重ねれば、OEMジャンルでも自社ならではの存在感を発揮し、新たな市場の地平を切り拓くことができるはずです。

製造業に携わる皆さんの挑戦に、本記事が少しでもヒントとなれば幸いです。

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