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リサイクルに役立つ解体容易接着技術と粘着剤応用解説

目次
はじめに:製造業におけるリサイクルの重要性と現状
製造業の現場では、環境規制の強化や循環型社会への転換によって、リサイクルへの対応が避けられない課題となっています。
特に、自動車や家電、電子機器など複雑な構造を持つ製品では、部品の分別や素材ごとのリサイクル効率が大きなテーマです。
従来型の組立や接着では、完成品を解体してリサイクルする際、分離や分別に多大な手間やコストがかかるだけでなく、部材の破損などによりリサイクル品質を損なうケースも多々ありました。
これに対し、解体容易接着技術や粘着剤の応用は、リサイクル現場に大きな革新をもたらしつつあります。
今回は、これらの新技術の原理と実践的応用、そして「現場目線」での課題や可能性について、深く解説します。
解体容易接着技術とは:原理と背景
なぜ「解体容易性」が求められるのか
特に自動車や家電では、多様な材料(金属、樹脂、ゴム、ガラス、複合材料など)が複雑に接合されています。
従来は効率よくばらせずに「一括破砕して熱回収」などに頼っていましたが、
・材料別回収率の向上
・サーキュラーエコノミー推進
・CO2排出量低減
が求められる現代では、「組み立てやすく、そして解体しやすい」プロダクト設計=Design for Disassembly(DfD)が重要になっています。
技術の潮流:接着剤選定から分離プロセスまで
なかでも注目すべきは、「熱」「水」「紫外線」「電気」など、何らかの外的作用を加えることで、接着力を自在にコントロールできる“解体容易型”接着剤や粘着剤の登場です。
例えば、
・ある温度以上で急激に接着力が低下する「熱分解接着剤」
・高周波やマイクロ波で軟化・剥離する樹脂
・紫外線照射によって分子構造が変わり脱着可能になる材料
・水や特定の溶媒で可逆的に分離できる粘着剤・両面テープ
などがあります。
これらの技術の基盤には、化学分野の進歩や制御理論、さらに環境負荷低減の最適化思考が存在します。
リサイクル現場での具体的な応用事例
自動車産業:バンパーやダッシュボードの分離
自動車のバンパーやインパネ部分には、異なる素材が複雑な形状で使われており、かつ「静的強度」「耐衝撃性」「耐候性」など多様な性能が要求されます。
そこで、普段は高い接着力を持ちつつ、解体時には加熱やUV照射などで容易に分離できる接着剤が重宝されています。
こうした材料によって、リサイクル時の手作業や機械的破砕の負担が大幅に削減され、樹脂や金属のアップサイクル率向上につながっています。
家電・電子機器:スクリーンやバッテリーの取り外し
近年のスマートフォンやノートパソコンでは、「ユーザーによる修理容易性」および「廃棄時リサイクル性」が設計要件としてますます重視されるようになりました。
画面パネルやリチウムイオンバッテリーの固定には、従来型の強力粘着テープだと分解作業に支障をきたしていましたが、
・特定条件で“ピール”できる可逆性粘着テープ
・ドライアイス噴射や低温処理による剥離
といった工法が現場に導入されています。
新たな取り組み:組立ロボットと連動する解体技術
工場自動化の観点でも、組み立てだけでなく“ロボットによる分解工程”が開発されています。
接着剤・粘着剤の反応条件が可視化・制御可能であれば、分解用ロボットとのシンクロが容易となり、「ジャストインタイム」に近い分解と資源回収が現実のものとなっています。
なぜ製造業現場で“アナログ”が根強いのか?課題と対応策
アナログ的な制約と現実的なハードル
日本の製造業、とくに昭和から続く大手・中堅工場では、熟練オペレーターによる現場主義が根強く、そもそも「従来の接着剤で十分」と考える傾向が残っています。
背景には、
・材料費やプロセスコストへの過剰なコスト意識
・“見える化”されていない解体・リサイクル作業の負担
・長期トータルコスト(TOC)を設計段階で追いきれない文化
が複合的に絡んでいます。
現場で求められる変革の実践ポイント
これらの壁を乗り越えるための現実的な方策としては、
・現場リーダーやバイヤーが率先して「リサイクル視点」の部材・接着剤選定を行う
・試作やライン生産の段階で「解体プロセスも実機検証」し、工数や品質データを蓄積する
・サプライヤー側からも新技術の情報発信やデモ提案を働きかける
ことが挙げられます。
また、リサイクル効率の可視化(KPI化)や、CO2削減インセンティブとの連動など、調達購買部門と現場が一体となる仕組み作りも、今後必須となるでしょう。
バイヤー目線・サプライヤー目線で考える「解体容易接着」の採用ポイント
バイヤー:全体最適の視点でサプライチェーン設計
バイヤーが最も気にすべきなのは、「価格」「リードタイム」だけでなく、「将来の廃棄・リサイクル時に生じる負担やコスト」までも加味した全体最適の視点です。
たとえば、初期費用がやや高価な分離型接着剤でも、廃棄・リサイクルコスト低減や、自治体・業界からの環境ポイント獲得等、
トータルで効果が見込める場合は積極的な採用判断が求められます。
また、「他部署(開発・生産技術・品質・環境推進など)」との密な連携と同時に、サプライヤーからの現場実証データや最新動向の情報収集も欠かせません。
サプライヤー:現場の“解体手順”を提案価値として訴求せよ
一方でサプライヤーは、「納品すれば終わり」とせず、自社の接着剤・粘着剤が解体現場でどう扱われるか――
すなわち、
・時間あたり剥離効率
・分離後の素材ロス・品質保持
・現場作業者の安全性/効率性
などの“使い勝手”まで含めて自社技術・製品を提案できるかが差別化ポイントとなります。
とくに、実証動画やワークショップなど、五感で伝わる資料/体験の提供が現場担当者への強い説得材料となります。
最新事例と今後の課題・展望
先進的な取り組み例
2023年時点で欧州主要自動車メーカーや大手家電メーカーでは、「一部モデルで全結合部の50%以上を解体容易型接着剤に変更」し、年度毎に再資源化率の向上を達成しているケースも報告されています。
国内でもEVメーカーや大手電機が次世代組立ラインに採用を進めており、素材メーカーや接着剤サプライヤーが協働で技術開発を加速させています。
今後の課題
とはいえ、接着強度や耐久性とのトレードオフ、コスト最適化、サプライチェーン全体の連携不足など、越えるべきハードルは山積です。
また、現場での教育・展開不足や、新旧技術の“共存”期間に発生するノウハウギャップにも注意が必要です。
将来的には、AIやIoTと連動した「製造から解体まで一元管理型プロダクト」開発や、
データベースを用いた適正リサイクル記録など、さらなるラテラルシンキングに基づく改革が期待されます。
まとめ:製造業の現場から社会・産業全体への波及効果
解体容易接着技術や粘着剤応用は、その化学・素材としての進歩だけでなく、
組織横断的な合意形成や現場文化の変革をどう進めるかという、極めて実践的かつ戦略的な課題でもあります。
現場で働く技術者、バイヤー、経営層、サプライヤーが互いに「リサイクル主眼で長期的視点を持つ」ことで、
単なるコストカットや効率化を超え、「持続可能な産業」「真の競争優位」の実現が可能になります。
本記事を通じ、解体容易接着技術の現場的な“使える知識”と未来への展望が、読者の皆様の業務、キャリア、そして業界の発展につながる一助となれば幸いです。
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