投稿日:2025年12月27日

リアクトルコア部材の材質違いが発振に与える影響

はじめに

リアクトル、すなわちコイル(インダクタ)は、電源回路やインバータ回路などさまざまな製造業のシーンで欠かせない部品です。
その心臓部であるコア(磁心)にどのような部材が使われているかは、性能に直結する重要な要素となります。
特に、コア材質の違いが電気的なロスや耐久性だけでなく、時として「発振」という重大な問題を引き起こすことは、現場の設計や調達担当者にとっての大きな関心ごとです。

本記事では、リアクトルコア部材の材質が発振現象にどのような影響を与えるかについて、製造現場のプロとしての実体験や業界の動向などを踏まえ、分かりやすく解説します。
また、バイヤーやサプライヤーそれぞれの立ち位置で何に注意すべきか、現場の視点も織り交ぜて掘り下げていきます。

リアクトルコアの部材種類とその特徴

フェライトコア

フェライトコアは、マンガン、亜鉛、鉄などを主成分とした酸化物系磁性体です。
安価で大量生産に向いており、高周波特性が優れているため、スイッチング電源やノイズフィルタとして幅広く使われています。
一方で、十分に管理された製造工程下でない場合、成分配合のわずかな違いや内部の気孔・クラックが、特性差やランダムな振る舞いを引き起こします。

アモルファスコア(非晶質合金)

アモルファスコアは、鉄、コバルト、ニッケルなどの合金を急冷し、結晶構造を持たない非晶質状態にしたものです。
損失が非常に低く、飽和磁束密度も高いため、エネルギーロスの低減が求められる高効率リアクトルや高級変圧器に使われます。
ただし、材料コストが高く、加工難易度も高いため、量産品ではあまり一般的とは言えません。

パーマロイやケイ素鋼板などの金属板コア

伝統的なリアクトルでは、パーマロイやケイ素鋼板(シリコンスチール)を積層したラミネーションコアが使われてきました。
扱いやすく加工性も良好ですが、高周波域では渦電流損失が顕在化しやすいため、用途が限定されます。
近年では、材料メーカ独自の薄板化技術やコストダウンがおこなわれ、依然として業界で根強く使われています。

リアクトルコア材質と発振のメカニズム

発振の基本的な発生要因

発振とは、回路や設備本体が想定外に自己発振(振動)し、ノイズや異音、場合によっては制御不能となってしまう現象です。
リアクトルのコア材質による発振は、主に下記の要因によって引き起こされます。

– コアの磁気特性のばらつきによるインダクタンス変動
– 損失特性(ヒステリシスロス・渦電流ロス)による熱発生→構造体の熱膨張・振動
– 高周波領域でのパラジック共振の誘発
– 磁歪(磁界によりコア材が微小な伸縮を繰り返す現象)による音響・振動の発生

フェライトコアでの発振リスク

フェライトコアは、高周波では優れた低損失特性を持つ一方、共振ポイントにピークが鋭く現れることが多いです。
コイルの巻き数や配置によっては、特定条件下で自己共振周波数付近での発振を引き起こす場合があります。
また、コア内部に形成されるマイクロクラックや空隙が、ローカルな磁束集中を生み、部分的な高温化と磁歪ノイズの原因となります。
現場でよく経験するのが、出荷直後は問題ないのに、しばらく稼働させ続けると特定の周波数で「ジーッ」「キーン」と高周波音が出始める現象です。
これは、フェライト材質のばらつきと、経時での劣化・応力付着による磁特性変化が絡んで発生することが多いのです。

アモルファスコア・金属板コアの特性

アモルファスコアや金属積層板コアでは、フェライトコアよりも磁歪が顕著です。
材料自体が金属なので磁界印加時に微細な物理振動=磁歪音が必ず生じます(いわゆるヒュージングノイズ)。
このため、コアの固定・樹脂含浸・振動吸収設計が不可欠となります。
ただし、損失が少なく熱暴走しにくいのが特長で、トータルの安定性は高いと言えます。
また、アモルファス材質は経時安定性に優れ、部材ばらつきによる発振トラブルは比較的少ないですが「初期不良率」が問題となることがあります。

仮想事例:コア材質違いによる現場トラブル

かつて量産ラインで稼働するインバータ装置用リアクトルにおいて、仕入先をA社(フェライトコア)、B社(アモルファス)に切り替えたところ、B社製品で顕著な「異音発振」が多発しました。
調査の結果、巻線部の張力&コアの固定強度設計がA社品仕様のままとなっていたことが判明し、アモルファス特有の磁歪特性に十分対応できていなかった、という事案がありました。
材質間の物理現象だけでなく、その後ろにあるメカ設計や品質保証体制も現場では重要となるポイントです。

材質選定時に重視すべき視点

バイヤー・調達担当の役割

バイヤーは「コスト」と「安定供給性」だけでなく、最終製品の用途ごとに求められる信頼性や運用現場でのリスク許容度も理解する必要があります。
リアクトルにおいては、単にインダクタンス値やコスト、納期だけでなく
– どのコア材質がどのような発振特性・耐久性リスクを持つか
– 仕入先の材料品質管理水準(ロットばらつき・トレーサビリティ)がどうか
– 過去に現場でどんなトラブルが起きたか
こうした「現場のナレッジ」をきちんとヒアリングし、幅広い視点で材質選定を行うことが肝要です。

サプライヤー側が知るべきバイヤーの、現場の本音

調達側が資材コスト低減やリードタイム短縮を重視しているのは事実ですが、本質的には「納入後の安定稼働保証(クレームリスクの極小化)」を強く意識しています。
材質スペックの開示や特性ばらつきグラフを資料で渡すだけではなく、事前の信頼性試験や「現場でよく起きる磁歪発振」などの具体的事例・抑制策も説明することで、「さすが理解しているな」と信頼が高まります。
むしろ「納入後に万一発振トラブルが発生した場合、どう解析・対応してくれるか(バックアップ体制)」までセットで伝えることが重要です。

発振を防ぐための具体的なアプローチ

最適なコア材質選定のプロセス

– 使用回路(周波数帯域・電流容量)の明確化と発振リスク分析
– 定性的な磁気特性/損失特性だけでなく、ロットごとの特性分布の差異を確認
– 巻線方式やコア固定構造、含浸樹脂有無など、全体設計との相互関係の評価
– 必要に応じ、実負荷・実回路レベルでの評価試験

サンプル評価と現場でのフィードバック活用

新規採用部材は、現場で数ロット・数ヶ月単位で使ってみて、「季節変動・定常稼働時間・ワーク負荷」の条件を変えてフォローアップします。
発振は環境要因とも強く関係します。
エンドユーザからの「異音・ノイズ」の声を早いうちから拾い、不具合/故障解析部門と連携する仕組みも、製造業大手では必須となっています。

昭和的アナログ現場の業界動向と今後

大手製造業でいまだに根強い「型番指定」「長期的な材質据え置き」文化の中、コスト要請や海外生産シフトの波にさらされています。
しかし、リアクトルのコア材質選定だけはデジタル管理だけでは解決しきれず、「現場感覚に基づいたリスクヘッジ力」「長期信頼性評価」が引き続き重視されています。
これからはAIによる予知保全やデジタルツイン解析が進む一方、異音や発振といった「現場ならではの肌感覚」に基づく異常検知・フィードバックの仕組みが強く求められるでしょう。

まとめ

リアクトルコア部材の材質違いが発振に与える影響は、単なる磁気特性の違いだけでなく、製品設計、製造現場、品質管理体制、そして現場の「実運用」まで幅広い領域が絡んだ問題です。
バイヤー・サプライヤーの双方が現場のリアリティを共有し、材料・設計・検証・運用まで俯瞰したプロセスを確立することが、品質トラブルを未然に防ぎ、顧客信頼を守るために不可欠です。

これから調達・品質・技術・営業が一体となり、次世代の製造現場でより高度な「現場発の課題解決」を実現できるよう、本記事が一助となれば幸いです。

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