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IEの効果的な活用と生産性向上への改善応用・事例

目次
はじめに ― IE(インダストリアルエンジニアリング)とは何か
製造業を取り巻く環境はここ数十年で大きく変化しています。
しかし、現場の実態を見ると、熟練工の勘や経験、過去のやり方を重視する「昭和型」からなかなか抜け出せていないという声も少なくありません。
そんな中でも、IE(インダストリアルエンジニアリング)の考え方と手法は、時代を超えて現場改善の強力な武器となっています。
IEは、作業や工程分析を通じて「ムリ・ムダ・ムラ」を見える化し、最適な生産システムの実現に貢献する技術です。
本記事では、IEの基本と、その効果的活用法、現場で実際に成果を上げた事例、さらに現代アナログ業界でも活用できる具体的な改善応用アイデアをご紹介します。
バイヤーやサプライヤーとして現場をよりよくしたい方、最新動向を押さえたい方は必見です。
IEの基本概念と現場での重要性
IEとはIndustrial Engineeringの略で、日本語では「生産工学」や「作業研究」と呼ばれます。
主な目的は、「人」「設備」「材料」「情報」などのリソースを最適に組み合わせ、生産性や品質、安全性の向上、コストダウンを目指す点にあります。
IEの初心者にも分かりやすい基本要素には、以下があります。
作業分析と動作研究
作業分析は、現場で人が行う各作業の流れや内容を細分化し、「なぜその作業をしているのか」を問い直します。
たとえば、部品の運搬・組立・検査など、それぞれの作業手順や動作にムダがないかを調べます。
これに対し動作研究は、「手をどれだけ動かしているか」「歩数はどうか」「手待ちや探す動作は発生していないか」など、さらにミクロな視点に立ち、一つひとつの動きを検証します。
工程分析とレイアウト改善
工程分析は、製品が工場内をどのように流れていくのか、そのルートや順序、リードタイムを可視化します。
レイアウト改善は、作業ステーションの配置や設備導線を最適化する取り組みです。
これにより、ムダな運搬や作業ロス、品質リスクの低減が実現できます。
標準作業とマニュアル化
IEの成果として必ず「標準作業の明確化」「マニュアルの整備」が伴います。
属人的なやり方から脱し、誰でも同じ品質・同じ速度で作業できる環境を構築することが、現場力の底上げにつながります。
IEが日本の製造現場でもたらした実績
日本の製造現場では、IEの考え方が1950年代から普及し始め、その後の高度経済成長期、さらにはバブル崩壊後の合理化局面において多くの成果を上げてきました。
その中でも代表的な事例をいくつかご紹介します。
トヨタ生産方式に見るIE手法の活用
トヨタ自動車の「ジャスト・イン・タイム」や「カンバン方式」は、IEの理論に基づいて進化してきました。
– 工程間の在庫を「見える化」し、必要な部品を必要な時にだけ供給
– 組立ラインでの無駄な動きをIEで分析し、動作・レイアウトを最適化
– 1人作業から多能工化に移行し、標準作業を徹底
これらにより、生産性が飛躍的に向上し、少品種大量生産から多品種少量生産・変種変量生産への柔軟な対応が可能となりました。
電子部品業界のケース
ある大手電子部品メーカーでは、部品実装の前後工程にIE手法を適用しました。
– 工程分析から「余剰在庫移動」「検査工程の手待ち」が発覚し、標準作業の再設計
– 動作研究により、部品供給棚の配置見直しとトレー設計を変更
結果として現場の歩数が30%減、手待ち時間が40%短縮し、生産数量で月2割アップを実現しました。
食品工場における動作経済の導入
食品工場では、ライン作業の効率化が命題です。
IE手法の一つである「動作経済の原則」を活用し、以下を実施しました。
– 右手/左手同時動作や体の最小動作量で効率アップ
– ピックアップ位置を改善し、手の往復幅を2/3に削減
これにより、作業員の疲労も軽減し、製品の品質安定にも貢献しました。
昭和型アナログ現場でIEを根付かせるには
日本の多くの製造現場では、未だに「伝票主義」「現物主義」「個人頼み」のアナログ文化が色濃く残っています。
IEのメリットを最大化するには、どのような施策が有効なのでしょうか。
現場に「納得感」と「共感」を育てる
改善活動は「管理者が一方的にやらせるもの」と捉えられがちです。
まず現場作業者に「これなら自分たちでも続けられる」「業務が楽になる」という納得・共感を得ることが大前提です。
そのためには小さな成功体験の積み重ねと、現場の声を拾い上げる仕組みづくりが不可欠です。
可視化と見える化の徹底
IEのこだわりは「言葉ではなく数字・図表で示す」ことにあります。
– 誰でも分かる現場スナップ写真、作業動画の撮影・共有
– 作業分析シートや工程フローチャートの掲示
– 件数、歩数、時間など定量データの白板管理
これらを駆使し、「なんとなく改善している」から「数値で効果が見える」活動へ転換します。
標準化からカイゼンの習慣化へ
標準化は一度作って終わりでは意味がありません。
「標準作業+カイゼン=現場力アップ」を合い言葉に、日々のPDCAサイクルを根付かせます。
たとえば日次・週次のミーティングで「昨日より今日、一歩でもよくしよう」という文化を作り出せば、自然と持続的改善(カイゼン)の習慣が定着します。
デジタル時代のIE手法 〜ヒトとITの最強タッグ〜
近年はIoT、AI、ビッグデータなどデジタル技術が製造業にも波及しています。
これら先端技術とIEを組み合わせることで、さらなる競争優位が築けます。
IE×IoT:現場データのリアルタイム収集と分析
– 各工程の稼働率や手待ち時間をセンサーで自動取得
– 作業員の動作ログや工場内の移動経路を可視化
– データがそのままIE分析の材料に
データの「現場観察」+「自動収集」で、熟練技術とヒト頼み改善の限界を突破できます。
IE×AI:最適化&シミュレーションの活用
– レイアウト変更や工程短縮の効果をAIで事前に予測
– 多品種少量生産でも、IEアルゴリズムで迅速な最適解を導出
デジタルIEは、アナログ改善の数倍速で、精度・実効性を高めてくれます。
バイヤー・サプライヤー双方に伝えたいIE的思考法
生産現場の改善は「自社だけ」「現場だけ」で完結しません。
部品・材料サプライヤー、物流企業、外注先―あちこちの工程・人が複雑に連携しています。
バイヤーに必要なIE思考
– 現場起点でサプライヤー選定基準を設ける
– 現場改善提案型のパートナー関係を築く
– 「コストダウン=値下げ」だけでなく、工程そのもののIE改善を引き出す
サプライヤーに必要なIE思考
– 顧客の「なぜそのスペック・納期なのか」を知る
– 自社工程だけでなく納入後工程への影響も分析
– 提案型改善活動を通じた信頼獲得・価格競争力アップ
バイヤー目線とサプライヤー目線を両方備えたIE思考は、バリューチェーン全体で価値を創出できます。
現場IEの最前線を切り拓く視点とラテラルシンキング
IEは成熟した既知のノウハウとして捉えられがちです。
しかし、課題設定と改善手法を問い直すことで、新しい地平線は常に拓かれます。
ラテラルシンキングで現場IEをアップデート
– 1つの工程改善を「他部門」「他工場」に展開できないか
– サプライヤーや顧客の工程データも取り込んで分析できないか
– 通常工程だけでなく「異常対応」「設備トラブル時」まで含めて標準化できないか
既存のIE手法にとらわれず、「なぜ?」を重ねて深掘りすることで、新しい改善の種を発見できます。
まとめ ― IEでつかむ、製造現場の明るい未来
IEは「現場のムリ・ムダ・ムラを見える化し、具体的な改善策を創出する」ための不変の技術です。
アナログな職人技と最新デジタル技術を橋渡しするIE手法は、今後ますます重要性が高まります。
現場主義のリアルな「気づき」と、新たな価値創造につながる「ラテラルシンキング」を掛け合わせ、自社・自工程の枠を超えた次世代のものづくり推進に挑戦しましょう。
IEを武器に、皆さまの生産現場が一層輝くことを心から願っています。
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