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レトルト食品の開発と製造委託における効率的プロセス設計

目次
はじめに―レトルト食品業界の今と課題認識
レトルト食品は共働き世帯や高齢化社会の進展、即席食品需要の拡大を背景に市場が拡大し続けています。
一方、業界にはいまだアナログな業務が多く残り、現場の担い手の高齢化、人手不足、そして持続可能性への対応が急務となっています。
レトルト食品の開発や製造委託(OEM)は、単に「おいしい商品を作る」だけではなく、QCD(品質、コスト、納期)バランス、リスク管理、コミュニケーション、トレーサビリティ、そして自動化・DX対応と多くの側面で高度化が求められています。
本記事では、現場目線を徹底し、抜本的な効率向上を実現するプロセス設計の着眼点と実践的なノウハウを解説します。
これからOEM依頼を検討しているブランド企業や、委託先企業との関係を深めたいバイヤー、さらに製造側の立場でバイヤー心理を把握したいサプライヤーに向けて、リアルな情報を提供します。
レトルト食品開発・製造委託の全体像
OEM/ODMとは ― 始まる前に知るべき構造
レトルト食品の開発・製造委託では、主に以下の形態が採られます。
– OEM:発注側が製品のレシピ・コンセプトを示し、製造委託先(工場)が指定どおり生産する
– ODM:製造委託先がレシピ・技術も含めて設計・製造し、発注側ブランドで販売する
どちらの場合も、市場ニーズ・競合分析からスタートし、仕様設計、試作・テスト、量産、そして出荷・納品まで一気通貫のプロセスが必要となります。
ここで肝となるのは、どちらもプレイヤー(バイヤーとサプライヤー)が共同作業を繰り返す「多様な折衝」の現場であるという点です。
委託先(OEM先)工場の特性を理解する
レトルト食品を請け負う工場には、缶詰・びん入り食品ラインから、真空パウチ、無菌充填、自動化・IoT制御ラインまで、設備・技術力に差があります。
自社の開発希望商品スペックが「どの工程・設備」に当てはまるのかを把握し、実現可否を見極めることがプロジェクト成功への第一歩です。
– 自動レトルト釜工程
– 全自動充填・封印システム
– 原材料前処理(野菜カット、下処理、味付け)
– 金属探知・異物選別
– ロット管理・トレーサビリティシステム など
現場への「丸投げ」にならないよう、開発フェーズごとに何が求められているかを可視化・共有することがポイントです。
効率的なプロセス設計のステップ
1. ユーザーベネフィットを中心に据えた要件定義
アナログ業界の悪癖の一つに、「とりあえず前例通り」でスタートしてしまうことがあります。
現場で失敗しないために最も重要なのが、バイヤーとサプライヤー間で初期に「顧客価値(ユーザーベネフィット)」を徹底的に共有・すり合わせることです。
– どんな顧客層に届けたいのか
– 想定する使用シーン
– 付加価値(高級感、健康志向、保存性等)
– 独自性(味、素材、食感、パッケージ等)
– 必須とする仕様(アレルゲン、ロットサイズ、包装、賞味期限)
この部分が曖昧なままで委託すると、「本質的には売れない商品」を大量生産するリスクが高くなります。
2. 設備・工程に合わせた逆算仕様設計
仕様決定では「理想のレシピ」だけでなく、「工場の制約」に着目した逆算設計が現場効率のカギです。
– レトルト殺菌温度・時間の既存ノウハウ
– 原材料供給ロットと回転率
– アレルゲン管理(ライン洗浄工程等)
– 包装・パウチ規格(サイズ、形状、耐熱性)
– 最終パッケージへの自動搬送可否
– 出荷ロットの柔軟性
サプライヤー現場はベテラン担当者の「阿吽の呼吸」で動いてしまいがちですが、今後は誰でも再現できる工程設計、書類化されたワークフローが必須となります。
3. コスト・納期・リスクを横断管理
見積比較だけで委託先を選ぶと、量産移行時に「安かろう悪かろう」トラブルを招くリスクがあります。
長年の現場経験から言えるのは、「突発対応力」「生産変動対応力」「品質検査体制」の水準を具体的にヒアリング・現場確認することの大切さです。
– 原材料調達リスク管理(サプライチェーン切断時のBCP対応)
– 機械トラブル・設備メンテ周期・稼働安定性
– 社員教育状況(マニュアル有無、QC活動等)
– 品質保証・ISO等の取得状況
バイヤー視点では、「何かあった時にどこまで柔軟に対応してくれるか」がプロジェクト全体の成否を左右します。
昭和的アナログ思考からの脱却ポイント
「暗黙知」に依存しないDX・自動化の推進
いまだに多くのレトルト食品メーカーでは、リーダーやベテランへの口頭依存、FAX・紙伝票のやり取り、判子文化が根強く残っています。
この「昭和的アナログ思考」が、異物混入や納期トラブル、品質バラツキの温床となっています。
今後は以下が業界のスタンダードとなるでしょう。
– 工程別のIoTセンサーデータ取得・蓄積と異常検知
– 生産進捗の可視化(現場モニター、クラウド連動)
– 作業指示・品質記録のデジタル化
– トレーサビリティ管理のリアルタイム対応
このDX推進における最大の障害は「現場抵抗感」と「コスト意識」です。
プロのバイヤー・サプライヤーは「省人化と品質保証、リスク低減のトレードオフ」をバランスよく提案・議論できる力が必須となります。
サプライヤーの立場で知るべきバイヤー心理
サプライヤー側の工場長にもよく伝えたのですが、「言われたとおりやればよい」「応援すれば顧客は評価してくれる」は間違いです。
バイヤーは限られた納期・予算・リソースで最大価値を引き出そうとしています。
だからこそ、以下のような提案型コミュニケーションが求められます。
– 実現できること出来ないことを早期に明示
– コストや品質の観点から別案(代替材料、パッケージ、工程改善など)を主体的に提示
– 小さな不具合や現場課題をタイムリーに報告
現場の「ついで仕事」や「なんとなく」で進行しないよう、双方の“見える化”が現場リスクを減らします。
QCDだけではない、これからの製品価値
消費者の視点が変わる―ストーリーの付加価値
製造委託現場で働く多くの方が、「同じようなスペック、同じようなパッケージ、どれも横並び」と感じていないでしょうか。
しかし今、消費者側の目線は「どこでどう作られたか」「どんな思いがあるか」「誰が安全管理しているか」に急速に移っています。
つまり、レトルト食品の開発・OEM委託においても「安心できる、信頼できるストーリー」を企画~製造プロセスに組み込むことが求められます。
たとえば、
– 国産素材へのこだわりやフェアトレード認証
– 製造現場の衛生管理や地域貢献活動
– 低フードロス設計、SDGsへの取り組み
これらを「生産現場のリアリティ」として語れるブランドこそが、今後選ばれる商品になっていくでしょう。
まとめ―現場目線で未来を創る製造委託プロセス
レトルト食品の開発・製造委託は、食品安全管理、設備力、DXへの成長、そして何より「人と人、企業と企業の信頼関係」によって成功と失敗が分かれます。
昭和的で属人的なやり方を脱し、現場データとコミュニケーション、顧客価値をすべて結合した「ラテラルシンキング(多面的・横断的思考)」こそ、業界をさらに大きく発展させるカギです。
今後レトルト食品ビジネスを拡大したい方、バイヤーとしてチャンスを掴みたい方、委託先企業として選ばれ続ける存在でいたい方は、どうか今回紹介した現場実践の知見を参考にしてください。
食の未来をつくるのは、まさに「現場」からの挑戦と改革です。
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