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ストレッチTシャツの印刷でひび割れを防ぐための弾性インク配合と乾燥プロセス

目次
ストレッチTシャツと印刷の難しさ
ストレッチTシャツは、その名の通り伸縮性に優れた素材を使用しています。
現代のアパレル市場では、スポーツ用途や普段着、ユニフォームなど多岐にわたり需要が拡大しています。
しかし、この”伸びる”という特性が印刷加工においては大きなハードルとなります。
なぜなら、従来型のインクで印刷した場合、Tシャツが伸びたり曲がったりしたときにインクが割れる(ひび割れ)が発生しやすいからです。
アパレルやテキスタイルの現場では、「デザイン性と耐久性の両立」が永遠のテーマです。
特に現場の声としては、製品のクレームとしてインクのひび割れが後を絶ちません。
この問題を解決するためには、適切なインク配合と乾燥プロセスの設計、さらには製造現場でのきめ細かな管理が欠かせません。
弾性インクとは何か?ストレッチTシャツ向けの選び方
ストレッチTシャツの印刷時には、素材の伸縮に追従できる「弾性インク」が不可欠です。
弾性インクは、インク膜が布と一緒に伸びて元に戻る「伸縮性」「弾性」が高い特殊配合になっています。
ここで重要なのは、材料選定だけでなく、インク配合設計そのものにノウハウが詰まっているという点です。
樹脂選定と可塑剤のバランス
弾性インクの基材となるのは、主にポリウレタンやアクリル、場合によってはシリコン樹脂などです。
これらに適度な可塑剤(プラスチックを柔らかくする成分)を配合することで、インクの柔軟性と伸縮性が決まります。
ただし、可塑剤の増量はインクの糸引きやベタつき、場合によってはインク剥離などのトラブルを誘発するため現場監督者の経験と勘が必要です。
着色材・フィラーの配分
顔料やフィラー(増量剤)の選定も重要です。
顔料が多いと色は鮮やかですが伸縮追従性が低下しますし、逆に顔料を減らすと発色が犠牲になります。
ストレッチ素材向けインクでは、微小粒子の顔料を用いるのが一般的で、場合によってはシリコーンフィラーやマイクロゲルなど特殊な弾性材料を加えることで、割れにくさと高発色を両立しています。
乾燥時の皮膜形成技術
重要なのは、単に「弾性」とうたわれているインクを使うだけでは不十分だということです。
乾燥時の化学反応、特に架橋反応やフィルム形成の際に、素材とインクがどのように馴染むかがカギとなります。
乾燥プロセスまで設計された“システムインク”であることが理想です。
印刷工程の最適化:業界のアナログな課題を超える
日本の製造業、特に印刷や縫製の現場は、今なお多くがアナログで属人的なノウハウに頼っています。
このため、どんなに良いインクを使っても「いつものやり方」や「経験に頼る」現場慣習がひび割れ問題を深刻化させています。
温度管理とライン設計
ストレッチTシャツへの印刷は、乾燥の仕方次第で大きく歩留まり率が変わります。
特に重要なのは温度と時間です。高温・短時間で急速に乾燥させると、インク膜表面だけが先に乾き、中身が十分になじまないままひび割れを起こします。
逆に低温・長時間ではスループット(生産効率)が落ち、現場でのコストも嵩みます。
現場では、素材ごとの「熱履歴」データの蓄積が重要です。
どの素材には何度、何分、どの気流条件が最適か。
これらをきちんと現場管理表に残し、ラインスタッフへ知識展開する仕組みが求められます。
プレス・事前処理の工夫
印刷前の前処理(プリテンダリング)も有効です。
たとえば、Tシャツ素材を印刷前にあらかじめ一定量伸ばしておいた上で印刷を行い、その状態でインクを硬化させる手法です。
こうすることで、実際の使用環境での伸縮による負担が分散され、印刷剥離やひび割れが起きにくくなります。
これからのストレッチTシャツ印刷~デジタル革新と現場知見の融合~
AI、IoT、品質工学などのキーワードが製造業全般を覆う時代ですが、ストレッチTシャツの印刷も例外ではありません。
業界全体が従来的な職人芸と最新デジタル技術を組み合わせることで、安定経営と品質保証の新たな一歩を踏み出しています。
印刷条件のデータ化と見える化
印刷ラインの温度、湿度、乾燥時間、風速などのパラメータをIoT機器で常時計測し、データとして蓄積すれば、現場スキルに依存しない「標準工程」の構築が容易になります。
サプライヤーとエンドユーザー、バイヤーとの連携強化に繋がりますし、万一の不具合時も再発防止策が明確になります。
品質トラブルの防止=バイヤー信頼の獲得
ストレッチTシャツ印刷を受注するサプライヤーの立場では、「納品後、着用→洗濯後のクレームリスク」を極小化することが最重要事項です。
このためには、バイヤーが求める用途や期待値(例:100回洗濯後にもデザインが割れないか?スポーツ利用時の摩擦耐性が充分か?など)を事前にしっかりヒアリングし、実際に工場側でその条件をシミュレーションする社内検証が不可欠です。
また、テスト結果を標準化し、将来的なクレーム内容および改善履歴を「見える化」することで、未知の課題にも即応できる体制を作れます。
まとめ:現場知見とテクノロジーが拓く新時代への提言
ストレッチTシャツの印刷工程は、単なるインクの選定にとどまらず、化学的な知識、機械制御、現場管理、さらにはバイヤーや最終消費者への配慮も求められる難易度の高い分野です。
今後は弾性インクのさらなる進化と、プロセス設計の高度化が進む中、現場目線の知見こそが唯一無二の競争力となるでしょう。
製造業にたずさわる皆さまは、古き良き昭和の現場ノウハウと、IoTやAIなどの最新ツールの“いいとこ取り”を目指してください。
今回ご紹介した「弾性インク配合の工夫」と「乾燥・プロセス制御の新たな視座」をヒントに、自社ブランドのさらなる品質向上と安全・安心なものづくりにチャレンジし続けてください。
バイヤー志望の方、既存サプライヤーの方も、現実の工場現場が向き合う「割れないTシャツ印刷」の戦いをぜひ知っていただき、納得できる共同開発・発注に繋げていただければ幸いです。