投稿日:2025年10月13日

マスクの静電捕集性を保つ帯電処理と湿度管理工程

はじめに:マスク製造の核心と帯電処理の重要性

マスク市場は依然として高い需要があり、医療・産業用から日常生活まで幅広く利用されています。

その中でも、不織布マスクは粒子捕集性能が高く、特に静電気の力を利用した「静電捕集性」が性能のキーとなっています。

この静電捕集性を維持するためには、適切な帯電処理とその後の湿度管理工程が不可欠です。

しかし多くの製造現場では、アナログな工程管理や昭和的な現場感覚が依然として根強く、静電気性能を安定して確保するためのノウハウがブラックボックス化している現状があります。

本記事では、現場実務の目線で、帯電処理の工程や湿度管理の要点、業界動向や新たなアプローチについて掘り下げて解説します。

静電捕集性のメカニズムと「帯電処理」の意義

そもそもなぜ帯電させるのか

マスクの主たる捕集メカニズムは「繊維の隙間を通過できない粒子の物理的捕捉」と「静電気による微粒子の吸着」です。

目の細かいフィルターだけでは呼吸が苦しくなってしまいますが、マスクの主流である「メルトブローン不織布」は帯電させることで、微細なウイルスやPM2.5などを効率よく引き寄せて捕集できる“高性能&呼吸しやすい”特性を発揮できます。

この帯電を製造過程で人工的に施す技術が「帯電処理」です。

代表的な帯電処理方法

帯電処理には主に以下の2方式があります。

  • コロナ放電方式:放電による高電圧イオンで繊維に静電気を帯びさせる。大量生産にも適している。
  • トライボ帯電方式:異素材で物理的にこすりあう摩擦を利用し発生させた静電気を繊維に付与する。

業界の主流はコロナ放電ですが、素材や装置構成によって最適施策が分かれます。

この工程がマスクの“性能そのもの”に直結するため、どの現場でも命をかけて管理されています。

帯電性能をいかに維持するか―湿度管理の盲点

静電気の大敵は「湿気」

現場では、しばしば「湿度が高いとマスクの性能が落ちる」といわれます。

静電気は空気中の水分子によって中和されやすく、湿度が上がるほど静電気の“帯電持続性”が低下し、結果的にマスクの捕集性能が劣化するからです。

そのため、静電捕集性の高いマスク製造には、工場内の湿度管理が必須課題となっています。

製造ラインにおける湿度管理の実際

マスクの生産現場は帯電処理後、すぐに成膜・裁断・梱包作業へと流れます。

この間に、露出した材料や完成したマスクが高湿度の空気にさらされると、せっかく帯びた静電気が失われてしまいます。

したがって、帯電処理を行う部屋と、その後の工程エリアを“調湿区域”とし、相対湿度(RH)30〜40%以下に維持することが黄金律とされています。

しかし、工場の現場では「湿度管理は空調の温度コントロールくらい」といった過去の認識が残っているケースも多く、帯電性能不良のロスが無視できないのが実情です。

現場で起こるトラブルと対策

調湿が甘くなると、突然性能不良が発生し、ロット単位でNGになることもしばしばです。

そのためには、一般的な空調管理だけでなく、製造エリアの微細な湿度変動にも目を光らせるIoTセンシングやエリア分断、エアシャワーの活用など“地味だが効果的な工夫”が求められます。

たとえば、外部から原材料を搬入する際のエアロック、作業者の衣類から発生する湿気対策としてのドライルーム化も、ハイエンドマスクメーカーでは当たり前になりつつあります。

昭和的現場の課題と「帯電管理」のブラックボックス化

アナログ現場の常識とテクノロジーの壁

従来の製造現場では、人の経験と勘に寄る「帯電管理」が根強かったのが実態です。

作業標準書には「湿度〇〇%以下を保つ」と書いてあっても、現場では「今日はいつもより湿っぽいな」「今の時期は静電気がよく抜ける」など、ベテランの感覚に頼る面が残っています。

うまくいっている時は問題になりにくいですが、新ライン立ち上げや品質クレーム時に「なぜ静電気性能が落ちるのか」「誰が工程異常を見逃したのか」がブラックボックス化しやすいのです。

背景には、アナログな温度・湿度ロガーによる一日一回の手書き記録や、予算との兼ね合いで高精度IOE機器の導入が後手に回る事情もあります。

デジタル化とラテラルシンキングによるアプローチ

マスク燃料の世界需要が増え、品質要求はますます厳格になりました。

これからの現場では、IoTセンサーによるリアルタイム湿度可視化、帯電状態の非破壊検査システム、AIを活用した品質トレンド分析など、「デジタル化×現場感覚」を融合するアプローチが不可欠になります。

たとえば「ライン毎に最適な帯電条件をAIが自動チューニングする」「外気湿度の急変をクラウドでモニタし、直ちに帯電工程や造品順序を自動調整する」といった先進例も注目されています。

昭和的な“ベテラン個人の勘”から脱却し、多様なデータと現場の知見を組み合わせる“ラテラルシンキング”こそが、現代の品質作りの新たな地平なのです。

バイヤー・購買担当者が押さえるべき帯電・湿度の品質ポイント

なぜ品質は「一括り」では語れないのか

マスクの帯電性能は長期保管や輸送時の湿度・温度管理に大きく左右されます。

現場で100点満点のマスクも、納品時には性能低下していた――という商習慣トラブルは後を絶ちません。

バイヤーは「帯電処理方式は?」「工場湿度管理の実態は?」「ロットごとの静電捕集性の測定データは?」といった情報をきめ細かく要求することが重要です。

また、湿度感受性の低い新素材や保管段階でも性能が落ちにくいパッケージ設計など、サプライヤーの“開発力×現場対応力”を見極める視点も欠かせません。

サプライヤーが押さえるべき“顧客目線”

サプライヤー(製造業メーカー)にとっても「帯電処理や湿度管理工程までバイヤーに説明できるか」が、大きな競争優位になります。

現場では“工程は知っているが資料化できない”という暗黙知が多いのが製造業のリアルです。

『なぜ当社のマスクは安定して帯電捕集性を維持できるのか』

『どのような環境管理やトラブル未然防止策を講じているのか』

こうした製造プロセスの見える化が、バイヤーからの信頼獲得、調達単価の維持、次世代製品開発のスピードアップにつながります。

グローバルトレンドと今後の進化

世界で進む“環境耐性型”帯電材料開発

最近では、帯電性能が湿度に左右されにくい新素材(例:ポリプロピレン+ナノファイバー設計)、ナノスケールの表面処理で半永久的に帯電を維持する技術など、グローバルサプライヤーを中心に研究開発が進んでいます。

一方、過酷な気候や流通インフラが未発達な地域向けでは「帯電を失っても一定性能を発揮できる二重構造フィルター」などのハイブリッドマスクも注目されています。

次世代工場は「帯電×湿度管理」の可視化が当たり前に

これから国内外で勝ち抜く製造業は、帯電工程・湿度工程ごとのリアルタイムデータを一元管理し、不良原因とトレース能力まで高めていく必要があります。

また、エンドユーザーが「このマスクはどんな環境で作られ、どうやって帯電性能を保っているか」を確認できる“工場可視化トレーサビリティ”の取り組みも、プレミアム製品の差別化に直結します。

まとめ:製造現場の知恵が業界基準になる時代へ

マスクの高性能化と安全供給のカギは、「帯電処理」と「湿度管理」の徹底にあります。

アナログ・昭和的な“現場感覚”の強みは活かしつつも、デジタル技術やデータ分析と融合し、新たな品質作りの地平を開拓することこそが、製造業の新しい価値創造です。

バイヤー、サプライヤー、それぞれが現場目線で工程を見直し、透明性と持続的な改善を積み重ねることで、他にはない信頼を勝ち得ることができるでしょう。

長年の製造現場で培った知恵こそが、明日の業界標準となり、世界に通用する“ものづくり力”を支えます。

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