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マスクのフィルター性能を長持ちさせる静電処理と帯電保持技術

目次
はじめに
新型感染症の流行や空気感染対策の高まりとともに、マスクの性能への注目度がかつてないほど高まっています。
特に、花粉や微粒子、ウイルスなどを取り除く「フィルター性能」は、マスク選びの最重要ポイントです。
高性能なフィルターに欠かせない技術の一つが「静電処理」と「帯電保持技術」です。
この記事では、現場目線の経験を交えながら、これら技術の仕組みや課題、業界動向、そして今後の可能性について深く掘り下げていきます。
マスクに求められる「フィルター性能」とは
マスクがウイルスや粉じんなどの微粒子をどれだけブロックできるかは、「ろ過効率(フィルター性能)」で示されます。
サージカルマスクやN95マスクなど、高性能マスクの中心にはメルトブローン不織布が使われていることが多いです。
メルトブローン不織布は、微細な繊維構造によって単なる物理的バリア以上の性能を発揮します。
そのカギを握るのが「静電気」です。
繊維に電気を帯びさせることで、身体に害を及ぼす小さな浮遊粒子を「電気的に引き付けて捕集」できるからです。
これが、「静電処理」や「帯電保持技術」の出番となる理由です。
静電処理とは?〜帯電させて性能アップ〜
静電処理の役割
静電処理とは、不織布などのフィルター素材に高圧の電気をかけることで、繊維に静電荷を持たせる技術です。
静電気が繊維に残ることで、粉じんやウイルスなどの微粒子をより確実に捕まえることができます。
通常、マイクロメートル(μm)レベルのごく小さな粒子は、物理的なフィルターだけでは素通りしやすいです。
しかし、繊維に電気が帯びていると、反対の電気を持つ微粒子が、単純な力学的衝突以外に“電気的な引力”で吸着します。
マスクのフィルター効率は、単に目の細かさだけでなく、静電気の力によって大きく向上するのです。
静電処理の手法と現場での工夫
代表的な静電処理には、コロナ放電法、摩擦帯電法などがあります。
なかでもコロナ放電法は、生産ラインの自動化とも親和性が高く、不織布製造業界の主流となっています。
多くの工場現場では、不織布シートを特定の装置の間に通し、高電圧を印加して均一に静電気を蓄えさせます。
その際、気温や湿度、装置配置によって結果が左右されやすいため、現場では微調整やトライ&エラーが欠かせません。
昭和から続くアナログな職人技が、最新の製造ラインでも品質安定に一役買っています。
帯電保持技術〜「帯びた電気」を長く保つ工夫〜
帯電は消えていく?
せっかく繊維を帯電させても、通常のポリプロピレン繊維では時間の経過や湿気などで「電気が抜けて」しまいます。
これが「静電フィルターの性能が落ちていく」主な原因です。
特に、日本のように梅雨がある気候では、工場や流通過程での湿度管理がフィルター性能維持のカギを握ります。
現場の実感として、「高温多湿の日は帯電がすぐ減る」という声は根強いです。
帯電保持材の進化
これに対応するため近年では、ポリプロピレン原料に「帯電保持材」を混ぜ込む技術が登場しています。
帯電保持材は、繊維の電荷を長期間安定して維持する効果があります。
最新のフィルター素材はこうした特殊添加剤を活用し、数週間から数か月の高性能維持を実現しています。
また、高分子設計や加工プロセスの工夫によって、帯電しやすい繊維構造を生み出す研究も盛んに行われています。
添加剤の量や選定、配合方法も現場のノウハウが反映される領域です。
なぜ「高いフィルター性能」を長持ちさせる必要があるのか?
現場目線から見ると、静電フィルターの高性能長持ちが重要な理由は2点あります。
ひとつは「使用時の安心感」です。
マスクをつけているだけで粒子がブロックできる―そう信じて使われるためには、メーカー側は性能の持続性を保証する責任があります。
もうひとつは「流通・在庫管理」です。
店頭や倉庫で長期間在庫として保管されても、性能が低下しないマスクが求められます。
特にサプライチェーンが長い場合や、緊急備蓄マスクの品質確保は死活問題です。
現場の製造管理者としては、こうした社会的要求に応えるために、静電処理や帯電保持のパラメータを几帳面に管理しています。
業界に根付いている「昭和的課題」と最新動向
アナログな現場力と自動化のギャップ
日本の不織布・マスクの現場は、職人の目と勘、装置ノウハウに長年支えられてきました。
たとえば、「コロナ放電装置の電極の微妙な高さ」や「流れる空気の温度・湿度」は、マニュアルや自動制御だけでカバーしきれない部分があります。
一方で、デジタル技術やIoTによる生産ラインの自動化も進みつつあり、感覚的なノウハウをデータ化・数値化して品質を安定させる取り組みも増加中です。
「昭和モデル」と「令和モデル」の融和が大きなテーマとなっています。
サプライヤーとバイヤーの立場から見た品質管理
メーカー側(サプライヤー)としては、良い材料と確かな生産プロセスによって、常に安定した性能を保証しなければなりません。
バイヤーの立場では、「何がフィルター性能を下げるのか」「性能のバラツキをいかに抑えるか」という知識を持つことが大切です。
バイヤーは、材料メーカーと直接対話し、帯電保持材の添加技術、保管方法、使用期限の設定など、現場目線の「ものづくり」を理解したうえで適切な調達判断を下す必要があります。
時に「ロット違いによる性能差」が現場クレームにつながることもあり、日々の現場管理へのリスペクトが重要です。
今後の展望と課題
静電処理や帯電保持技術は依然として進化していますが、「環境リサイクル性」との両立が新たな課題です。
従来の帯電保持材の中には焼却時に環境負荷を与えるものもあり、「生分解性」や「再生プラスチック対応」など持続可能なマスク素材への転換が進められています。
さらに、抗ウイルス性能や、肌当たり・通気性など、エンドユーザーの細かなニーズに合わせた複合的機能の実装も求められています。
高性能フィルターの「見えない価値」をどう伝え、正しく評価・価格反映させるかもバイヤーにとっては大きなテーマです。
まとめ
マスクのフィルター性能は、目に見えない静電気の力と、その持続性を支える帯電保持技術によって大きく左右されます。
現場の職人技と、進化するテクノロジーが融合しながら、日本のものづくり品質は今も磨かれ続けています。
調達やバイヤーの立場にある方も、サプライヤーや現場の努力、課題、工夫に目を向けていただくことで、より的確な購買判断ができるはずです。
今後も新製品や新技術に期待が高まる分野であり、現場からの声は引き続きものづくりの未来を切り開いていくでしょう。
最後に、日々厳しい現場で品質を守る製造業従事者の誇りと、消費者の安全・安心を支える責任に、改めて敬意を表したいと思います。
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